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連載2
神との戦い20
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初めて大聖堂を訪ねた時のことを引き合いにだされ、兄様は悔しそうに唇を噛んだ。
あの日、私達は年齢を操作して近づいて来た予言者のことをさして疑いもせずに受け入れて、話を聞いてしまった。
もし予言者があの時点で私を殺すつもりだったら、簡単に目的は果たされただろう。
「ここは、私の神殿を聖女の為の聖堂に作り変えた場所。私が人間によって作られた頃から、ずっと変わらない私の領域なのです。そして私は聖女に向けられた人間の信仰を、自分の力に変換することで、名を風化させたまま神の力を維持することに成功しました。名を忘れられて衰えた結果、乖離した一部とは言え、あなた程度でも消滅することができたトリアスとは違います。私の力は、全盛期とさして変わりません。……無力な人間に過ぎないあなたが、私を殺すですって? 笑わせないでください。あなたなんかが私に敵うはずないでしょう」
馬鹿にするような予言者の言葉を、兄様はまばたきもせずに呆然と聞いていたけど、その目の光は失われていなかった。
すぐに強い眼差しで予言者を睨み、【黎明】の先を予言者に突きつけた。
「なら……俺はこの剣に全てを託すだけだ」
「はあ? ここまで言っても、まだ私と戦うつもりなんですか。当代聖女様の兄君は、ずいぶんと頭が残念なのですね。人間が神に敵うはずがないと、何故わからないのですか?」
「だが、この剣はお前の結界を破ったんだろう?」
「っそれは……」
「初代聖女に仕えた騎士オズワルトがどんな人間だか知らないが、ただの人間がこれだけ特別な力を持つ剣を一人で作り出すくらいだ。彼の初代聖女への想いと、初代聖女を守れなかった後悔は、それだけ大きいものだったんだろう。ーーだが、想いの大きさなら俺も負けない」
兄様の覚悟のこもった眼差しが、私に向けられる。
「俺はディアナを守る。その為なら、神だって殺す。どれだけ力の差があろうと、絶望的な状況だろうと、この命が尽きるその瞬間まで、足掻き続けてみせる」
「……兄様……」
「この剣は、そんな俺の想いと、初代聖女に仕えた騎士の想い、両方がこもった剣だ。……きっとお前にも届くはずだ」
兄様がそう言った瞬間、予言者の顔から笑顔が消えた。
「……ばかばかしい。想いなんかで、神の力がうち消せると思うだなんて、どこまで脳内お花畑の脳筋野郎なんですか。ーーあなたは、昔からずっとそうだ。馬鹿で、腹立たしいくらいまっすぐで、愛した相手に愛を伝えることを躊躇わない。だから、私はあなたが嫌いなんですよ。初めて会った時からずっと」
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「なら……俺はこの剣に全てを託すだけだ」
「はあ? ここまで言っても、まだ私と戦うつもりなんですか。当代聖女様の兄君は、ずいぶんと頭が残念なのですね。人間が神に敵うはずがないと、何故わからないのですか?」
「だが、この剣はお前の結界を破ったんだろう?」
「っそれは……」
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