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拉致監禁

28話 あっさりと

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「流石にそれは許せない」
リュイがラキル王子から引き剥がしてくれた。
流石のシュオナも自ら服を脱いで下着姿になれなどしたくはない。
「貴様は俺たちが寝ている時に見張りをした奴か。貴様には関係のないことだ」
「王子、シュオナに服を脱げなんて言わなければ口は出さなかったよ。それに関係ならあるぞ?
俺はシュオナのパートナーになる。シュオナが嫌がりそうなことをしようとしているのに口を出すななど聞けない」
それを確認するかのようにラキル王子はこちらに視線を向けてくる。
それを見たシュオナは頷く。
「貴様がペスタルティナ王国の兵士になるだと?身元も不明な怪しいやつが我が国の兵などになれるはずがないだろう」
「お言葉ですがラキル王子!リュイは確かに身元は分かりませんが、それには理由がございます!」
ラキルの発言にシュオナは咄嗟に意義を唱えた。
「理由だと?」
「はい、リュイは違法奴隷として僕を捕まえた吸血鬼に買われました。ですが吸血鬼はもういません。実質的に僕の所有物になった訳ですが、僕は奴隷など不要です。ましてや違法奴隷を使うなど僕の在り方を否定してしまいます。なので、奴隷から解放しました。
その後、僕は王子達を助け出すと言い出した時に自分も行くと言ってくださいました。リュイの戦い方や性格を入れて、僕から兵士になりパートナーにならないかと誘いました。リュイは快く引き受けてくれました。国に帰り処罰を受けた後、パートナーとして僕と活動していくつもりです!実力もあり、ちゃんとした判断ができる逸材です。
それと、僕はリュイ以外とはパートナーを組む気はありません!!絶対に兵士にならせます!」
「シュオナ…、なってもらうではなくて、ならせるんだな」
「当たり前!リュイと一緒に戦えるんだぞ?僕達はまだ弱いけど守りたいものを見つけた時ほど強くなれるんだ。きっとリュイにも見つかるはずだ。
それと兵士になっても部屋がないだろうから僕の部屋一緒に使おう!元々2人部屋だしな!」
話をどんどん進めていきリュイを外側から逃げれないように固める。
シュオナはリュイを逃がす気は無い。直感でこの人だ!と感じたのだ。嫌なら無理には進めない。
でも一緒に戦ってくれると言ったリュイを逃す気にはなれなかった。それが例え王子達が嫌がったとしても。
「…そういうことだ王子。これで俺も関係あるだろ?」
リュイはシュオナの押しに後ずさりはしたがラキル王子へと視線が合い、勝ち誇ったかのような顔をする。
「それで、ラキル王子。何故僕に服を脱げと仰ったのですか?」
事の始まりがそれなので話を戻すシュオナ。
「…お前を抱きしめた時、男のくせに胸板がやけに柔らかかった。俺はその感触はどう考えても女の胸としか思えなくてな。…シュオナ、お前は女じゃないか?」
全員がこちらを凝視する。リュイは何故か赤らめてシュオナを見る。
「はい。僕は女ですが何か問題ありますか?」
あっさりと教えたシュオナはリュイはため息をついた。
ラキル王子達はあっさりと肯定するシュオナを見ながら目玉が飛び出てしまうのではないかと思うぐらい瞼を広げた後、声にならない驚きの声をだす。
シュオナにはその声は流石にとても五月蝿かった。クラクラしそうになってしゃがむ。
「シュオナ!お前女だったのか!何故馬車の時や俺らの部屋に顔合わせした時に言わなかった?!」
ライル王子が少し落ち着きを取り戻し、疑問をシュオナに言い放つ。
「ライル王子、それを言ったらメイド達と同じ末路が待つだけですよ?それにそんな人だと知っていて、女です。など言うはずないでしょう。
ましてやラキル王子に関してはどこが気
に入られたのか分かりませんが、妻にしてやるなど言われる始末。僕は結婚する気ありませんし、そんな話をする為に護衛をしていた訳ではありません」
「これで分かっただろ?俺が服を脱げと言った時に、話に割って入っていった理由が。
例え男だろうと女だろうと突然脱げなど普通は言わないだろ…」
リュイだけがこの場で女だと知っていた為衝撃はない。
「シュオナ…その、急に脱げなど言って悪かった。俺も少し動揺していてな…」
気まずそうにラキル王子が謝罪する。
「隠していた訳ではなかったのですが、この性格と言葉遣いで男だと皆思ってしまっている見たいですので気にさずに。僕は元々師匠に男として育てられましたから、むしろ男扱いしてもらわないとどう反応していいか分からなくなるので気にしないでください」
未だに思考に体が追いつけずにいる他の王子達。
「王子方。僕のことはもういいですので、まずは治療をさせて頂けませんか?王子達のお体はとても痛々しく、お帰りの際に皆様のとても綺麗で整った顔や体が傷だらけだったらきっと各国の親である国王と王妃が悲しみますので」
ラキル王子とライル王子はすぐに了承してくれたのですぐに治療した。
体を見せてもらうと、身体中に切り傷と殴られたあとに出来る青紫色に変色した跡。中には何かを炙った後に皮膚に接触したあとまであった。他の王子達も正気に戻ったので治療をする。全員同じような跡が身体中にあった。
綺麗には治せたものの、流れた血までは戻らないため激しい運動を禁止した。
約1名はすごく残念そうにするが無視する。いや、もう誰とかいう前に分かってるし。
「王子方、治療が終わりましたのでお風呂に入ってきてください。城ほど大きくはないでしょうが、入らないよりはいいでしょう。リュイも一緒に入ってきてくれ。風呂場は必ず丸腰になる。この場の男の中で戦い慣れているのはリュイしかいないからな。流石に僕は入れないからな。よろしく頼む」
「分かった。任せて」
リュイと王子達は風呂場がある場所へ向かっていった。
シュオナも一緒に…などラキル王子とライル王子以外にも言われたがオブラートに断った。一部の者が五月蝿かったのか、数名をリュイが引きずって風呂場に連れて行く。リュイは何だか王子達に容赦なかった。
シュオナはその光景を見て、やはり獣人は人族よりも腕力があるんだな~。と思っていた。
「さて、王子達が風呂に入っている間に何か作らないとな。食料庫から食料全部異空間に入れたから食べ物には困らないな。ここにもキッチンがあって本当によかった。いちいち移動なんてしてられないからな」
シュオナはキッチンに向かい食材を出して調理していく。
まともな物を口にしていないだろう王子達の為に、野菜を細かく刻んだお粥を作る。急に固形物を食べると体がびっくりするはずだからだ。勿論お粥の中には、少しだがお肉も刻み入れてある。栄養バランスは大事だからな。
今回はお粥で我慢して頂こう。慣れてきたらちゃんとした食事を用意できる。
飲み物はお茶を出せるように茶葉を蒸らす。
「いつでも王子達に出せるな。質素な感じだが味は大丈夫。これが王子達の口に合えばだがな……」
そこが1番の心配どころである。王子達はいつも宮廷の料理人に食べさせてもらっているが故に、シュオナの手料理が口に合うか分からないのだ。
シュオナはそう思っているだろうが、シュオナの腕前は宮廷料理人に負けないぐらいの腕前を持っていることは本人は知らない。
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