殺し屋の娘は憧れた兵士になって愛されてます

鈴菜えり

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拉致監禁

29話 食事

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王子達とリュイが風呂から帰ってくる前に部屋中を掃除した。
能力も使えるものは使う。風を操り部屋の換気や埃やゴミを掃き出して燃やす。灰が残るがゴミをまるごと残しておくよりは片ずけるのが楽になる。水を勢いよく生み出して床の汚れをとる。錆びている床や壁は、使うことを禁じられた時の能力を使い錆びる前のものへと戻す。
掃除をやり終えた時にタイミングよく王子達とリュイが戻ってきた。
「お帰りなさいませ王子方。リュイもお疲れ様。王子方がお風呂に入っている間に食事を用意いたしたした。急に固形物を食べると体が驚くのでお粥を作らせていただきました。
王子方の口に合うかは分かりませんが…」
王子達へと近づいて微笑みながら言う。そんなシュオナの姿を固まって見る。
「王子?リュイ?皆さんどうかしましたか?」
首を傾げ王子達を見つめる。
そんな中でリュイがハッ!として正常へと戻る。
「あ、いや。部屋がすごく綺麗になってるし、シュオナがなんか…その…、か、家族の帰りを待っていた妻的な感じに見えたから…」
シュオナはそれを聞き吹き出して笑う。
「ふふふふ。妻か…ふふ。何て予想外なことを言うんだ。お腹が…いたい。僕が妻みた…ブフっ」
そんな自分を想像して気持ち悪すぎて笑えた。王子達がいると分かっていてもこの笑いだけは止められなかった。
だって妻だぞ?自分が?何それ、笑える。まず自分が結婚などできるはずがない。恋人もいないのに。勿論、作る気もないがな。
元の口調に戻っていることに気がついていないシュオナ。王子達はシュオナの口調にも少し驚きながらも笑顔のシュオナに見とれていた。
元々顔立ちがいい中性的な姿をしているシュオナは、まだ幼さが残るのか高くない声と口調のせいで男と見ていたが、女とわかると女に見えてしまう。中性的な顔だが可愛い系の顔をしている。目もくりくりとした大きな瞳。どう見ても女の子に見えた。
王子達は何故シュオナを男として見ていたのか今不思議でしょうがなかった。
「ふー、笑い疲れた。リュイ、あんまりおかしなことを言うなよ。腹が痛くなったじゃないか」
未だに笑いをこらえている顔をしているシュオナ。
「シュオナ、本当のお前の話し方はそういう言葉遣いなんだな」
ライル王子の言葉を聞きシュオナは思い出したような顔をする。
「別に不敬罪などにする気はない。公式な場ではないのだ。先の様に喋ってくれないか?その方が親しみやすい」
「私もそれで構いませんよ。貴女とは仲良くなりたいですしね」
「俺は元々そんなの気にしたことは無いから構わない」
王子達全員がポツポツと似たようなことを言う。
ここまで言われても普通に話さなかったら不機嫌になりそうなので了承する。
「分かった。これでいいんだろ?まぁ、僕はとても助かるが…本当にこれでいいのか?兵士が王子にタメ口などして?」
『『『『シュオナは特別だから(だ)(です)』』』』
「そうか…」
「シュオナ人気だな」
「…リュイ、こういう人気は僕には必要ない」
ため息混じりに呟く。
「王子方、食事と言ったがお腹空いてるか?拷問されていた15日間はほとんど食べていないだろ?そのせいで空腹感があまり無くなる人もいる。お腹空いてるなら持ってくるが…」
王子達を見るが全員お腹がすいているようだった。
なので、部屋の隅に片付けられていた折りたたみ式のテーブルをいくつか広げた。その後、キッチンへと戻り温めておいたお粥が入った鍋とお茶を持っていく。お皿はキッチンに大量にあったので人数分を持っていく。
テーブルへと行くとその近くに王子達が集まっていた。皿に取り分けて王子達の前に置いていく。
「お待たせしました。
お粥だ。口に合うかどうかはわからんが…」
シュオナは全員に配り終えて王子達を伺う。ラキル王子とライル王子はなんの躊躇もなく食べる。他の王子達は恐る恐る口に運んでいく。
食べたあとの王子達は目を輝かせて手を動かし口に運んでいく。
リュイも驚きながらもパクパクと食べていく。
シュオナはそんな微笑ましい光景を見ながらお粥を食べていく。
「お粥のお代わりあるから食べたければ言ってくれ。皿に取り分けてあげるから」
そういうと1番にデール王子が皿を突き出してきたので受け取り最初と同じ位の量を入れて渡した。
その後も各王子達はお代わりをしていき、お粥が入っていた鍋は空になった。
最後にお茶を渡して一息つく。
「其方のお粥、とても美味しかった。また作ってはくれないか?」
ブラッド王子が礼を述べた。
シュオナは口角を少しあげて承諾する。
それを見たブラッドは機嫌がいいのか笑顔になる。
「そうですね。私もまた美味しいシュオナの料理が食べたいのでよろしくお願いします」
ルイも同じように言いながらお茶を飲んでいく。
「ルイにぃと同じっすね。また頼むっす!」
キラキラとし目で頼んでくるマナ王子。
「シュオナ、料理。次、楽しみにする」
単語で話すヴェリスト王子。座った席が隣だからか、とても距離が近い。
「王子方に僕の手料理を美味しいと言ってくれたことはとても嬉しく思う。
それとヴェリスト王子。とても近いです。もう少し離れてください」
ヴェリスト王子から距離を取ろうとするとその距離を失くすかのように近寄る。
「オレが、近く、いる。迷惑?」
「うぐっ…いや、そうでは…」
「なら、問題ない。オレ、シュオナ、近くいたい」
今度は肩を並べて片手を握ってきて腕の中に引きずり込まれた。
体格差が少しあり胸の中でギューッと抱きしめられる。
「うん、温かい。気持ち、いい」
シュオナからは顔が見えないが声が満足そうである。
王子達は珍しく静かだったが、少しした後爆発した。
「な、何をしている!ヴェリスト!!
シュオナを、だ、抱きしてるなど!それをしていいのは俺とライルだけだ!」
「違、う。誰も、権利、ない」
シュオナとリュイにはなんの裏もない普通の言葉に聞こえたが、王子達はヴェリストとは付き合いが長い為、単語を並べても言いたいことがわかる。ヴェリストが言ったのは、「誰にも権利はない。だからオレがシュオナを抱きしめても別に文句を言われる筋合いはない」と、言っていることを。特に兄であるミハヤは事細かく理解出来ていた。
「お、王子…苦しいです」
その言葉でヴェリスト王子は渋々シュオナを離した。
「王子、気に入ってくれるのは嬉しいですがスキンシップが多すぎます。他の女性にも同じようなことをしていては勘違いされてもおかしくありません。僕だから勘違いも何も無いのですから気おつけてください」
ヴェリスト王子のおでこにコツンとデコピン代わりに、全く痛くないように軽く叩く。
ヴェリストは少し不満そうな顔をする。
シュオナはその顔をあえて見なかったことにした。
「王子方、今日はもう寝ましょう。仮眠室がありましたのでそこでご就寝してください。城のようなベットはありませんが眠れるはずです。僕とリュイは出入り口を警戒しながら仮眠を取りますので安心してください。早くて4日後に兵士達が来てくれます。それまでの辛抱です」
王子達はシュオナも一緒に寝ようと誘ってきたがそれでは、もしもの時に動けないので今回ばかりははっきりと断った。
王子達もこればかりは諦めてくれたおかげで口論にもならずに仮眠室へと向かい入っていった。
「王子達、おやすみなさい」
もう見えない姿の王子達にいい、剣を持ち出入り口が見える場所へ行き壁に腰を掛けて眠りについた。
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