10 / 336
やって来ました。職業斡旋場
しおりを挟む
「ーーはい。いらっしゃい。お嬢ちゃん。何か仕事を探しているのかい?」
そんなわけで、家族に内緒でやって来ました、国営の職業斡旋場。
仕事を見つけた後に「私、本当は外の世界を知りたかったんだ!」とでも言えば、家族は何とでもなるだろう。
……ってかさ、何でさ私一言も希望を言ってないのに、家族みんな、「とりあえずまずは私に恋愛をさせよう」ってことで一致してるの?
見合いの斡旋も、爽やかマッチョ騎士の後輩紹介してくれるのも、地域の若者の集まりに参加させようとするのも、本当やめて欲しい。……恋愛とか、本当あまり興味ないんで。時期尚早なんで。
「はい。そうなんです」
「おお、良いタイミングで来たな。お嬢ちゃんくらいの女の子に、ちょうど良い求人がいくつか出てるんだ。食事処の給仕の仕事とか、貴族のお屋敷のメイドとか。……ああ、針子の仕事や、薬草農園の手伝いってのも……」
「……コカトリス……」
「……え?」
「養コカトリス場の手伝いの求人はありませんか?」
せっかく、ここまでコカトリスの世話のノウハウを身につけたからには、今後もそれを生かしたい。
……やっぱり、他の農場に比べても実入りも良いし。
で、出来ればそこが後継者がいない所で、そのままちゃっかり後を継げれば最高なんだけど。
しかし、私の言葉に、職業斡旋場のおっさんは顔を曇らせる。
「……あのさあ、お嬢ちゃん。凶暴なコカトリスの世話が、どれだけ大変で恐ろしいことか分かっているかい? 油断すれば、石にされるし、毒にやられるし、鋭利な嘴で刺されるしで、本当に危険なんだよ。十年くらい前から先日まで、ずーっとその求人出してたけど、大の男ですらやりたがらず、全く応募がなかったくらいなんだ」
「実家が養コカトリス場で、ずっと手伝いをしてたので、よく分かってます! 石にされたし、毒にやられたし、嘴に刺されましたが、治ったので気にしてません! その応募がなかった求人、やらせて下さい!」
ふっ……おっさんよ。遠慮することはない、私は経験者だ。そして経験者が、職業斡旋において優遇されるのは、世の常。
さあ、四の五の言わず、その求人を私に寄越すがいい!
「っ……実家が養コカトリス場でずっと手伝ってたって……お嬢ちゃん、もしかしてアーシュさんの娘さんかい?」
……あれ。おっちゃん。
父さんのお知り合い?
そんなわけで、家族に内緒でやって来ました、国営の職業斡旋場。
仕事を見つけた後に「私、本当は外の世界を知りたかったんだ!」とでも言えば、家族は何とでもなるだろう。
……ってかさ、何でさ私一言も希望を言ってないのに、家族みんな、「とりあえずまずは私に恋愛をさせよう」ってことで一致してるの?
見合いの斡旋も、爽やかマッチョ騎士の後輩紹介してくれるのも、地域の若者の集まりに参加させようとするのも、本当やめて欲しい。……恋愛とか、本当あまり興味ないんで。時期尚早なんで。
「はい。そうなんです」
「おお、良いタイミングで来たな。お嬢ちゃんくらいの女の子に、ちょうど良い求人がいくつか出てるんだ。食事処の給仕の仕事とか、貴族のお屋敷のメイドとか。……ああ、針子の仕事や、薬草農園の手伝いってのも……」
「……コカトリス……」
「……え?」
「養コカトリス場の手伝いの求人はありませんか?」
せっかく、ここまでコカトリスの世話のノウハウを身につけたからには、今後もそれを生かしたい。
……やっぱり、他の農場に比べても実入りも良いし。
で、出来ればそこが後継者がいない所で、そのままちゃっかり後を継げれば最高なんだけど。
しかし、私の言葉に、職業斡旋場のおっさんは顔を曇らせる。
「……あのさあ、お嬢ちゃん。凶暴なコカトリスの世話が、どれだけ大変で恐ろしいことか分かっているかい? 油断すれば、石にされるし、毒にやられるし、鋭利な嘴で刺されるしで、本当に危険なんだよ。十年くらい前から先日まで、ずーっとその求人出してたけど、大の男ですらやりたがらず、全く応募がなかったくらいなんだ」
「実家が養コカトリス場で、ずっと手伝いをしてたので、よく分かってます! 石にされたし、毒にやられたし、嘴に刺されましたが、治ったので気にしてません! その応募がなかった求人、やらせて下さい!」
ふっ……おっさんよ。遠慮することはない、私は経験者だ。そして経験者が、職業斡旋において優遇されるのは、世の常。
さあ、四の五の言わず、その求人を私に寄越すがいい!
「っ……実家が養コカトリス場でずっと手伝ってたって……お嬢ちゃん、もしかしてアーシュさんの娘さんかい?」
……あれ。おっちゃん。
父さんのお知り合い?
35
あなたにおすすめの小説
公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。
三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*
公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。
どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。
※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。
※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。
目覚めたら魔法の国で、令嬢の中の人でした
エス
恋愛
転生JK×イケメン公爵様の異世界スローラブ
女子高生・高野みつきは、ある日突然、異世界のお嬢様シャルロットになっていた。
過保護すぎる伯爵パパに泣かれ、無愛想なイケメン公爵レオンといきなりお見合いさせられ……あれよあれよとレオンの婚約者に。
公爵家のクセ強ファミリーに囲まれて、能天気王太子リオに振り回されながらも、みつきは少しずつ異世界での居場所を見つけていく。
けれど心の奥では、「本当にシャルロットとして生きていいのか」と悩む日々。そんな彼女の夢に現れた“本物のシャルロット”が、みつきに大切なメッセージを託す──。
これは、異世界でシャルロットとして生きることを託された1人の少女の、葛藤と成長の物語。
イケメン公爵様とのラブも……気づけばちゃんと育ってます(たぶん)
※他サイトに投稿していたものを、改稿しています。
※他サイトにも投稿しています。
〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?
転生した世界のイケメンが怖い
祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。
第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。
わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。
でもわたしは彼らが怖い。
わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。
彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。
2024/10/06 IF追加
小説を読もう!にも掲載しています。
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
異世界で悪役令嬢として生きる事になったけど、前世の記憶を持ったまま、自分らしく過ごして良いらしい
千晶もーこ
恋愛
あの世に行ったら、番人とうずくまる少女に出会った。少女は辛い人生を歩んできて、魂が疲弊していた。それを知った番人は私に言った。
「あの子が繰り返している人生を、あなたの人生に変えてください。」
「………はぁああああ?辛そうな人生と分かってて生きろと?それも、繰り返すかもしれないのに?」
でも、お願いされたら断れない性分の私…。
異世界で自分が悪役令嬢だと知らずに過ごす私と、それによって変わっていく周りの人達の物語。そして、その物語の後の話。
※この話は、小説家になろう様へも掲載しています
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
ヒロイン気質がゼロなので攻略はお断りします! ~塩対応しているのに何で好感度が上がるんですか?!~
浅海 景
恋愛
幼い頃に誘拐されたことがきっかけで、サーシャは自分の前世を思い出す。その知識によりこの世界が乙女ゲームの舞台で、自分がヒロイン役である可能性に思い至ってしまう。貴族のしきたりなんて面倒くさいし、侍女として働くほうがよっぽど楽しいと思うサーシャは平穏な未来を手にいれるため、攻略対象たちと距離を取ろうとするのだが、彼らは何故かサーシャに興味を持ち関わろうとしてくるのだ。
「これってゲームの強制力?!」
周囲の人間関係をハッピーエンドに収めつつ、普通の生活を手に入れようとするヒロイン気質ゼロのサーシャが奮闘する物語。
※2024.8.4 おまけ②とおまけ③を追加しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる