両目を隠した冒険者〜異世界では最強戦士〜

さしみ

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魔物のすみかに行ってみました

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 10分くらいだろうか、そのぐらい森の中を僕たちは歩いていった。
「ぴゅっぷぴー!!」
「どうした?お腹でも空いたのか?」
「いや、もうすぐで付くと言ってるんだ」
「あっ、そうですか…」
あいかわらず、全くスライムくんの言葉がわからない。本当にわかるようになるのだろうか。
「ぴゅ~ぴぴぴぴ!」
「…」
僕は困り、ジル先生を見つめる。言わずとも、わかりますよね?何言ってるか教えてください。
「はぁ…。本当にこいつと会話がしたいなら、もっとこいつのことを知れ!そうしたら、自然と会話できるようになる」
「そう言われましても…先程、スライムくんについてのボートは見ましたし、もう知ることも無いというか…」
「はぁ…」
先生は何度もため息をついた。そんなに僕は、落ちこぼれな生徒なのだろうか。でも、できないのは仕方がないとこだ。できるまで、何度も挑戦することが大事だよな!
「ふっ、その調子だ」
おっ、先生に褒められた。ちょっと嬉しい気がする。よし、このことは絶対に忘れないようにしておこう。僕の中で今日は、初めて先生に褒められたデーとなった。
「よし、ここが我らの縄張りだ」
先生が前足で指した方向を見たが、そこにはただ森があるだけだった。これといって、隠れる場所もない。
「ここには、特殊な結界をしているから、さすがのお前でもわからないだろ」
「そうですね、目には見えませんが、沢山の人?いや魔物がいることはわかりますよ」
「…!?なぜだ、お前のスキルにはそこまで見ることができるのか」
「先生、僕はちゃんと包帯まいてますよ?スキルは使ってません。ただ、音がするんです」
「音で、いると判断したのか…?」
「はい、僕耳はいいので!数もわかりますよ、えーと、86ですかね?」
「いや、そんなに少なくはないぞ。やっぱり…」
「あー、これは大型の魔物の数です。小型は1285いますね」
「…!?そこまで、わかるのか!?お前、もしや化け物じゃないのか?」
「そうですか?これくらい、誰だってできますよ!普通です普通!」
「いや、それは普通ではない。我は大体の魔物の数しか把握していなかった。しかし、お前はきっちり正確に答えた。これは、化け物以外に言いようがない」
「えー、失礼ですねー。まぁ、そんなことはほっといて、早く中に入りましょ!お腹も空いてきましたし」
「ぴっぴゅ~!」
「ほら、スライムくんもお腹すいたって!」
「今だけは、こいつと通じあえたな」
「はい!」
僕は満面の笑みを浮かべた。スライムくんと少し通じあえたのも、もちろん嬉しいが、先生たちとこうやって他愛もない話しができて、とても嬉しいんだ。ちゃんと、僕を見てくれている。それだけで、僕はとても幸せだ。だから、これから二人は僕が絶対に守る。もう、友達は奪わせない。



 そして、僕らは結界の中へと入っていった。中に入るとそこは、さっきまでの森とは違う世界が広がっていた。洞窟のような、広い空間だった。
たくさん、魔物がいるな…。僕はここにいて大丈夫なのだろうか。
ジル先生の後ろを離れず歩いているが、周りの魔物が僕を変な目で見てくる。やはり、人間は歓迎されないのだろうか。
「はぁ…」
「ぴゅっゆーゆぅ?」
「ん、どうした?」
どうしても、スライムくんの言ってることがわからない。さっきは、通じあえたのに…。意思疎通はそんなに難しいものなのだろうか。それにしても、本当に周りの目が怖い。今にも僕に襲いかかってきそうだ。
「今日はここで休め」
「あっ、はい…」
「どうした、疲れてるようだな?」
「いや、周りの威圧が凄すぎて…」
「人間は魔物の敵だからな」
「やっぱりそうですよね。僕ここにいて、殺されたりしないでしょうか。それが一番怖いんですけど」
「さぁーな」
「えっ!?他人事!えー、守ってくれないんですか!」
「人間は何もしてない下等な魔物も、問答無用で殺しにかかってくるんだ。この中には仲間を沢山失ったものも多くない」
「なぜ、僕をここに…?これじゃ、魔物に殺されろって言っているみたいじゃないですか!」
「…」
なんで、先生は何も言わないんだ…?事実なのか…?僕をここに連れてきて、皆で殺すために。ただのストレス解消道具として、僕を利用しようとしている…。いや、先生はそんなひどい狼じゃない。僕を助けてくれたんだ。これは、僕への試練。この森にいたいのなら、魔物と仲良くなれとそう言ってるんだ。よし、先生の期待に背かないように全力をつくそう。
「我は、獲物をとってくる」
「わかりました!お帰りをお待ちしております」
「ぴゅっぴゅ~!」
「フッ…」
先生は鼻で僕らを笑い、ここを後にした。
「今からどうしよっか」
「ぴー…ぴゅ?」
「まずは、スライムくんと仲良くなろうか。僕の名は、柊木 進って、これは知ってるか。僕は君みたいな生物はとても大好きだ。植物なんかも、好きだな」
「ぴゆ~、ぴっぴっぱゆ~」
「う~ん、わからん。ところで君名前なんだっけ?」
スライムくんは、小さな手を目に当てて何かを伝えようとしていた。
あっ、ステイタスボート見ればいいのか!いい子だ!
僕はスライムくんを撫でた。スライムくんは本当に撫でられるのが好きみたいだ。かわゆい。
「あ~、そっか名前ないんだったな。なぁ、よかったら僕がつけてもいいか?」
「ぴ!!ぴーぴー!ぱゆぱゆ~!」
スライムくんは、急に跳び始めた。多分、いいと言うことらしい。
「じゃあ、何がいいかな。う~ん、満(みつる)ってどうだ?変かな…?」
「ぴゅ~、な…ぜ…ぴっぱっぴ~?」
ん?いま、スライムくん『なぜ』って言わなかったか?気のせいだろうか。
「いや~、小さい頃読んでもらった絵本の人物の名前なんだよ。その子は、何があっても諦めないし、誰よりも優しかったんだ。僕の憧れの人だった。なんか、スライムくんにも満のような優しさが感じられたんだ。だから、この名前にした」
小さい頃はあの絵本、何度も読み返したっけ。懐かしいな。
「ぴっ、い…い…ぞ…ぴゅ~!」
「…!?」
今、絶対に『いいぞ』って言った!もしや、意思疎通でき始めてる!?やばい、感動してきた。
僕は一人、心を踊らせていた。そんなとき、ついに満の言葉がわかった。
「シン…よ……し…く…」
まだ、少し乱れて聞こえるが、何を言っているのかはわかる。
「あぁ、これからよろしくな満!」
満と仲良くなれたとこで、他の魔物とも仲良くなっておきたい。殺されないためにも、誰に声をかけたらいいのかな?
「シン!あ………のど…う?」
小さな手の先には、大きな猪のような魔物がいた。
急にこんな、怖そうなやつに話しかけていいのか…?話しかけたら、即死亡とかないよな…。
僕は、せっかく満が勧めてくれた魔物なので勇気を振り絞って、魔物に話しかけた。
「あの~、はじめまして、僕、進っていいます。よろし…」
「あぁ?なんだ、お前」
猪の魔物は僕を見ると、今にでも殺すと言わんばかりの目を僕に向けていた。
いやいや、この方ヤバすぎません?早くも、僕はこの世界から消えてしまうのではないだろうか。
僕が一人手に汗をかいていると、満が猪に話しかけた。
「これは……おきゃ…さん…だいじょ……ぞ」
なにやら、満は猪と知り合いらしい。それならそうと、言ってくれればよかったのに…。
「あ~、お前さんのお客さんか。すまないね、俺はゴードンよろしくな」
ゴードンは僕に手を突き出してきたので、僕はその手を握って握手した。
意外と、優しそうな奴だな。殺されなくてよかった…。
僕はゆっくり、肩をおろした。
「ゴードンはね…力……つよ……ぞ」
「いや、褒めなくていいよ。俺はそんなに強くねぇーって」
満とゴードンは、楽しそうに会話をしている。僕はカヤの外にいるようだ。あっ、そういえばゴードンも魔物ならどんな種類なんだろうか。生物大好きっ子の僕は、それが知りたくてたまらなかった。
なので、僕は包帯を少し緩め、包帯の隙間からゴードンを見た。すると、前と同様ステイタスボートが現れた。
本当にこれ、すごい便利な機能だな。
僕は一人で、感心してしまった。
えーと、ゴードンはオークという種類らしい。見た目は猪に似ているが、猪よりも力が強く片手で頭蓋骨を割れるくらい握力を持っているらしい。属性は火。
ゴードンとは、敵にならないように敬意を示して過ごしていこう。敵になってしまったら厄介だからな。
あとは、ゴードンは他のオークとは違って、性格は落ち着いていて、仲間思い。めっちゃ、いい方じゃん。
「おい、坊主。こいつらが、お前と話がしたいらしいぜ。話してやってくれねぇーか」
「あっ、よろこんで…え…」
ゴードンの後ろには、無数の大型の魔物が仁王立ちで構えていた。
マジか…。なんで、こんなに怖そうなやつしかいないだろうか。はぁ…。次もゴードンさんのように、優しい方でありますように。
「よう、人間!オイラは、カイル!一度オイラと、バトルしないか!」
「いや、遠慮しておくよ…」
「えー、バトルしよ~ぜ~」
「また、今度ね」
「おっ!絶対だぞ」
そういって、彼は去っていった。彼のステイタスボートを見させてもらったが、種類はリザードマン。だが、少し普通とは違った特徴をもっているリザードマンらしい。でも、まず普通のリザードマンを知らない僕は、特によくわからなかった。
「どうも…」
「あっ、どうも…」
次に僕の前に現れたのは、巨大な虎の魔物だった。その鋭い眼差しは、僕の寿命を3年くらい奪っていった。
だって、ものすごく怖いんだもん。
「僕は進っていいます。少しだけ、お世話になります」
「ゆっくり、していくといい」
それだけ言って、彼は去っていった。
えっ、何したかったのあの方!?名前も名乗らなかったし…。なぞだ…。
そして、何人、匹…?もの魔物と会話をした。流石にちょっと、疲れてしまった。久しぶりにこんな大勢と会話したら、誰でもこうなるだろう。僕は満と一緒に、先生に言われた場所に戻った。
「今日はありがとな、満のおかげで皆と仲良くなれたよ」
「そうか!それは、よかったぞ!」
「…!?満がちゃんと喋った…」
「いや、さっきからずっと普通に喋ってるぞ。シンが、理解できなかったから…」
僕は満をギュッと抱きしめた。
嬉しい。やっと、満とちゃんと会話ができる。
そう思うと、なんだか今まで抱えていた何かがなくなり少し楽になった。すると、目からは涙が溢れ落ちた。
「ん!?どうした、どこか痛むのか?」
「いいや、満と会話できて嬉しいんだ。本当…ありがとう」
「や…、そんな感謝されるようなことは、オレはしていないぞ…」
僕は、満をじっと見つめ、微笑みかけた。
僕は本当に、幸せものだな。こんな、友達をつくれて。
そして、僕は気絶するように眠りに落ちた。お腹が空いていたことも忘れ、とても幸せそうに眠っていた。

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