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オージン・メトオグという王子
オージン・メトオグという王子21
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「……ああ゛?」
メンチと共に、頭をわしづかみにせんと向かって来る手を、華麗に避ける私。
……ふ、決まった。いつまでも暴力に甘んじている私じゃないんだぜ。腰が抜けた悪魔様なんて敵じゃねぇーさ。
「てめぇ、ボケ! 避けんじゃねぇ!」
「私の繊細な頭蓋骨が、ぐしゃっていくかもしれないんで、嫌でーす。起きもしない未来を心配している馬鹿に馬鹿って言って何が悪いんですか」
いーと子供の様に歯をむき出しにしておちょくってやると、簡単に悪魔様の頭に血が上った。
やーね。男って。単純で直情的で。
「……ってめぇみたいな、いいとこの嬢ちゃんに、庶民の俺たちの気持ちがわかっかよ!」
「いいとこの嬢ちゃんだからこそ、馬鹿だって言っているんです!」
怒鳴るデイビッドに、私もまた同じくらいの声で怒鳴り返す。
デイビッドは私の言葉に腹を立てているようだが、私だって腸煮えたぎってんだ。例えここでペナルティを与えられようが、譲れない。
だって、こいつもまた、オージン同様に、「ルクレア・ボレア」を侮蔑したのだから。
「――ご主人様や、ご主人様の家族を、オージン程度に罰せさせるわけがないでしょうが」
馬鹿にするな。
見くびるな。
お前の目の前にいるのは。お前が隷属させたのは、誰だと思っている。
「私がそんなこと許す筈がないでしょうが! 王族にだって、けして手出しなぞさせない。必要だったら、法だって捻じ伏せてみせる。――どんなことをしても絶対に、守って見せるに決まっているでしょう!?」
主となった人物に害を及ぼす存在を、ルクレア・ボレアが許す筈ないだろうが。
主人になったのなら、それくらい理解しろ! だアホ!
悪魔様は私の言葉に、完全に虚を突かれたかのように、ぽかんと口を開けていた。
暫くして我に返ると、せわしなく瞬きをしながら、得体のしれない物をみるような目を私に向けた。
「……お前、頭湧いてんじゃねぇか」
……おい。ここは私の忠誠心に感動するところだろうが。なんだ、その失礼過ぎる第一声は。
「……至って正常でございますが」
「んなわけねぇだろ! まともな人物だったら、無理矢理隷属させられた相手に、あんな鳥肌立つ様なキモい台詞言えるか! 自慢じゃねぇが、てめぇに対してひでぇ態度しかとった覚えねぇぞ、俺は!」
ひでぇ態度とってる自覚、あったんかーい。だったら良心の呵責を感じて、少しでも私に優しく接してください。マジで。切実に待遇改善求む。
「……それでも、ご主人様は、私の主ですから」
だから、仕方ない。
横暴で、女の子に対しても暴力振るうような最低の駄目男で、従うのは非常に不本意なのだが、主になった以上全力で従うのが筋だろう。
「守りますよ。私の全てで。ご主人様が、私の主である限りは」
それこそ、ボレア家の名に掛けて誓うさ。
私はデイビッドに向かって、満面の笑みを浮かべて見せた。
菩薩のごとき慈愛に満ちた笑みだったが、デイビッドの顔は心底気味が悪そうに歪められた。……失敬な。芸術作品のごとく美しいだろうが。
「……前々から思っていたが、なんでてめぇは、それだけすんなり隷属関係を受け入れてんだ……? 普通もっと抗ったり、拒絶したりするだろう。それこそ俺の目が離れた隙に、家族なりなんなりに助けを求めたりとかして」
「して良かったんですか? んなこと」
「良くねぇ。……んな気配見せたら、がちがちにペナルティつけて縛り付けてやるつもりだったが……にしても、ここまで受け入れてんのはおかしいだろう」
……うっは。下手な動き見せんで良かった。
未だペナルティを課されたことないが、悪魔様の考えるペナルティでがっちがちな生活なんて絶対恐ろしい……想像しただけで悪寒がするわ。
……しかし、私がわりとすんなり隷属関係受け入れてんの、そんなにおかしいかなー? 私としては、ボレア家に悪影響及ぼさない限り、隷属関係は受け入れてしかるべきだと思っているんだけど。
「だって、私もご主人様と、同じことをしてますから」
「……隷属魔法を使える奴なんて、俺以外にもいたのか?」
「隷属魔法じゃないですよ。主従契約です」
隷属魔法は人間が対象とされるが故に禁呪とされた。だが、人間以外の対象を隷属させる魔法は、別に取り締まられてはいない。寧ろ推奨されている。
禁呪なんて、所詮人間が人間の為に定めたルールだから。
「――私は、力で屈服させることで、精霊たちを従えました」
対象が人間か精霊か変わるだけで、私が成したことは、本質的には悪魔様の隷属魔法と何も変わりはしないのだ。
メンチと共に、頭をわしづかみにせんと向かって来る手を、華麗に避ける私。
……ふ、決まった。いつまでも暴力に甘んじている私じゃないんだぜ。腰が抜けた悪魔様なんて敵じゃねぇーさ。
「てめぇ、ボケ! 避けんじゃねぇ!」
「私の繊細な頭蓋骨が、ぐしゃっていくかもしれないんで、嫌でーす。起きもしない未来を心配している馬鹿に馬鹿って言って何が悪いんですか」
いーと子供の様に歯をむき出しにしておちょくってやると、簡単に悪魔様の頭に血が上った。
やーね。男って。単純で直情的で。
「……ってめぇみたいな、いいとこの嬢ちゃんに、庶民の俺たちの気持ちがわかっかよ!」
「いいとこの嬢ちゃんだからこそ、馬鹿だって言っているんです!」
怒鳴るデイビッドに、私もまた同じくらいの声で怒鳴り返す。
デイビッドは私の言葉に腹を立てているようだが、私だって腸煮えたぎってんだ。例えここでペナルティを与えられようが、譲れない。
だって、こいつもまた、オージン同様に、「ルクレア・ボレア」を侮蔑したのだから。
「――ご主人様や、ご主人様の家族を、オージン程度に罰せさせるわけがないでしょうが」
馬鹿にするな。
見くびるな。
お前の目の前にいるのは。お前が隷属させたのは、誰だと思っている。
「私がそんなこと許す筈がないでしょうが! 王族にだって、けして手出しなぞさせない。必要だったら、法だって捻じ伏せてみせる。――どんなことをしても絶対に、守って見せるに決まっているでしょう!?」
主となった人物に害を及ぼす存在を、ルクレア・ボレアが許す筈ないだろうが。
主人になったのなら、それくらい理解しろ! だアホ!
悪魔様は私の言葉に、完全に虚を突かれたかのように、ぽかんと口を開けていた。
暫くして我に返ると、せわしなく瞬きをしながら、得体のしれない物をみるような目を私に向けた。
「……お前、頭湧いてんじゃねぇか」
……おい。ここは私の忠誠心に感動するところだろうが。なんだ、その失礼過ぎる第一声は。
「……至って正常でございますが」
「んなわけねぇだろ! まともな人物だったら、無理矢理隷属させられた相手に、あんな鳥肌立つ様なキモい台詞言えるか! 自慢じゃねぇが、てめぇに対してひでぇ態度しかとった覚えねぇぞ、俺は!」
ひでぇ態度とってる自覚、あったんかーい。だったら良心の呵責を感じて、少しでも私に優しく接してください。マジで。切実に待遇改善求む。
「……それでも、ご主人様は、私の主ですから」
だから、仕方ない。
横暴で、女の子に対しても暴力振るうような最低の駄目男で、従うのは非常に不本意なのだが、主になった以上全力で従うのが筋だろう。
「守りますよ。私の全てで。ご主人様が、私の主である限りは」
それこそ、ボレア家の名に掛けて誓うさ。
私はデイビッドに向かって、満面の笑みを浮かべて見せた。
菩薩のごとき慈愛に満ちた笑みだったが、デイビッドの顔は心底気味が悪そうに歪められた。……失敬な。芸術作品のごとく美しいだろうが。
「……前々から思っていたが、なんでてめぇは、それだけすんなり隷属関係を受け入れてんだ……? 普通もっと抗ったり、拒絶したりするだろう。それこそ俺の目が離れた隙に、家族なりなんなりに助けを求めたりとかして」
「して良かったんですか? んなこと」
「良くねぇ。……んな気配見せたら、がちがちにペナルティつけて縛り付けてやるつもりだったが……にしても、ここまで受け入れてんのはおかしいだろう」
……うっは。下手な動き見せんで良かった。
未だペナルティを課されたことないが、悪魔様の考えるペナルティでがっちがちな生活なんて絶対恐ろしい……想像しただけで悪寒がするわ。
……しかし、私がわりとすんなり隷属関係受け入れてんの、そんなにおかしいかなー? 私としては、ボレア家に悪影響及ぼさない限り、隷属関係は受け入れてしかるべきだと思っているんだけど。
「だって、私もご主人様と、同じことをしてますから」
「……隷属魔法を使える奴なんて、俺以外にもいたのか?」
「隷属魔法じゃないですよ。主従契約です」
隷属魔法は人間が対象とされるが故に禁呪とされた。だが、人間以外の対象を隷属させる魔法は、別に取り締まられてはいない。寧ろ推奨されている。
禁呪なんて、所詮人間が人間の為に定めたルールだから。
「――私は、力で屈服させることで、精霊たちを従えました」
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