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第10話 ヤめてしまえば…
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暑くて苦しい夏の体育館…寒くて痛い冬の体育館…………その空間でボールに触れるたび、止めたくて、止めたくて…仕方がなかった。
「溝渕!!トス低いッッ!!。」
そんな自分に追い打ちをかけるよう、顧問の指摘が入る。返事をする余裕が無い。でも、こちらが返事をするまで顧問は止まらない…。
「やる気あんのか!!?!」
「死ぬ気でボール触れ!!」
これらの言葉を浴びて…一瞬だけ得る精神の慣れ。喉の奥から一声絞り出す「ハイ」。この2文字さえ、口から出す気力が大量に消耗される。
練習のたび思う。「どうしてこんな辛い目にあわなきゃいけないんだ。」……と。
それでも、私はバレーボールが楽しかった。だって、
「仲間」がいたから。
「お疲れ~!!紡~!!」
「お疲れ様、つむちゃん。」
「つむちゃん、お疲れ。
…こっそりゼリー持ってきちゃった。一緒に食べよ♪エヘヘ。」
辛い空間…顧問だって、仲間がいたから頑張れたんだ。
「うん。お疲れ様っ…!!!。」
こうやって…励まし合って、支え合って、前を向く。
そんな「仲間」が大好きで…「仲間とやるバレーボール」が、大好きだった……。
中学3年生の、7月半ば。9月の初旬にある引退試合に向けて、いつも通りに体育館で練習していた時。軽いミニゲームみたいなのをしていた時だ。
正セッターは私だったけど、その時トスを上げていたのは中2の春に転校して入部してきた子だった。
幼少期からバレーボールのクラブチームに入っているガチ勢。ちょっと気が強くて、愚痴や皮肉を言う子だったけど…技術が高くて心から尊敬してた。
私はこの練習の時、ポジションはMB。チャンスボールが上がって…、レフトの子が呼んで、私もセンターを呼んでいた。
でも、トスはレフトとセンターの間…中途半端な場所に上がった。ギリギリ判断に悩んだのだろうか?。私はそれを打とうとした。
次の瞬間。
ドンッッッッッッ… その場に鈍い音が響いた。
数分意識が遠のいて、しばらくしてからやっと状況を把握した。私は、レフトの子とぶつかった。そして…
「うぅ…右腕が、上がんない…………痛い。」
仲間を傷付けた。
私は、レフトの子…エースの嗚咽を呆然と立ちつくして見ているだけだった。周りが駆けつけて、心配したり、先生を呼ぶ中……私は何もしなかった。
「(何か声をかけなきゃ…何か助けを……何をすればいい?…何ができる?……今の私に)。」
焦れば焦るほど、身体が強ばって動かなくなる。情けない自分が悔しくて嫌で涙が溢れた…しまいにその場でうずくまって咽び泣いた。
そんな中、涙と感情の乱れでぐしゃぐしゃになった私に…転校生のあの子が…声をかけてくれた。私は、その子に縋り付いた。泣きじゃくった。
それでも、その子は優しい声で
「大丈夫。運動部だもの…ケガはつきものだから。
よしよし。」
私の頭をなでて、背中をさすってくれた。ポケットティッシュを出すと、こっそりお菓子を忍ばせて私に渡してくれた。
その日以来、私は練習に行く頻度が落ちた。エースの子には、顔を合わすたび謝った。
「もう、大丈夫だから…。」そう言って、患部をさすると…悲しみと辛さが混じった苦笑いで…最後に一言
「謝るのやめて。」と告げてから、そそくさと去っていった。私は、さらに練習に行かなくなっていった。
引退試合当日を迎えた。正セッターは、私じゃない。
当たり前だ。
私は、ベンチだった。ほぼ幽霊部員化として同然だった私には当然の報いだろう。せめて、尊敬するあの子の活躍を…「仲間」との最後をするために…
引退試合は、3チーム勝って4チーム目で負けた。あと一歩のところで、県内予選敗退してしまった。
最後の集合で、強面の顧問が泣きそうになるのをこらえながら、メンバー全員に励ましと惜別の言葉をかけた。皆も…泣いたり、寂しい表情を浮かべていた…。
私は、
あの時どんな表情をしていたんだろう……。
片付けをして、それぞれが帰宅していく頃。車で帰る子、自転車で帰る子、電車で帰る子で別れた。私は、
3年生の電車で帰る子達と帰っていた…。転校生のあの子と一緒に帰ることが出来なかったのが惜しいな、と思いながら…駅で電車を待っていた時だ。
突然、1人の子が急に低い声で話し始めた。
「そういやさ…転校生。「潟霧」アイツ……"ヤバかった"よな。」
「本当それな。」
私は最初、何のことかサッパリだった。それでも、
メンバーの口は止まらない。
「別垢でさ…アイツの鍵垢知ったけど、うちらの悪口エグかったもんな。」
「ガチでクソやろ、アイツ。」
「ホンマにキモい。」
私は、「何で?」という言葉より先に
「どうしてそんなこと言うの?」と口から出てしまっていた。その言葉を、どう捉えられたのかは分からないけど…スマホ触っていた1人が、凄い剣幕でスマホ画面を見せてきた。それと同時に「もう潟霧と関わりたくなくなるよ。」と言ってきた。
困惑の後、一気に絶望が脳を支配した。
今でも忘れられない…数々の罵詈雑言。ほとんどが私達
…バレー部メンバーの悪口や愚痴だ。
「部活の時と、全然違うじゃん……。」
私がボソッと呟くと、スマホ画面を見せていた子が
「そうだよ。紡にはいつか私から言おうと思ってたんだけど……だから言う。」
間が空いてから、その言葉が続いた。
「"ただのクズ"なんだよ。紡が尊敬して、大切にしていた転校生は。」
画面がスライドされて、そこに飛び込んできたのは…
『うちの正セッター、私のことめっちゃ良い子ちゃんだって妄信しててマジウケる😂wwwww』
『たかが1人ケガさせただけで号泣とかwwwwメンタルクソ雑魚過ぎて草。バレーどころかwwwスポーツ全般向いてねーーwwwwwwwwwwwwwwwwww』
『てかw、原因つくったの私だしww。わざと中途半端なとこにトス上げたんですぅーー🤫wwwwww』
『はよ辞めろやwwwお前みたいなクソ雑魚豆腐メンタルは、セッター向いてないねん😂wwwwwwwwwwwwマジお疲れwwwwww』
『無知って幸せよなーwww。裏切られてんのに、ずっとニコニコしてられるもんなwww。』
『友達じゃなければ、「仲間」でもねぇわ!!😂wwwwwwwwwwww』
その後は、どうしたっけな………よく思い出せない。
あぁ…もう辞めれば、バレーボールをするのをヤめてしまえば……こんな感情、
今での思いも消え失せるの??。
もう…「仲間」、いらない、。
私は、単独行動してればええんやろ………?。
続く
「溝渕!!トス低いッッ!!。」
そんな自分に追い打ちをかけるよう、顧問の指摘が入る。返事をする余裕が無い。でも、こちらが返事をするまで顧問は止まらない…。
「やる気あんのか!!?!」
「死ぬ気でボール触れ!!」
これらの言葉を浴びて…一瞬だけ得る精神の慣れ。喉の奥から一声絞り出す「ハイ」。この2文字さえ、口から出す気力が大量に消耗される。
練習のたび思う。「どうしてこんな辛い目にあわなきゃいけないんだ。」……と。
それでも、私はバレーボールが楽しかった。だって、
「仲間」がいたから。
「お疲れ~!!紡~!!」
「お疲れ様、つむちゃん。」
「つむちゃん、お疲れ。
…こっそりゼリー持ってきちゃった。一緒に食べよ♪エヘヘ。」
辛い空間…顧問だって、仲間がいたから頑張れたんだ。
「うん。お疲れ様っ…!!!。」
こうやって…励まし合って、支え合って、前を向く。
そんな「仲間」が大好きで…「仲間とやるバレーボール」が、大好きだった……。
中学3年生の、7月半ば。9月の初旬にある引退試合に向けて、いつも通りに体育館で練習していた時。軽いミニゲームみたいなのをしていた時だ。
正セッターは私だったけど、その時トスを上げていたのは中2の春に転校して入部してきた子だった。
幼少期からバレーボールのクラブチームに入っているガチ勢。ちょっと気が強くて、愚痴や皮肉を言う子だったけど…技術が高くて心から尊敬してた。
私はこの練習の時、ポジションはMB。チャンスボールが上がって…、レフトの子が呼んで、私もセンターを呼んでいた。
でも、トスはレフトとセンターの間…中途半端な場所に上がった。ギリギリ判断に悩んだのだろうか?。私はそれを打とうとした。
次の瞬間。
ドンッッッッッッ… その場に鈍い音が響いた。
数分意識が遠のいて、しばらくしてからやっと状況を把握した。私は、レフトの子とぶつかった。そして…
「うぅ…右腕が、上がんない…………痛い。」
仲間を傷付けた。
私は、レフトの子…エースの嗚咽を呆然と立ちつくして見ているだけだった。周りが駆けつけて、心配したり、先生を呼ぶ中……私は何もしなかった。
「(何か声をかけなきゃ…何か助けを……何をすればいい?…何ができる?……今の私に)。」
焦れば焦るほど、身体が強ばって動かなくなる。情けない自分が悔しくて嫌で涙が溢れた…しまいにその場でうずくまって咽び泣いた。
そんな中、涙と感情の乱れでぐしゃぐしゃになった私に…転校生のあの子が…声をかけてくれた。私は、その子に縋り付いた。泣きじゃくった。
それでも、その子は優しい声で
「大丈夫。運動部だもの…ケガはつきものだから。
よしよし。」
私の頭をなでて、背中をさすってくれた。ポケットティッシュを出すと、こっそりお菓子を忍ばせて私に渡してくれた。
その日以来、私は練習に行く頻度が落ちた。エースの子には、顔を合わすたび謝った。
「もう、大丈夫だから…。」そう言って、患部をさすると…悲しみと辛さが混じった苦笑いで…最後に一言
「謝るのやめて。」と告げてから、そそくさと去っていった。私は、さらに練習に行かなくなっていった。
引退試合当日を迎えた。正セッターは、私じゃない。
当たり前だ。
私は、ベンチだった。ほぼ幽霊部員化として同然だった私には当然の報いだろう。せめて、尊敬するあの子の活躍を…「仲間」との最後をするために…
引退試合は、3チーム勝って4チーム目で負けた。あと一歩のところで、県内予選敗退してしまった。
最後の集合で、強面の顧問が泣きそうになるのをこらえながら、メンバー全員に励ましと惜別の言葉をかけた。皆も…泣いたり、寂しい表情を浮かべていた…。
私は、
あの時どんな表情をしていたんだろう……。
片付けをして、それぞれが帰宅していく頃。車で帰る子、自転車で帰る子、電車で帰る子で別れた。私は、
3年生の電車で帰る子達と帰っていた…。転校生のあの子と一緒に帰ることが出来なかったのが惜しいな、と思いながら…駅で電車を待っていた時だ。
突然、1人の子が急に低い声で話し始めた。
「そういやさ…転校生。「潟霧」アイツ……"ヤバかった"よな。」
「本当それな。」
私は最初、何のことかサッパリだった。それでも、
メンバーの口は止まらない。
「別垢でさ…アイツの鍵垢知ったけど、うちらの悪口エグかったもんな。」
「ガチでクソやろ、アイツ。」
「ホンマにキモい。」
私は、「何で?」という言葉より先に
「どうしてそんなこと言うの?」と口から出てしまっていた。その言葉を、どう捉えられたのかは分からないけど…スマホ触っていた1人が、凄い剣幕でスマホ画面を見せてきた。それと同時に「もう潟霧と関わりたくなくなるよ。」と言ってきた。
困惑の後、一気に絶望が脳を支配した。
今でも忘れられない…数々の罵詈雑言。ほとんどが私達
…バレー部メンバーの悪口や愚痴だ。
「部活の時と、全然違うじゃん……。」
私がボソッと呟くと、スマホ画面を見せていた子が
「そうだよ。紡にはいつか私から言おうと思ってたんだけど……だから言う。」
間が空いてから、その言葉が続いた。
「"ただのクズ"なんだよ。紡が尊敬して、大切にしていた転校生は。」
画面がスライドされて、そこに飛び込んできたのは…
『うちの正セッター、私のことめっちゃ良い子ちゃんだって妄信しててマジウケる😂wwwww』
『たかが1人ケガさせただけで号泣とかwwwwメンタルクソ雑魚過ぎて草。バレーどころかwwwスポーツ全般向いてねーーwwwwwwwwwwwwwwwwww』
『てかw、原因つくったの私だしww。わざと中途半端なとこにトス上げたんですぅーー🤫wwwwww』
『はよ辞めろやwwwお前みたいなクソ雑魚豆腐メンタルは、セッター向いてないねん😂wwwwwwwwwwwwマジお疲れwwwwww』
『無知って幸せよなーwww。裏切られてんのに、ずっとニコニコしてられるもんなwww。』
『友達じゃなければ、「仲間」でもねぇわ!!😂wwwwwwwwwwww』
その後は、どうしたっけな………よく思い出せない。
あぁ…もう辞めれば、バレーボールをするのをヤめてしまえば……こんな感情、
今での思いも消え失せるの??。
もう…「仲間」、いらない、。
私は、単独行動してればええんやろ………?。
続く
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この度は私の作品に感想ありがとうございました!
YUKAさんもバレーボールの作品を作っているんですね!
私のは完結しちゃったけど、執筆頑張ってください!
強運キャラっていうのも面白いですねw
ありがとうございます!w受験が終わったら、田代剛大さんの作品のじっくり続きを読ませていただきます♪