乙女ゲームの悪役令嬢に転生したら、ヒロインが鬼畜女装野郎だったので助けてください

空飛ぶひよこ

文字の大きさ
66 / 191
ダーザ・オーサムというショタキャラ

ダーザ・オーサムというショタキャラ11

しおりを挟む
 思わず口端が引きつった。

「……いきなり何をおっしゃいますの?」

「僕は、必ず、貴女を越えて見せます……! 絶対に負けませんっ……!」

 ……聞けよ! 人の話を!(あれ、なんかこの状況デジャブ)

 完全についていけない私を置き去りに、ダーザは一人で勝手にヒートアップしていく。

「貴女に勝って……貴女より魅力的な男になって……そして、いつか……」

 続く言葉を飲み込んだダーザは、酷く切なげに唇を噛みしめた。

 ショタ美少年の、憂い顔。うむ。別に萌えツボではないが、こうして見てみるとなかなかいいものだ。絵になるな。
 思わず「大丈夫かい? お姉さんの胸を貸してあげようかい?」なんて言って抱きしめてやりたくなる。

 ふむ……これが母性本能っていうものか。私にもあったんか。そんな女らしい感情。

「……とにかく、僕は貴女には負けませんから……っ!」

 明後日なことを考えながら生ぬるい視線を飛ばす私に気が付いたのか、ダーザは再び私を強く睨み付けてから、そのまま背を向けてこの場を去っていく。

 ……なんてか、青いな。とても若い感じがする。
 しかし、言われたことの意味はさっぱり分からん。

 私に負けない?
 私より魅力的な男になる?
 ……なんのこっちゃ。

「……ハッ! これは、私より魅力的な存在になって、ノムルを自分の契約精霊にするという、略奪宣言…っ!?」

「……多分、チガウ……」

 ……ノムルの平静な突っ込みに少し、安心する。

 良かった……これでノムルが頬を染めて嬉しそうにしちゃったりしたら、本当どうしようかと…。
 ……いや、ちょっと待て。よくよく考えると、そんなノムル気持ち悪いな。例えどんなにダーザ気に入ったとしても、この基本装備:能面な精霊が、んな表情浮かべるわけないな。
 ちょっと、落ち着け。落ち着いて、現状整理してみよう……。

「……あ、肝心のデイビッドについて探り入れるの、忘れてた」

 ……セカンド図書室ミッション。
 見事に玉砕しましたー……! 私のアホ-……!


「――まぁ、やっちゃったことは仕方ないよね。ノムル。ちゃんと事情話せば、デイビッドも分かってくれるよね」

「……俺、アレ、苦手……マスタ、アレ、会ウナラ、帰ル……」

「……ノムルの薄情ものーっ!」

 今さら図書室戻っても仕方ないので、ノムルと二人でとぼとぼと帰路に着くことにした。

 この失敗をデイビッドに報告しなければならないと思うと、実に憂鬱である……。

 なかったことにしたくとも、報連相の重要さをかつての社会人経験から身に染みている私は、よせばいいのに、デイビッドに事前にダーザに接触することを電話で報告してしまっている。事故報告は当然求められるだろう。

 ……人が多すぎて会えんかったって、嘘の報告しちゃおうかしらん。ばれなきゃ、嘘は、嘘じゃないのだ……うん。

「……ア……マスタ……バイバイ……」

 何かに気が付いたノムルが、普段に無い電光石火の早さで、精霊界へと戻って行った。

 ……どう考えても嫌な予感しか、しない。

 ノムルが見ていた方向を敢えて見ないようにして、そのままくるりと180°方向転換する。

 私、見てない。
 何も、見てないから、大丈夫。
 見てないから、逃げても怒られない……っ!

「……ルクレア・せ・ん・ぱ・い」

 しかし、逃げようとした私の腕は、背後に迫った恐怖の存在から、想いきり鷲掴みにされた。

 ……痛い、痛い、痛い、痛い!
 ぜ、絶対、手の痕ついちゃってるだろっ、これ!

「こんなところで会えるなんて、嬉しいです! 実は、ちょうどルクレア先輩にお話ししたいことがあったんです。この後、お暇ですか?」

 振り返ればそこには、天使の微笑みを浮かべるデイビッド。

 ……だが、私には分かる。
 その背後からは、どす黒い苛立ちのオーラが流れているのを。
 浮かべる笑みが、微かに引きつっているのを。

 ……何でこのタイミングであんた、こんなに不機嫌なっちゃってんですかーっ……!
 ミッション失敗告げたら、確実に八つ当たりでお仕置きされてまうじゃないですかぁー……っ!

 い、行きたくない。絶対に着いて行きたくない。

「……ざ、残念ですわ。せっかくの貴女のお誘いだけど、私はこの後、用事が……」

「お・ひ・まですよね?」

 にっこりと暗黒笑みを深める、デイビッド。
 ……ぞわりと背筋に冷たいものが走った。

「……あったと思ったんだけど、勘違いでしたわ」

「……良かった。それじゃあ、私の寮室にでも行きましょうか」

 腕を掴まれて、そのまま引きずられていく。
 気分はさながら、売られる小牛のよう。頭の中に、あの有名な音楽が延々とリピートされている。

 ……あぁ、絶対ろくなことが待ち受けてやしねぇ……。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!

白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。 辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。 夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆  異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆ 

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のソフィーナは、非常に我が儘で傲慢で、どしうようもないクズ令嬢だった。そんなソフィーナだったが、事故の影響で前世の記憶をとり戻す。 前世では体が弱く、やりたい事も何もできずに短い生涯を終えた彼女は、過去の自分の行いを恥、真面目に生きるとともに前世でできなかったと事を目いっぱい楽しもうと、新たな人生を歩み始めた。 外を出て美味しい空気を吸う、綺麗な花々を見る、些細な事でも幸せを感じるソフィーナは、険悪だった兄との関係もあっという間に改善させた。 もちろん、本人にはそんな自覚はない。ただ、今までの行いを詫びただけだ。そう、なぜか彼女には、人を魅了させる力を持っていたのだ。 そんな中、この国の王太子でもあるファラオ殿下の15歳のお誕生日パーティに参加する事になったソフィーナは… どうしようもないクズだった令嬢が、前世の記憶を取り戻し、次々と周りを虜にしながら本当の幸せを掴むまでのお話しです。 カクヨムでも同時連載してます。 よろしくお願いします。

転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜

具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、 前世の記憶を取り戻す。 前世は日本の女子学生。 家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、 息苦しい毎日を過ごしていた。 ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。 転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。 女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。 だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、 横暴さを誇るのが「普通」だった。 けれどベアトリーチェは違う。 前世で身につけた「空気を読む力」と、 本を愛する静かな心を持っていた。 そんな彼女には二人の婚約者がいる。 ――父違いの、血を分けた兄たち。 彼らは溺愛どころではなく、 「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。 ベアトリーチェは戸惑いながらも、 この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。 ※表紙はAI画像です

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

処理中です...