乙女ゲームの悪役令嬢に転生したら、ヒロインが鬼畜女装野郎だったので助けてください

空飛ぶひよこ

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ダーザ・オーサムというショタキャラ

ダーザ・オーサムというショタキャラ17

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『……え、いや、その……』

 突然のデイビッドの謝罪に、戸惑いを露わにするダーザ。
 いきなり勝手な理論を捲し立てて、教科書を奪った傍若無人な女が、まさか突然謝るとは思わんかっただろう。警戒態勢を露わにしていたのに、さぞかし拍子抜けだろう。
 せいぜい、動揺してくれ。その動揺が、愛に繋がるんだ。

『もう新しい物を買ってしまっただろうけど、この教科書、返すわ。……もしあなたが望むのなら、弁償だって、する』

 そう言って目を伏せるデイビッドは、忠実に私の台本をこなしてくれている。

 オージンの時は、自らに火の粉がかかる可能性を吟味したデイビッドが勝手に筋書きを作ってくれたけど、ダーザに対してはそこまで労力を費やす気はなかったようだ。
 そもそも、ダーザを手駒にする意味自体、デイビッドは疑っていた。あんなガキ、下僕にしたところで、対してメリットないと。

 ……いや、確かにダーザは身分的には強い後ろ盾もないし、年齢だって年下だけど、天才児だから! 魔法理論に関しては、誰よりも優れているから!
 ダーザの正規ルート攻略成功した場合の、後日談的おまけでは、十年後に超超超優秀な宮廷魔術師になって、大活躍していたダーザの姿が見れたから! 
 青田買いとしては、かなりの高物件よ? デイビッドめ、見る目ないぜ……。

 まぁ、そんな感じで、消極的なご主人様に変わって、私がダーザ攻略の脚本を書かせて頂いた次第でございます。

 ……何としても、デイビッドの下僕を増やさねば、私の自由は得られないからな。例え鬼悪魔と罵られ様とも、ダーザにはデイビッドに夢中になってもらわねば困る。
 全ては私の為に……!

『いや、弁償はいいですが……何で、いきなり……』

 明らかに通常よりも多く瞬きをしながら、ダーザは微かに裏返った声でデイビッドに問う。

 おおう。ここであからさまにキョどるところが、チョロくて愛らしいのう。どこぞの皇太子とは偉い違いだ。
 頼むから、あんな擦れた男になってくれるな。君は君のままでいてくれ。そっちのが都合がいいから。

『……今になって、ようやく冷静になれたのよ。そうしたら、自分がいかに愚かだったか、気付けたわ』

 デイビッドはそう言って、自嘲が混じった笑みを浮かべる。
 魔法式を通して見ていた私ですら、ハッとするような、そんな笑みだった。

 オージンの時も思ったが、デイビッドは、もんのすごく演技力が高い。まるでスイッチでもあるかのように瞬時に切り替えて、一瞬で「そこにあるべき」と考えるキャラクターを演じる。演じて、滅多なことでは崩したりしない。
 ……時々気が付けば素の自分が出てしまっている私とは、大違いだ。

『――あなたから教科書を奪い取ったとき、私は私の周りの全ての人間を敵だと思っていたの』

 デイビッドはそう言って、綺麗に整えられた眉を顰めながら、苦々しげに微笑んだ。  
 過去を振り返るように細められたエメラルドの瞳が、蛍光灯の光を反射してきらめく。

『ルクレア先輩をはじめとして、あの時私は色々な人たちに虐められていたのよ。貴族の人々には、私のような庶民が栄誉あるこの学園に籍を置くこと自体が許せなかったみたい』

 そう言って唇を噛みしめるデイビッドの姿に、ダーザの背が一瞬跳ねたのを私は見逃さなかった。
 極悪非道だと思っていた相手が見せる、人間らしい弱さ。
 それは、人の心を大きく揺さぶる。

『入学して以来ずっと続けられている嫌がらせに、私はあの時すっかり疲れていたの。誰でもいいから、誰かに当り散らしたくて、この苛立ちをぶつけたくて仕方なかった。……教科書を燃やされて、私の苛立ちはどうしようもなく大きくなったわ。だって、この学園の教科書は、私のような庶民にとっては、とても高価だもの。燃やされたから、すぐに次をなんて簡単に用意できるものじゃない』

 ……今だ、ディーネ! 魔法、発動!

 私が魔力と共に発動した念話に(私と可愛い可愛い精霊たちの意思疎通には言葉は必要ないのですよ? だって、そこには言葉を超越した愛があるから)、既に隣の教室の中で待機していたディーネが水魔法を展開する。

 精霊の行使する魔法は、人間が行う魔法展開とは異なる独自の「式」展開と理論体系を持つ。
 それは、いくら魔法理論に天才的ひらめきを見せるダーザとて、目で見て理解することが出来ない独自の体系。人間である限り、けしてたどり着けない、未知の領域。

 だから、ディーネの姿を認知しない限り、ダーザはきっと、騙される。

『だから、すぐ傍にいた、大人しそうな貴方に喚き散らして教科書を奪ったの。ただの、八つ当たりだったわ。貴族なんだから、大したことないでしょうって、そう開き直っていた。貴方の気持ちなんて少しも考えることもなく、ただ自分の事だけを考えて。……私は、本当自分勝手な、酷い女だわ』

『……っ!』

 ダーザは、私の思惑通り、息を飲んでデイビッドを凝視した。
 その視線の先には、濡れて光るエメラルドの瞳。
 ディーネが放った水魔法は、正確にデイビッドの目に当たり、その頬を滴り落ちた。
 まるで、一筋の涙のごとく。


 ……男なんて所詮、女の涙には弱い生き物なのさ。

 デイビッド、本当は男だけどね!
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