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連載2

神との戦い18

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 なのに。

「っ!?」

 動かせない視界の外側で、扉が壊れる音がした。
 驚愕で目を見開いた予言者が、音がした方向を見る。
 煙に喉をやられた誰かが、咳き込む声が聞こえた。

 ーーその咳だけで、現れたのが誰かわかった。

「……に、い様」 

「……迎えに来たぞ。ディアナ」

 さらに視界が滲み、鼻水まで出てきた。

 まさか、本当に。

 本当に兄様が、来てくれるだなんて……。

「……何故、ここに来ることができたのですか。誰も入れないように、大聖堂の廻りには結界を張っていたはずなのに」

「結界? そんなものがあったのか? 俺はただ【黎明】に大聖堂の前へ転移させられたから、燃えている大聖堂の中に駆け込んだだけだぞ」

「【黎明】? ……ああ、キートラントに伝わる兄弟剣の片割れですか。全く、オズワルトも厄介な置き土産を残してくれたものです」

「……オズワルト?」

「あなたたちのご先祖様で、初代聖女の騎士だった男のことですよ。聖女の死後、家督を弟に譲り『来世こそは必ず生まれ変わった聖女を守れるように、今から最強の武器を準備しなくては』なんて妄想に取り憑かれ、残りの人生を全て剣造りに捧げたんです。そして死の間際に造り上げたのがあなたのお父様がお持ちの【勇猛】であり、その【黎明】です。元々あれは双剣使いだったので、両方共来世で自分が使うつもりだったんでしょうね。こめられたオズワルトの妄念のせいで、色々とおかしな力を持つと噂には聞いてましたが、まさか私の結界まで破るとは思いませんでした」

 予言者が深々とため息を吐いた途端、力が緩められたのか首が少しだけ動かせるようになった。
 必死で首を動かして、顔の向きを変え、兄様の方を見る。

「兄様……」

 ……ああ、兄様だ。
 本当に本当に本物の兄様だ。

 予言者の言葉に怪訝そうな表情を浮かべていた兄様は、すぐに強い眼差しで予言者を睨みつけながら、【黎明】を構えた。

「……つまり、この剣は人間をやめる前のお前が作ったものということか。お前が俺たちの先祖だなんて正直不愉快だが、今はどうでもいい。ーー何故ディアナをここに転移させて、大聖堂に火を放ったりした? ディアナは【災厄の魔女】もトリアスも倒して、聖女の役目を立派に果たしたんだぞ。その礼がこの仕打ちか!」

「おや、もしかしてあなた、まだ私の正体に気がついてないんですか? あなたの妹さんは察していたのに、鈍い人ですね」

「……正体?」

「ええ。改めて、自己紹介しますね。……私の名はルトー。調和の神ルトーです。初代聖女の騎士の名を借り、聖女信仰の力を我が物に変えて今まで存在を維持してきました。先刻は愚兄がお世話になったようで」
 
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