72 / 191
ダーザ・オーサムというショタキャラ
ダーザ・オーサムというショタキャラ17
しおりを挟む
『……え、いや、その……』
突然のデイビッドの謝罪に、戸惑いを露わにするダーザ。
いきなり勝手な理論を捲し立てて、教科書を奪った傍若無人な女が、まさか突然謝るとは思わんかっただろう。警戒態勢を露わにしていたのに、さぞかし拍子抜けだろう。
せいぜい、動揺してくれ。その動揺が、愛に繋がるんだ。
『もう新しい物を買ってしまっただろうけど、この教科書、返すわ。……もしあなたが望むのなら、弁償だって、する』
そう言って目を伏せるデイビッドは、忠実に私の台本をこなしてくれている。
オージンの時は、自らに火の粉がかかる可能性を吟味したデイビッドが勝手に筋書きを作ってくれたけど、ダーザに対してはそこまで労力を費やす気はなかったようだ。
そもそも、ダーザを手駒にする意味自体、デイビッドは疑っていた。あんなガキ、下僕にしたところで、対してメリットないと。
……いや、確かにダーザは身分的には強い後ろ盾もないし、年齢だって年下だけど、天才児だから! 魔法理論に関しては、誰よりも優れているから!
ダーザの正規ルート攻略成功した場合の、後日談的おまけでは、十年後に超超超優秀な宮廷魔術師になって、大活躍していたダーザの姿が見れたから!
青田買いとしては、かなりの高物件よ? デイビッドめ、見る目ないぜ……。
まぁ、そんな感じで、消極的なご主人様に変わって、私がダーザ攻略の脚本を書かせて頂いた次第でございます。
……何としても、デイビッドの下僕を増やさねば、私の自由は得られないからな。例え鬼悪魔と罵られ様とも、ダーザにはデイビッドに夢中になってもらわねば困る。
全ては私の為に……!
『いや、弁償はいいですが……何で、いきなり……』
明らかに通常よりも多く瞬きをしながら、ダーザは微かに裏返った声でデイビッドに問う。
おおう。ここであからさまにキョどるところが、チョロくて愛らしいのう。どこぞの皇太子とは偉い違いだ。
頼むから、あんな擦れた男になってくれるな。君は君のままでいてくれ。そっちのが都合がいいから。
『……今になって、ようやく冷静になれたのよ。そうしたら、自分がいかに愚かだったか、気付けたわ』
デイビッドはそう言って、自嘲が混じった笑みを浮かべる。
魔法式を通して見ていた私ですら、ハッとするような、そんな笑みだった。
オージンの時も思ったが、デイビッドは、もんのすごく演技力が高い。まるでスイッチでもあるかのように瞬時に切り替えて、一瞬で「そこにあるべき」と考えるキャラクターを演じる。演じて、滅多なことでは崩したりしない。
……時々気が付けば素の自分が出てしまっている私とは、大違いだ。
『――あなたから教科書を奪い取ったとき、私は私の周りの全ての人間を敵だと思っていたの』
デイビッドはそう言って、綺麗に整えられた眉を顰めながら、苦々しげに微笑んだ。
過去を振り返るように細められたエメラルドの瞳が、蛍光灯の光を反射してきらめく。
『ルクレア先輩をはじめとして、あの時私は色々な人たちに虐められていたのよ。貴族の人々には、私のような庶民が栄誉あるこの学園に籍を置くこと自体が許せなかったみたい』
そう言って唇を噛みしめるデイビッドの姿に、ダーザの背が一瞬跳ねたのを私は見逃さなかった。
極悪非道だと思っていた相手が見せる、人間らしい弱さ。
それは、人の心を大きく揺さぶる。
『入学して以来ずっと続けられている嫌がらせに、私はあの時すっかり疲れていたの。誰でもいいから、誰かに当り散らしたくて、この苛立ちをぶつけたくて仕方なかった。……教科書を燃やされて、私の苛立ちはどうしようもなく大きくなったわ。だって、この学園の教科書は、私のような庶民にとっては、とても高価だもの。燃やされたから、すぐに次をなんて簡単に用意できるものじゃない』
……今だ、ディーネ! 魔法、発動!
私が魔力と共に発動した念話に(私と可愛い可愛い精霊たちの意思疎通には言葉は必要ないのですよ? だって、そこには言葉を超越した愛があるから)、既に隣の教室の中で待機していたディーネが水魔法を展開する。
精霊の行使する魔法は、人間が行う魔法展開とは異なる独自の「式」展開と理論体系を持つ。
それは、いくら魔法理論に天才的ひらめきを見せるダーザとて、目で見て理解することが出来ない独自の体系。人間である限り、けしてたどり着けない、未知の領域。
だから、ディーネの姿を認知しない限り、ダーザはきっと、騙される。
『だから、すぐ傍にいた、大人しそうな貴方に喚き散らして教科書を奪ったの。ただの、八つ当たりだったわ。貴族なんだから、大したことないでしょうって、そう開き直っていた。貴方の気持ちなんて少しも考えることもなく、ただ自分の事だけを考えて。……私は、本当自分勝手な、酷い女だわ』
『……っ!』
ダーザは、私の思惑通り、息を飲んでデイビッドを凝視した。
その視線の先には、濡れて光るエメラルドの瞳。
ディーネが放った水魔法は、正確にデイビッドの目に当たり、その頬を滴り落ちた。
まるで、一筋の涙のごとく。
……男なんて所詮、女の涙には弱い生き物なのさ。
デイビッド、本当は男だけどね!
突然のデイビッドの謝罪に、戸惑いを露わにするダーザ。
いきなり勝手な理論を捲し立てて、教科書を奪った傍若無人な女が、まさか突然謝るとは思わんかっただろう。警戒態勢を露わにしていたのに、さぞかし拍子抜けだろう。
せいぜい、動揺してくれ。その動揺が、愛に繋がるんだ。
『もう新しい物を買ってしまっただろうけど、この教科書、返すわ。……もしあなたが望むのなら、弁償だって、する』
そう言って目を伏せるデイビッドは、忠実に私の台本をこなしてくれている。
オージンの時は、自らに火の粉がかかる可能性を吟味したデイビッドが勝手に筋書きを作ってくれたけど、ダーザに対してはそこまで労力を費やす気はなかったようだ。
そもそも、ダーザを手駒にする意味自体、デイビッドは疑っていた。あんなガキ、下僕にしたところで、対してメリットないと。
……いや、確かにダーザは身分的には強い後ろ盾もないし、年齢だって年下だけど、天才児だから! 魔法理論に関しては、誰よりも優れているから!
ダーザの正規ルート攻略成功した場合の、後日談的おまけでは、十年後に超超超優秀な宮廷魔術師になって、大活躍していたダーザの姿が見れたから!
青田買いとしては、かなりの高物件よ? デイビッドめ、見る目ないぜ……。
まぁ、そんな感じで、消極的なご主人様に変わって、私がダーザ攻略の脚本を書かせて頂いた次第でございます。
……何としても、デイビッドの下僕を増やさねば、私の自由は得られないからな。例え鬼悪魔と罵られ様とも、ダーザにはデイビッドに夢中になってもらわねば困る。
全ては私の為に……!
『いや、弁償はいいですが……何で、いきなり……』
明らかに通常よりも多く瞬きをしながら、ダーザは微かに裏返った声でデイビッドに問う。
おおう。ここであからさまにキョどるところが、チョロくて愛らしいのう。どこぞの皇太子とは偉い違いだ。
頼むから、あんな擦れた男になってくれるな。君は君のままでいてくれ。そっちのが都合がいいから。
『……今になって、ようやく冷静になれたのよ。そうしたら、自分がいかに愚かだったか、気付けたわ』
デイビッドはそう言って、自嘲が混じった笑みを浮かべる。
魔法式を通して見ていた私ですら、ハッとするような、そんな笑みだった。
オージンの時も思ったが、デイビッドは、もんのすごく演技力が高い。まるでスイッチでもあるかのように瞬時に切り替えて、一瞬で「そこにあるべき」と考えるキャラクターを演じる。演じて、滅多なことでは崩したりしない。
……時々気が付けば素の自分が出てしまっている私とは、大違いだ。
『――あなたから教科書を奪い取ったとき、私は私の周りの全ての人間を敵だと思っていたの』
デイビッドはそう言って、綺麗に整えられた眉を顰めながら、苦々しげに微笑んだ。
過去を振り返るように細められたエメラルドの瞳が、蛍光灯の光を反射してきらめく。
『ルクレア先輩をはじめとして、あの時私は色々な人たちに虐められていたのよ。貴族の人々には、私のような庶民が栄誉あるこの学園に籍を置くこと自体が許せなかったみたい』
そう言って唇を噛みしめるデイビッドの姿に、ダーザの背が一瞬跳ねたのを私は見逃さなかった。
極悪非道だと思っていた相手が見せる、人間らしい弱さ。
それは、人の心を大きく揺さぶる。
『入学して以来ずっと続けられている嫌がらせに、私はあの時すっかり疲れていたの。誰でもいいから、誰かに当り散らしたくて、この苛立ちをぶつけたくて仕方なかった。……教科書を燃やされて、私の苛立ちはどうしようもなく大きくなったわ。だって、この学園の教科書は、私のような庶民にとっては、とても高価だもの。燃やされたから、すぐに次をなんて簡単に用意できるものじゃない』
……今だ、ディーネ! 魔法、発動!
私が魔力と共に発動した念話に(私と可愛い可愛い精霊たちの意思疎通には言葉は必要ないのですよ? だって、そこには言葉を超越した愛があるから)、既に隣の教室の中で待機していたディーネが水魔法を展開する。
精霊の行使する魔法は、人間が行う魔法展開とは異なる独自の「式」展開と理論体系を持つ。
それは、いくら魔法理論に天才的ひらめきを見せるダーザとて、目で見て理解することが出来ない独自の体系。人間である限り、けしてたどり着けない、未知の領域。
だから、ディーネの姿を認知しない限り、ダーザはきっと、騙される。
『だから、すぐ傍にいた、大人しそうな貴方に喚き散らして教科書を奪ったの。ただの、八つ当たりだったわ。貴族なんだから、大したことないでしょうって、そう開き直っていた。貴方の気持ちなんて少しも考えることもなく、ただ自分の事だけを考えて。……私は、本当自分勝手な、酷い女だわ』
『……っ!』
ダーザは、私の思惑通り、息を飲んでデイビッドを凝視した。
その視線の先には、濡れて光るエメラルドの瞳。
ディーネが放った水魔法は、正確にデイビッドの目に当たり、その頬を滴り落ちた。
まるで、一筋の涙のごとく。
……男なんて所詮、女の涙には弱い生き物なのさ。
デイビッド、本当は男だけどね!
1
あなたにおすすめの小説
無事にバッドエンドは回避できたので、これからは自由に楽しく生きていきます。
木山楽斗
恋愛
悪役令嬢ラナトゥーリ・ウェルリグルに転生した私は、無事にゲームのエンディングである魔法学校の卒業式の日を迎えていた。
本来であれば、ラナトゥーリはこの時点で断罪されており、良くて国外追放になっているのだが、私は大人しく生活を送ったおかげでそれを回避することができていた。
しかしながら、思い返してみると私の今までの人生というものは、それ程面白いものではなかったように感じられる。
特に友達も作らず勉強ばかりしてきたこの人生は、悪いとは言えないが少々彩りに欠けているような気がしたのだ。
せっかく掴んだ二度目の人生を、このまま終わらせていいはずはない。
そう思った私は、これからの人生を楽しいものにすることを決意した。
幸いにも、私はそれ程貴族としてのしがらみに縛られている訳でもない。多少のわがままも許してもらえるはずだ。
こうして私は、改めてゲームの世界で新たな人生を送る決意をするのだった。
※一部キャラクターの名前を変更しました。(リウェルド→リベルト)
ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない
魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。
そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。
ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。
イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。
ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。
いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。
離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。
「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」
予想外の溺愛が始まってしまう!
(世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない
おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。
どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに!
あれ、でも意外と悪くないかも!
断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。
※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
異世界転生した私は甘味のものがないことを知り前世の記憶をフル活用したら、甘味長者になっていた~悪役令嬢なんて知りません(嘘)~
詩河とんぼ
恋愛
とあるゲームの病弱悪役令嬢に異世界転生した甘味大好きな私。しかし、転生した世界には甘味のものないことを知る―――ないなら、作ろう!と考え、この世界の人に食べてもらうと大好評で――気づけば甘味長者になっていた!?
小説家になろう様でも投稿させていただいております
8月29日 HOT女性向けランキングで10位、恋愛で49位、全体で74位
8月30日 HOT女性向けランキングで6位、恋愛で24位、全体で26位
8月31日 HOT女性向けランキングで4位、恋愛で20位、全体で23位
に……凄すぎてびっくりしてます!ありがとうございますm(_ _)m
何やってんのヒロイン
ネコフク
恋愛
前世の記憶を持っている侯爵令嬢のマユリカは第二王子であるサリエルの婚約者。
自分が知ってる乙女ゲームの世界に転生しているときづいたのは幼少期。悪役令嬢だなーでもまあいっか、とのんきに過ごしつつヒロインを監視。
始めは何事もなかったのに学園に入る半年前から怪しくなってきて・・・
それに婚約者の王子がおかんにジョブチェンジ。めっちゃ甲斐甲斐しくお世話されてるんですけど。どうしてこうなった。
そんな中とうとうヒロインが入学する年に。
・・・え、ヒロイン何してくれてんの?
※本編・番外編完結。小話待ち。
悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。
倉桐ぱきぽ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私は、ざまぁ回避のため、まじめに生きていた。
でも、ヒロイン(転生者)がひどい!
彼女の嘘を信じた推しから嫌われるし。無実の罪を着せられるし。そのうえ「ちゃんと悪役やりなさい」⁉
シナリオ通りに進めたいヒロインからのハラスメントは、もう、うんざり!
私は私の望むままに生きます!!
本編+番外編3作で、40000文字くらいです。
⚠途中、視点が変わります。サブタイトルをご覧下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる