乙女ゲームの悪役令嬢に転生したら、ヒロインが鬼畜女装野郎だったので助けてください

空飛ぶひよこ

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ルカ・ポアネスという不良

ルカ・ポアネスという不良17

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「……運命?」

「そう……世界の意志や」

 ……突然何、電波めいたこと言いいだすんだ、この子は。

 思わずキエラに憐憫の視線を送ってしまった私は、次の瞬間ぎょっとする。
 キエラの榛色の瞳はいつの間にか金色に変化し、先日デイビッドに対する攻略キャラの好感度を見てもらった時のように、黒目が幾何学模様を形成し、「式」を象っていた。

 キエラは目の奥で式を、何かの生き物のように蠢かしながら、その瞳を真っ直ぐに私に向かって向ける。

「――うちの眼、不気味やろ?ルクレア様」


 うん、そうだね! 不気味だ! 気持ち悪いね!

「………」

 ……なんて素直に自分の心中を晒すわけにもいかない感じが何となくするので、私は黙り込んだまま、ただ真っ直ぐにキエラを見据えた。

 僅かでも視線を逸らしてはいけないような気がして、その式の動きを、ひたすら無言で観察し続ける。……目を逸らしたら、負けだ。多分、きっと。
 そんな私の行動が不満だったのか、キエラはその瞳に式を展開させたまま、唇を尖らせた。

「ひどいわぁ。ルクレア様。そこは違うって言って、私を慰めるとこやろ」

「……お望みならば、いくらでも言ってあげるわ。『式に合わせて色を変えるその瞳は、溜まらなく美しい』って、言葉を尽して賞賛してあげてもいい。……だけど貴女はそんな白々しい褒め言葉、悦ぶかしら?」

 私の問いかけに、キエラはにんまりと口元を緩めた。

「悦ばへんなぁ。……そんな嘘くさい言葉。うちが気持ち悪いことなんか、うちが一番知っているさかい」

 愉しげに発せられた筈のその言葉には、どこか自嘲するかのような、淋しげな色を帯びているように思った。
 だけど瞬きをした瞬間、確かに感じ取ったと思った淋しげな一面は瞬く間に霧散して、そのままキエラの貼りついた仮面の下に隠れて私が感じたそれが本物か偽物かも、分からなくなってしまった。

「ルクレア様。ポーサ家は身体強化に優れた一族や。……体に式を宿すものも、情報強化系身体強化を得意とするものも、過去に遡ればいくらでもおる。だから、うちの能力を、他家で疑問に思う人はまず、おらん」

 そうだ。身体に式を宿すものも、情報系身体強化特性を持つものも、けして多くは無いが、一定数は存在する。そしてポーサ家は、そんな特異体質の異能者を多く輩出する一族だ。

 だから、キエラが恋愛面に関してのみ、情報を収集できる特異な「眼」を持っていても、疑問に思わなかった。元々のゲームの知識があるだけに、サポートキャラならではの属性だな、と軽くとらえていた。


「……だけど。ポーサ家のもんなら分かる。うちの『眼』の異常さを。……だって、うちの目は完全に、普通の『身体強化』の領域を超えとるから」

「『身体強化』の領域?」

「『身体強化』はあくまで、『身体強化』や……。瞳の機能を向上させて洞察力を強化するものも、聴力を強化して普通の人なら聞こえないような情報を収集するもんも、過去にいるわ、いた。そういった奴らが、情報系身体強化特性の持ち主と一般的にはいわれとる。……けれどもそれは、結局は情報収集に関係する体の器官の能力を向上させるだけや。うちとは違う」

 先日の依頼の時の、キエラの様子を思い出す。
 あの時、キエラの口から出た攻略キャラの好感度。
 キエラの述べた好感度の背景には、確かな裏付けが確認でき、納得出来るものだった。
 だけどよくよく考えてみれば、あの数値はいかにして設定されているのだ。

 キエラは式の展開の最中、一体何を、見ているというんだ。


「普通なら眼で見てはけして分からんもんを、数値として、もしくは断片的な情報として、はっきりと映すことが出来るうちの瞳。……どう考えても『身体強化』の領域を超えとる。明らかに異常や」

 そう言ってキエラは、自嘲するように笑った。


「――うちは生まれながらの、生粋の『異常者』なんや」
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