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二公演目――弟たちのセレナーデ
零曲目:???
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「いらっしゃいませ。……ああ! 君か。また来てくれて嬉しいよ」
チリン、と頭上から小さな鈴の音。グラスを拭き上げていた店主が顔をあげる。ドアノブから手を離すと、鈴は先ほどより幾分威勢の良い音色を奏でた。
「上へどうぞ。今は誰もいないはずだから……はは、大丈夫。こう見えて常連も何人かいるからね。ありがたいことに」
螺旋階段をのぼれば、店主の言葉どおり無生物だけが決まった配置で佇んでいる。窓際に一人用ソファが一対、奥側に二人用ソファも一対。他は木製のシンプルな椅子で、それぞれにテーブル、テーブル、テーブル。それから音楽関連の書籍やレコードで埋め尽くされた背の高い本棚に、メニュー置きと化したアップライトピアノ。いずれかの席に座れば、店主は水とレコードを手にやってくる。
「さて。本日お聴き頂くのはこの一枚……おっと! メニューを忘れていたね。君に聴いてもらうのが楽しみでつい」
そう言って、店主は鍵盤蓋からメニューを取りテーブルにひろげた。それ読みながらで良いんだけれど、と彼はそわそわした様子で続ける。
「今日は初期も初期、この前聴いてもらったのと同じ日に収録された曲から聴いてもらおうと思ってね。楽器はそんなに多くないんだ。だから、ひとつひとつの音を知ってもらうにはちょうどいいんじゃないかな……ああ、決まったかい? はい、畏まりました」
メニューを鍵盤蓋に戻し、店主はレコード片手に階段をおりる。注文の品が届くよりも早く、レコードプレーヤーは踊りだした。
チリン、と頭上から小さな鈴の音。グラスを拭き上げていた店主が顔をあげる。ドアノブから手を離すと、鈴は先ほどより幾分威勢の良い音色を奏でた。
「上へどうぞ。今は誰もいないはずだから……はは、大丈夫。こう見えて常連も何人かいるからね。ありがたいことに」
螺旋階段をのぼれば、店主の言葉どおり無生物だけが決まった配置で佇んでいる。窓際に一人用ソファが一対、奥側に二人用ソファも一対。他は木製のシンプルな椅子で、それぞれにテーブル、テーブル、テーブル。それから音楽関連の書籍やレコードで埋め尽くされた背の高い本棚に、メニュー置きと化したアップライトピアノ。いずれかの席に座れば、店主は水とレコードを手にやってくる。
「さて。本日お聴き頂くのはこの一枚……おっと! メニューを忘れていたね。君に聴いてもらうのが楽しみでつい」
そう言って、店主は鍵盤蓋からメニューを取りテーブルにひろげた。それ読みながらで良いんだけれど、と彼はそわそわした様子で続ける。
「今日は初期も初期、この前聴いてもらったのと同じ日に収録された曲から聴いてもらおうと思ってね。楽器はそんなに多くないんだ。だから、ひとつひとつの音を知ってもらうにはちょうどいいんじゃないかな……ああ、決まったかい? はい、畏まりました」
メニューを鍵盤蓋に戻し、店主はレコード片手に階段をおりる。注文の品が届くよりも早く、レコードプレーヤーは踊りだした。
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