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連載2

再会13

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 心からシャルル王子を信じることができないと言った私に、彼は信じなくても良いから利用して欲しいと言った。
 そして、今日まで喜んで利用され続けてくれた。
 そんなシャルル王子の献身に、私は信頼で応えることに決めた。

「シャルル王子が私を裏切ることなんて、ミーシャ王女を人質にでも取られない限りないと思っています。そして今、ミーシャ王女は安全なルシトリアの王城にいる。それを踏まえれば、シャルル王子を疑う余地なんかありません」

「……そこは、全面的に信用はしてくれないのですね」

「当たり前です。人には優先順位というものがあります。大切な家族を人質に取られたら、私よりそちらを優先して当然です。私だって兄様を人質に取られたら、ルシトリアを裏切ります」

 けれども、思う。 
 もしミーシャ王女を人質に取られたとしても、きっとシャルル王子は……。

「でもそんな状況でも、シャルル王子は表向きは敵に従ったとしても、裏ではぎりぎりまで両方救えないかあがく人だとも思ってます。……その結果、自分の命を犠牲になったとしても」

 私か、ミーシャ王女か。
 二つに一つしかない選択肢の中から、無理やりどちらも救うという三つ目の選択肢を導き出そうとするのがシャルル王子だと思っている。
 きっと彼は本当の意味で私を裏切ることはないし、裏切らないために必死に泥くさくあがくのだろう。
 その結果、自分の命を縮めることになったとしても関係ない。
 シャルル王子は、ミーシャ王女の為に怪しい予言を信じて、命を掛けて単身で敵地に乗り込むような人なのたから。 

「信頼が少し痛いの気もしますが……聖女様にそんな風に言っていただけて光栄です。まさかそんな風に思っていただいたなんて……」

 シャルル王子は照れくさそうに頬をかくと、どこか落ち着かないような様子でお茶を口に運んでいた。

「そういえばシャルル王子は、どうして御者台に出ずにずっと馬車の中にいるのですか? シャルル王子なら、エイドリー相手でもうまく話を引き出せると思うのですが……」

「まさか! 無理ですよ」

 お茶を飲み終えた王子は、ブンブンと首を横に振った。

「私はルシトリアの王族です。他国の護衛騎士が、そう気安く話しかけられるような立場ではありません。私が御者台にいたら、エイドリーは恐らくは一言も口にすることがないまま、護衛騎士の職務に専念していたことでしょう」
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