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父と弟②
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親父への報告よりも、より嘘を交えた言葉になってしまったのは、これをきっかけにレオが獣人を嫌悪することがないようにする為。
次期辺境伯として新しい時代を担うことになるレオには、できる限りフラットな目で、今後の獣人との関わり方を模索して欲しかった。……兄や知人を目の前で惨殺されたうえに、強姦された過去がある親父には、絶対できないことだから、よけいに。
「……それ、本当に危険はないんですか。兄上は全て一人で抱え込もうとする人なので、心配です」
……おかしいな。俺の演技は完璧なはずなのに、何故か見透かされてる。
思わず視線を逸らしそうになるのを耐え、懐疑の目を向けるレオに安心させるような笑みを返す。
「心配するな。レオ。結界を張り直したら、すぐ退避する予定だから、何も危険はない」
「……本当ですか?」
「俺を信じろ。……だが、万が一。万が一、俺に何かあった時の為にお前に伝えておきたいことがあるんだ」
「やっぱり危険なんじゃないですか!」
……いや、俺自身は大して危険がないから、嘘はついてないよ? あれだけ執着を見せてるヴィダルスが、俺を殺すことはないだろうし。
あ、結界を張り直して即退避って言葉自体が、そもそも大嘘だから、どう言い訳しても俺が嘘つきなのは事実か。そもそも魔物が降りてくるって前提からして、嘘だし。
「危険は何もないって言っているだろ。ただ、この機会に、お前に伝えておきたいってだけだ」
それでも俺はレオを真っ直ぐに見つめて、嘘をつく。
レオにとっては、この嘘こそが真実になるように。
全てをなかったことにできると信じて、嘘を突き通す。
「……たとえこの先の人生で、どれだけ辛いことが待ち受けていたとしても。けして自死の道は選ばないことを約束してくれないか。レオ。最後の最後まで、戦い続けることを」
原作のレオの死因は、自死。
辺境伯領を滅ぼされ、生きて獣人の慰めものになるよりは自領と共に滅びることを、まだ幼いレオは自ら選択した。
そしてその事実が、ヴィダルスの支配から逃れた原作エドワードを、決定的に壊したのだ。
俺は原作エドワードのように、弟レオに対して禁断の愛を抱いているわけではないけれど。それでもレオが同じ道を選んだりすれば、同じように心を闇に染められる自信がある。
原作エドワードの二の舞いにならないように一定の距離は置いていても、それでもレオが俺にとってかわいい弟であることは違いないから。
戦争を回避するのが、勿論第一。けれど戦争が始まってしまった後でも、原作レオが獣人の奴隷になってでも生き伸びる道を選んでいたら、未来はまた違ったものになっていたかもしれないのも事実。
傷ついた兄弟が、互いの心の傷を癒やし合いながら、獣人から姿を隠して助け合って生きていく……そんな、ハッピーエンドではないけれど、バッドエンドとも言い難い結末もあったかもしれない。
もし万が一戦争を回避できなかった時の保険として、レオにはそんな未来に至る為の可能性も確保しておいて欲しいのだ。
「潔く死を選ぶことは、必ずしも美徳とは限らない。屈辱に耐え忍んだからこそ、得られる明るい未来だってある。次期辺境伯であるお前には、何が一番領民の為になるか、長期的な視野を持ったうえで、自らの命を使って欲しい」
俺同様に、ずっと「辺境伯領の為に死ね」と言い聞かされて育ったレオにとっては、すぐに受け入れられない言葉かもしれないし、状況次第では死を選ぶ方がずっと楽かもしれない。
父の血を引いているレオも、俺同様に闇魔法のポテンシャル自体はあるしな。現段階では、あまり顕現してないだけで。
レオが辺境伯領嫡男である以上、領民よりも自らを第一にしろと言えない。けれど、安易に死に転がり落ちそうになった時、俺の言葉が少しでもレオを引き止める鈎になれば良いと思う。
次期辺境伯として新しい時代を担うことになるレオには、できる限りフラットな目で、今後の獣人との関わり方を模索して欲しかった。……兄や知人を目の前で惨殺されたうえに、強姦された過去がある親父には、絶対できないことだから、よけいに。
「……それ、本当に危険はないんですか。兄上は全て一人で抱え込もうとする人なので、心配です」
……おかしいな。俺の演技は完璧なはずなのに、何故か見透かされてる。
思わず視線を逸らしそうになるのを耐え、懐疑の目を向けるレオに安心させるような笑みを返す。
「心配するな。レオ。結界を張り直したら、すぐ退避する予定だから、何も危険はない」
「……本当ですか?」
「俺を信じろ。……だが、万が一。万が一、俺に何かあった時の為にお前に伝えておきたいことがあるんだ」
「やっぱり危険なんじゃないですか!」
……いや、俺自身は大して危険がないから、嘘はついてないよ? あれだけ執着を見せてるヴィダルスが、俺を殺すことはないだろうし。
あ、結界を張り直して即退避って言葉自体が、そもそも大嘘だから、どう言い訳しても俺が嘘つきなのは事実か。そもそも魔物が降りてくるって前提からして、嘘だし。
「危険は何もないって言っているだろ。ただ、この機会に、お前に伝えておきたいってだけだ」
それでも俺はレオを真っ直ぐに見つめて、嘘をつく。
レオにとっては、この嘘こそが真実になるように。
全てをなかったことにできると信じて、嘘を突き通す。
「……たとえこの先の人生で、どれだけ辛いことが待ち受けていたとしても。けして自死の道は選ばないことを約束してくれないか。レオ。最後の最後まで、戦い続けることを」
原作のレオの死因は、自死。
辺境伯領を滅ぼされ、生きて獣人の慰めものになるよりは自領と共に滅びることを、まだ幼いレオは自ら選択した。
そしてその事実が、ヴィダルスの支配から逃れた原作エドワードを、決定的に壊したのだ。
俺は原作エドワードのように、弟レオに対して禁断の愛を抱いているわけではないけれど。それでもレオが同じ道を選んだりすれば、同じように心を闇に染められる自信がある。
原作エドワードの二の舞いにならないように一定の距離は置いていても、それでもレオが俺にとってかわいい弟であることは違いないから。
戦争を回避するのが、勿論第一。けれど戦争が始まってしまった後でも、原作レオが獣人の奴隷になってでも生き伸びる道を選んでいたら、未来はまた違ったものになっていたかもしれないのも事実。
傷ついた兄弟が、互いの心の傷を癒やし合いながら、獣人から姿を隠して助け合って生きていく……そんな、ハッピーエンドではないけれど、バッドエンドとも言い難い結末もあったかもしれない。
もし万が一戦争を回避できなかった時の保険として、レオにはそんな未来に至る為の可能性も確保しておいて欲しいのだ。
「潔く死を選ぶことは、必ずしも美徳とは限らない。屈辱に耐え忍んだからこそ、得られる明るい未来だってある。次期辺境伯であるお前には、何が一番領民の為になるか、長期的な視野を持ったうえで、自らの命を使って欲しい」
俺同様に、ずっと「辺境伯領の為に死ね」と言い聞かされて育ったレオにとっては、すぐに受け入れられない言葉かもしれないし、状況次第では死を選ぶ方がずっと楽かもしれない。
父の血を引いているレオも、俺同様に闇魔法のポテンシャル自体はあるしな。現段階では、あまり顕現してないだけで。
レオが辺境伯領嫡男である以上、領民よりも自らを第一にしろと言えない。けれど、安易に死に転がり落ちそうになった時、俺の言葉が少しでもレオを引き止める鈎になれば良いと思う。
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