殺し屋の娘は憧れた兵士になって愛されてます

鈴菜えり

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拉致監禁

30話 1日目

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次の朝、シュオナは静かな部屋の中で目を覚ます。暗い部屋の中で自分以外に寝息をたてる者がいた。
リュイが視界に入る出入り口の扉の近くで寝ている。リュイを起こさない様にキッチンへと移動していく。
部屋の隅に置時計があり、時間を見ると夜中の3時だった。やはり習慣になっていたのかいつも起きている時間だった。
本来ならこの時間に外に出て鍛錬をするのだが今は王子達のお世話をしなければいけないので朝食の準備をする。
朝食のメニューは昨日と味だけ違うお粥とカルパッチョを作ることにした。
まずはキッチンを使う前に掃除をして昨日使った皿を洗う。使っていない別の皿を棚から取り出し水洗いをする。
そのまま流れるように調理を進めていく。
「……うん。お粥はこんな感じかな。カルパッチョは魚を3枚に切ってオークの肉を薄く切って混ぜて添えて……これをこうして盛り付けて…、ドレッシングの材料は……」
どんどん料理を完成させていく。
調理と片付けが終わった頃、王子達とリュイは起きており、こちらを見ていた。
「お、王子…、それにリュイもおはよう。起きていたら声をかけてくれてもいいんじゃないか?」
シュオナは公式な場ではない場所では普段と変わらない喋り方になっていた。昨日の事で何か吹っ切れていた。
「いや、とても楽しそうに作っていたから…」
リュイは物欲しそうに見つめてくる。それは王子達も一緒だった。
「お腹が空いてるのなら、もう出来てるからそっちに運ぶよ」
お粥の鍋を持ってテーブルの方に移動させようとすると、アスマ王子が鍋を持ち運んでくれた。
「…ボクだって手伝いくらいする。お前ばかりに負担をかけるのは申し訳ないからな」
「俺たちで昨日話し合ったからな。お前の方が俺たちよりも疲労しているはずだというのに働く。見ているだけでもこちらは心配になる。お前はいつ倒れてもおかしくない。…今の俺たちは何も出来ないからな。お前だけが頼りだ」
カイン王子もカルパッチョの皿を運んでテーブルに置いてくれた。
「ふふふふ。アスマ王子、カイン王子、運んでくれてありがとう。とても助かりました」
噂で聞いていた各国の王子達は女好きという噂はデマのようだ。ラキル王子とライル王子の噂と混じってしまったのかもしれない。我儘という所は初めてあった時態度がそんな感じに見えた。でも実際は見えただけで本当はとても優しい人達なのかもしれない。
シュオナは心から感謝の気持ちを笑顔で伝えた。
2人は少し頬を赤らめながらも運ぶのを手伝った。お粥を皿に入れて配布する。
「朝食も運びました。食べましょう。
朝食はお粥とカルパッチョです。お粥は昨日とは味を変えていますので飽きないとは思います。お昼にはお粥をやめて普通の食事に変更いたします。お代わりはどちらもありますのでお腹が痛くならない程度食べてください」
それぞれ食べ始めていく。昨日は隣がリュイとヴェリスト王子だったが、今日はラキル王子とブラッド王子が隣だった。
…ローテーションにでもするつもりかな?
「うむ、このドレッシングとカルパッチョが絶妙なバランス!栄養バランスもちゃんと考えてある!実に美味である!」
カルパッチョを美味しそうにパクパクと食べていくフィン王子。この姿を見ていると年上とは思えなくなってくる。
ちなみに、王子達の年齢は兄王子達が18~20。弟王子が15~17である。年が2つしか変わらない王子もいる。フィン王子は18歳だったはずなので5歳年上だ。同い年に見えることは失礼なので口が裂けても言えないことである。
「お粥もとても美味しいですね。城で食べるお粥より数段階美味しいですよ」
ルルーシュ王子も絶賛してくれた。
「ありがとう。そこまで褒めてくれたのは初めてだよ」
「ふむ…。少々気になっていたのだが、昨日其方は師匠と言わなかったか?その師匠はさぞかし有名な御仁だろう。名前を教えてはくれぬか?其方を育て、我らに合わせてくれたお礼が言いたいのだ」
その言葉でシュオナは食べていた箸の動きを止める。
「…申し訳ない。師匠は既に5年前に死んでいるので無理ですよ」
少し悲しそうな顔をする。王子達は聞いてはいけないことを聞いてしまったと思い、師匠の事をそれ以上追求してこなかった。
そんな勘違いをされているとは知らず、内心シュオナは焦りまくっていた。
師匠のことを知られれば王子達はさらに混乱して危険人物として監禁可能性が出てくる。そうなるとリュイと共に兵士になれないどころか兵士の資格を剥奪され沢山の人とも会えなくなる可能性が出てくるのだ。
リュイはそれを察したのか何も言わずにいてくれた。
ほんと、うちの子…いい子すぎて辛い。可愛すぎます。耳を下に垂れ下げている。男の獣人を可愛いと言うと怒るので口にはしない。
そして再度シュオナは全てが落ち着いたら構ってあげることを強く誓う。
「王子方、朝食を食べ終えた後どうしますか?」
暗い空気を変える為にシュオナは口を開く。王子達は全員目を合わせ頷く。
「シュオナ、頼みがある」
真剣な表情をするラキル王子。他の王子達も今まで見たことのないような真剣な顔をする。
「何でしょうか?」
表情から見てもとても大事なことだと分かり、背筋を伸ばす。
「俺たちを…護身術が最低使えるまで鍛えてくれないか?」
「鍛える…?何故急にそんなことを…?」
急な事で驚きを隠せないシュオナ。第一に王子がそんなことをしなくとも兵士が守るためそんなものを必要としない。
だが、今回のような事があると抵抗も出来ずに殺される。その対策なのだろうか?
「今回の事で私達は自分の弱さを痛感しました。王子であることを理由に民を守る能力があるというだけで、傲慢になっていました。それなのに大きな態度を取っていました。自身の能力さえも扱えきれないというのに。
何より兵士が守ってくれると甘んじていました。兵士達が命懸けで私達を守ろうとしているのに私達も何故戦わないのか…と。せめて自身を最低でも守れるくらいの護身術を覚えておきたいのです」
ルルーシュ王子が丁寧に説明してくれた。
やはり気にしていたようだ。監禁され、拷問されたことで少しずつ変わり始めているようだ。自身の未熟さを、弱さを。
成長はどんなに歳をとった後でも努力次第でどうとでも出来る。
シュオナはその決意と成長をしようとしている王子達を応援しようと決めた。
「わかった。覚悟があるのなら引き受けます。だけど、日々の積み重ねが大事なことですので今日から始めるのなら毎日時間を作りやってくださいね?」
「「「勿論(だ)(です)」」」
全員が頷く。覚悟は既に出来ているようだ。
「では朝食が終わり次第何が王子達は能力で何が出来るかで護身術、またはご自身の身を守る為の力を特訓します」
シュオナは食べ終えて箸をテーブルに置く。
「シュオナ、俺もいい?」
「リュイには教えれることはなさそうだけどやりたいなら参加しなよ」
「そうさせてもらう」
リュイを加えた王子達は特訓することが決まった。
全員が食べ終わった皿をキッチンへと運び、全員が支度を整えて部屋から出ていき、特訓部屋か研究の試験場所らしき部屋に入った。
「ここでまずは王子達の能力を知りたいので教えてください」
それぞれ1人ずつ能力を教えて貰った。
シュオナは確かに研究者なら興味が引かれる能力なのだろう。そう思った。
だが、シュオナも王子達と同じ力を保有しているのでそこまで驚かなかった。最低でも2つのうち1つは全員が攻撃に使える能力だった。
その事を教えると嬉しそうな顔をする。
そこからはシュオナが体力向上のために軽く走るように指示をした。勿論シュオナも参加する。体を動かさないと鈍ってしまうからだ。
「王子方あと4周です。頑張ってください」
もう既に40周以上走っている王子達。約1人だけ喜んでいるのか苦しんでいるのかわからない人がいる。
安定の脳筋だった。これまた無視をする。言わなくても問題は起こさないと思ったからだ。
「王子方、お疲れ様でした。飲み物です」
走り終わった王子達に異空間から全員のコップを出して水を生み出して渡していく。
「は、走り込みをする必要性があるのか??」
「カグチ!走り込みは体力増量の為だ!体力があれば長時間戦っていられる。何より逃げるにしろ走り続けるんだ!やっていて損は無い!」
疲れているが生き生きとしているデール王子。さすが脳筋とでも言うべきか…。
「デール王子はとても余裕そうですね」
「俺、余裕はないぞ?ただ、久々に走れて嬉しいだけだ。だが、流石に40周はキツいぞ?」
「そうなのか?兵士とは感覚が違うのですね。これでも新兵兵士訓練のメニューの走り込みの5分の1ですよ」
王子達とリュイは流石に絶句する。5分の1…つまり200周しているということになる。兵士達が行っている訓練の過酷さの一部を王子達は思い知った。
「シュオナもやったのか?」
アラン王子がシュオナへ素朴な疑問を言う。
「当たり前ですよ。新兵は必ず通らなければならないのですから。…ですがたった200周だった事が驚きでした。師匠の訓練の方が余っ程キツかったですし、それに比べれば兵士訓練はすぐに終わりましたよ」
もはや開いた口は塞がらない。師匠とやらがどれほど悪魔のような訓練をさせていたのか。女であるシュオナにそこまでする必要があるのか不思議で仕方がない。
「さて、休憩はここまでにして次に移りましょう。次はーーー」
次々と王子達を鍛えていく。一通り鍛錬をしたあとは護身術を教えた。
各王子達は素質があった。教えたことをほとんど形にしたのだ。あとは細かな調整と自身の能力を使いどう反撃するかを全員に教えるのに丸1日使った。
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