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赤い部屋
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小学校の教室は、放課後の静けさに包まれていた。
健志(たけし)、悠太(ゆうた)、桜(さくら)の三人がおしゃべりしていると、健志が話を切り出した。
「ねえ、桜、悠太、聞いたことある? 『赤い部屋』っていう怪談」
健志は、小学三年生で背丈は同級生とほぼ同じくらいだ。
スポーツ少年で、周囲にはいつも元気いっぱいな印象を与えている。
そんな健志の問いかけに、悠太は興味津々で答えました。
「聞いたこと無いな。どんな話?」
悠太はかけていた眼鏡を少し上げた。
健志と同じ小学三年生で、あんまりスポーツは得意ではないが、その代わり勉強は得意で、本人いわく勉強のし過ぎで目が悪くなったのだという。
聞き返す悠太に、健志は少し緊張しながら語り始めた。
「『赤い部屋』っていうのは、学校内のとある部屋のことだ。昔は『指導室』と呼ばれてたんだけど、昔、事件があった後から『赤い部屋』と呼ばれるようになったんだ」
「事件って何?」
興味津々で聞いてきた桜。
桜は、小学三年生で小さな赤いリボンを付けた、他の同級生達より少し小さな女の子だ。
健志は続けた。
「その事件は三十年くらい前、先生達にいつも反抗的な男の子がいて、ある日、生徒を容赦なく殴るで有名な先生に指導室に連れていかれたんだ」
「それで?」と桜。
「そして、先生が殴る蹴るをしているうちに男の子は動かなくなった。強烈な体罰に耐え切れず、男の子は死んでしまったんだ」
うわーっ、と、桜と健志は引いたような表情をする。
「ひどい話ね」と桜。
「それだけじゃない。殴る蹴るをした時の出血を消そうと先生達が拭き掃除をしたんだけど、なぜか血は消えなかった。仕方なく、上からペンキを塗ろうとしたが、何日か経つと血が再び浮き上がるんだって」
「怖いな」と悠太。
「しかも、その部屋に入ると不気味な音が聞こえたり、幽霊ものを見たって人までいるんだ」
桜と悠太は驚きと興奮の表情を浮かべた。
ごくっと唾をのむと、桜は言った。
「それの赤い部屋ってどこににあるか分かる?」
健志は首を横に振った。
「正直、証拠は無いし、誰もが信じるわけではない。だけど、学校内に『赤い部屋』には確かにあるんだ」
悠太は興味津々でさらに質問した。
「じゃあ、そこに入ったことがある人っているの?」
健志は考え込みながら答えた。
「実は、興味のある生徒が探して見つけ出したそうなんだけど、入ってからの話は恐ろしすぎて誰にも言えなかったんだって」
三人はしばらく黙って考え込んだ後、悠太が言った。
「ねえ、俺達も探さない? 『赤い部屋』に入ってみよう」
三人はまず、玄関近くにある校内の地図をワクワクしながら熱心に見つめた。
「『赤い部屋』がどこにあるか、分かるかもしれないね」
と、桜は言ったがどこにもそれらしい部屋はなかった。
確かに、あまり使われていない部屋はあるのだが、それは学校の備品を保管する倉庫などで、一度は先生や他の生徒が入っているのを見たことがある部屋だった。
もし、部屋の中で妙な物を見たり、何かしらの怪奇現象が起こったら、すでに有名になっているはずだ。
「おかしいな……」
と、悠太は首をかしげる。
やっぱり赤い部屋って存在しないのかな、と桜が言い始めたところで、健志は地図のある部分を指さしてこう言った。
「ここが『赤い部屋』だと思うんだ」
指さしたところは、学校の三階の隅にある、部屋……ですらなかった。
「ここ、壁じゃん」と悠太は指摘する。
「他の階と比べてみて欲しい。ほら、一階と二階は同じ場所に部屋があるけど、三階にはない。隣の部屋の大きさは一階、二階と同じ。まるで、本当はあったはずの部屋を『無かったことに』したみたいだ」
三人は三階に駆け上がり、その壁の前に立つ。
ドアなどはなく、よく見るとうっすらと壁が隣の部屋辺りと比べて盛り上がっている日がするし、色も若干違う。
三人は壁を触ったりして調べてみたが、何も変わる様子はなかった。
健志が肩をすくめ、悠太は少しがっかりした顔をした。
すると、桜が興味津々の表情で言う。
「ここで死んじゃった生徒なんていないのかな?」
その瞬間、壁から男の子の声がしてきた。
声は、少し遠くから聞こえるようでした。
「ここにいるよ」
三人は一瞬驚いたが、それから壁の中から奇妙な感覚が広がり、次の瞬間、彼らは壁の中に吸い込まれていった。
壁の奥にすり抜けると、三人は赤い部屋の中にいた。
部屋の壁や床、天井までが鮮血で染まったような跡があり、不気味な雰囲気が漂っていた。
部屋の奥の床には、同じくらいの年の頭から血を流した男の子が座っている。
男の子はそのままじっと前を見つめていて、何かに取り憑かれたような表情をしていた。
健志が男の子に声をかける。
「君は誰?」
男の子はゆっくりと頭を振り、静かに答えた。
「お前達が探していた幽霊だ」
三人は男の子の言葉に恐怖を感じ、逃げ出そうとする。
しかし、壁を通り抜けてこの赤い部屋に入ってしまったときと同じように、壁をもう一度すり抜けることはできませんでした。
「で、出られない!」と悠太。
「ねえ、一緒にあの世へ行ってよ」
遠回しに三人を殺してやろうという男の子の幽霊。
しかし、健志は心臓が高鳴り怯えながらも、こう言い返した。
「嫌だ! 俺達は、生きて大人になるんだ!」
男の子の幽霊はその言葉に、残念そうな顔をして、少しずつ透明になっていく。
彼の姿が次第に消えていくのを見ると、彼は静かに消えていった。
「生きてね。悪い子だった、僕の分まで」
と、男の子の幽霊の声がかすかに響いた。
悲しさが伝わってくるような声が消えると、三人は再び壁をすり抜けて廊下へと戻っていた。
その後、三人は赤い部屋のあった壁には近寄らなくなった。
だけど、たまに近くを通っては思い出してしまう。
あの男の子の幽霊は、友達が欲しかっただけなのかもしれない。
三十年近く、ほとんど一人ぼっちだったはずだ。
だけど、嫌がる人を殺すこともできない。
そんな心の動きが、男の子の幽霊には会ったのかもしれない。
「なあ、悠太、桜。俺達、立派な大人になろうな。あの男の子の幽霊が、あの世に連れて行かなくて良かったって思えるように」
健志、悠太、桜の三人は心からそう誓った。
あの、男の子の幽霊に。
健志(たけし)、悠太(ゆうた)、桜(さくら)の三人がおしゃべりしていると、健志が話を切り出した。
「ねえ、桜、悠太、聞いたことある? 『赤い部屋』っていう怪談」
健志は、小学三年生で背丈は同級生とほぼ同じくらいだ。
スポーツ少年で、周囲にはいつも元気いっぱいな印象を与えている。
そんな健志の問いかけに、悠太は興味津々で答えました。
「聞いたこと無いな。どんな話?」
悠太はかけていた眼鏡を少し上げた。
健志と同じ小学三年生で、あんまりスポーツは得意ではないが、その代わり勉強は得意で、本人いわく勉強のし過ぎで目が悪くなったのだという。
聞き返す悠太に、健志は少し緊張しながら語り始めた。
「『赤い部屋』っていうのは、学校内のとある部屋のことだ。昔は『指導室』と呼ばれてたんだけど、昔、事件があった後から『赤い部屋』と呼ばれるようになったんだ」
「事件って何?」
興味津々で聞いてきた桜。
桜は、小学三年生で小さな赤いリボンを付けた、他の同級生達より少し小さな女の子だ。
健志は続けた。
「その事件は三十年くらい前、先生達にいつも反抗的な男の子がいて、ある日、生徒を容赦なく殴るで有名な先生に指導室に連れていかれたんだ」
「それで?」と桜。
「そして、先生が殴る蹴るをしているうちに男の子は動かなくなった。強烈な体罰に耐え切れず、男の子は死んでしまったんだ」
うわーっ、と、桜と健志は引いたような表情をする。
「ひどい話ね」と桜。
「それだけじゃない。殴る蹴るをした時の出血を消そうと先生達が拭き掃除をしたんだけど、なぜか血は消えなかった。仕方なく、上からペンキを塗ろうとしたが、何日か経つと血が再び浮き上がるんだって」
「怖いな」と悠太。
「しかも、その部屋に入ると不気味な音が聞こえたり、幽霊ものを見たって人までいるんだ」
桜と悠太は驚きと興奮の表情を浮かべた。
ごくっと唾をのむと、桜は言った。
「それの赤い部屋ってどこににあるか分かる?」
健志は首を横に振った。
「正直、証拠は無いし、誰もが信じるわけではない。だけど、学校内に『赤い部屋』には確かにあるんだ」
悠太は興味津々でさらに質問した。
「じゃあ、そこに入ったことがある人っているの?」
健志は考え込みながら答えた。
「実は、興味のある生徒が探して見つけ出したそうなんだけど、入ってからの話は恐ろしすぎて誰にも言えなかったんだって」
三人はしばらく黙って考え込んだ後、悠太が言った。
「ねえ、俺達も探さない? 『赤い部屋』に入ってみよう」
三人はまず、玄関近くにある校内の地図をワクワクしながら熱心に見つめた。
「『赤い部屋』がどこにあるか、分かるかもしれないね」
と、桜は言ったがどこにもそれらしい部屋はなかった。
確かに、あまり使われていない部屋はあるのだが、それは学校の備品を保管する倉庫などで、一度は先生や他の生徒が入っているのを見たことがある部屋だった。
もし、部屋の中で妙な物を見たり、何かしらの怪奇現象が起こったら、すでに有名になっているはずだ。
「おかしいな……」
と、悠太は首をかしげる。
やっぱり赤い部屋って存在しないのかな、と桜が言い始めたところで、健志は地図のある部分を指さしてこう言った。
「ここが『赤い部屋』だと思うんだ」
指さしたところは、学校の三階の隅にある、部屋……ですらなかった。
「ここ、壁じゃん」と悠太は指摘する。
「他の階と比べてみて欲しい。ほら、一階と二階は同じ場所に部屋があるけど、三階にはない。隣の部屋の大きさは一階、二階と同じ。まるで、本当はあったはずの部屋を『無かったことに』したみたいだ」
三人は三階に駆け上がり、その壁の前に立つ。
ドアなどはなく、よく見るとうっすらと壁が隣の部屋辺りと比べて盛り上がっている日がするし、色も若干違う。
三人は壁を触ったりして調べてみたが、何も変わる様子はなかった。
健志が肩をすくめ、悠太は少しがっかりした顔をした。
すると、桜が興味津々の表情で言う。
「ここで死んじゃった生徒なんていないのかな?」
その瞬間、壁から男の子の声がしてきた。
声は、少し遠くから聞こえるようでした。
「ここにいるよ」
三人は一瞬驚いたが、それから壁の中から奇妙な感覚が広がり、次の瞬間、彼らは壁の中に吸い込まれていった。
壁の奥にすり抜けると、三人は赤い部屋の中にいた。
部屋の壁や床、天井までが鮮血で染まったような跡があり、不気味な雰囲気が漂っていた。
部屋の奥の床には、同じくらいの年の頭から血を流した男の子が座っている。
男の子はそのままじっと前を見つめていて、何かに取り憑かれたような表情をしていた。
健志が男の子に声をかける。
「君は誰?」
男の子はゆっくりと頭を振り、静かに答えた。
「お前達が探していた幽霊だ」
三人は男の子の言葉に恐怖を感じ、逃げ出そうとする。
しかし、壁を通り抜けてこの赤い部屋に入ってしまったときと同じように、壁をもう一度すり抜けることはできませんでした。
「で、出られない!」と悠太。
「ねえ、一緒にあの世へ行ってよ」
遠回しに三人を殺してやろうという男の子の幽霊。
しかし、健志は心臓が高鳴り怯えながらも、こう言い返した。
「嫌だ! 俺達は、生きて大人になるんだ!」
男の子の幽霊はその言葉に、残念そうな顔をして、少しずつ透明になっていく。
彼の姿が次第に消えていくのを見ると、彼は静かに消えていった。
「生きてね。悪い子だった、僕の分まで」
と、男の子の幽霊の声がかすかに響いた。
悲しさが伝わってくるような声が消えると、三人は再び壁をすり抜けて廊下へと戻っていた。
その後、三人は赤い部屋のあった壁には近寄らなくなった。
だけど、たまに近くを通っては思い出してしまう。
あの男の子の幽霊は、友達が欲しかっただけなのかもしれない。
三十年近く、ほとんど一人ぼっちだったはずだ。
だけど、嫌がる人を殺すこともできない。
そんな心の動きが、男の子の幽霊には会ったのかもしれない。
「なあ、悠太、桜。俺達、立派な大人になろうな。あの男の子の幽霊が、あの世に連れて行かなくて良かったって思えるように」
健志、悠太、桜の三人は心からそう誓った。
あの、男の子の幽霊に。
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