乙女ゲームの悪役令嬢に転生したら、ヒロインが鬼畜女装野郎だったので助けてください

空飛ぶひよこ

文字の大きさ
106 / 191
ルカ・ポアネスという不良

ルカ・ポアネスという不良23

しおりを挟む
「……それって、キエラ・ポーサのことかしら?」

「キエラ……! キエラっつーのか、あの娘は……っ!」

 尻尾をますます強く振りながら、顔だけは相変わらず凶悪なままで、キエラ・ポーサ、キエラ・ポーサと何度もその名を反芻するルカ。

 んん? これって、もしや……。

「……その……キエ、キエラの学年は何年だ?」

「……一年ですわね」

「専攻は?」

「商業特化コースですわ。確か」

「お前と、キエラの関係は?」

「情報屋と、クライアントですわね」


 私の解答一つ一つに、喰らいつかんばかりに身を乗り出す、ルカに確信する。

 ………うーん。これって、どう考えてもアレだよな。

「……貴方、キエラに好意を抱いてますの?」

 恋しているとしか、思えん。

「―――っっっ!!!!!」

 私が指摘した瞬間、ルカの顔が面白いくらいに真っ赤に染まった。
 尻尾が動揺故に、不思議な動きではためく。

「んな、んなわけねぇだろーが! ば、馬鹿じゃねぇのっ!?」

 ……そんな分かりやす過ぎる、ツンデレテンプレっぽい台詞で返されても。
 思わず生ぬるい視線を送ってしまう。

「……お、俺はあれだ……っ! ただ、そのキエラに、恩義があるからっ! だから恩人のことくらい知っておかなければと思っただけで……っ」

「……恩人?」

「以前あの糞女に蹴り飛ばされて身ぐるみ剥がされた時に、助けてもらったんだよ……っ!」

 ……あぁ、そういえばキエラ、責任もってルカ回収したとかんなこと言ってたな。んで、それで惚れちゃったと。

 ……チョロイな、ルカ。典型的チョーローじゃないか。

「……そう。恩人のことが知りたいだけですの」

「そ、そうだっ!」

 顔真っ赤に、動揺全開で主張されても、全く説得力ないな。分かりやすいツンデレだ。
 だが、ここは敢えて乗っかってやろう。

「――残念ですわ」

 私は眉間に皺を寄せながら、大きくため息を吐いて肩を竦める。

「もし、貴方がキエラを好きだというのならば、もっと私に協力できることもあるかもしれないと思いましたのに。……質問はそれだけですわね。それじゃあ私はこれで失礼しますわ」

 そう言って身を翻して立ち去ろうとするなり、強い力で肩を掴まれた。

「――待て」

 振り返れば、予想通りそこには必死な形相のルカ・ポアネス。

「俺は、あの娘に……キエラに、惚れてる…認める…認めるから、協力しろ」


 うわあい。びっくりくらい計算通り。こいつ人間不信設定だったはずなんに、こんなチョロくて大丈夫なんか? お姉さん、ちょっと心配だよ。

 ――願い通り、分かりやすくてチョロくて、手のひらで簡単に転がされてもそれに気づかないような、単純な人間との分かりやすい交流タイム、ゲットです。

 ああ……癒やされるわぁー。



「――正直、どうすりゃあいいのか、わかんねぇんだ…。こんな気持ち、初めてで……」

 ……なんて、思っていた時期が、私にもありました。一瞬だけ。

「……うんうん」

「一瞬で惚れたはいいが、どこのだれかもわからねぇし。聞けるあてなんかねぇから、学園でうろうろして一人で探すしかなくてよ。……で、今日たまたま見つかったはいいが、なんて声を掛けりゃわかんねぇままキエラは、俺のことなんか気づかねぇでさっさと部屋に入っちまうし。しかも、部屋には結界が貼ってて中の様子も探れねぇから、中で何が起こってんのか心配で心配で……ようやく出てきても、やっぱり声なんか掛けらんねぇまんまで……」

「ソーナンダ」

 今、とても、後悔しています。
 
 最初から、気が付くべきでした。だって、この状況、果てしなくデジャブ。
 どこぞの皇太子にのろけ話と、ベクトルは違うけど、シチュエーション的には、同じなのです。
 私は皇太子に対して、今までどう思っていたかなんて、ちょっと考えれば分かることでした。

「……誰かに相談に乗って貰いたかったんだ。……だから、お前が協力してくれるっつってくれて嬉しかった」

 そう言ってはにかむルカに、思わず目を逸らす。…胸が、非常に痛い。

 ……言えない。心なしか、目ぇキラキラしちゃっているルカには、とても言えない。

 ――ツンデレを弄りたいあまり、ノリで協力するって言ったはいいが、改めて考えると他人の恋愛に首突っ込むなんて超面倒臭いじゃないか、と今頃気づいてしまったなんて言えやしない。

 なんで自分から、面倒事に首突っ込んでいったし。私のばかあああ!!!
 
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です

山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」 ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~

咲桜りおな
恋愛
 前世で大好きだった乙女ゲームの世界にモブキャラとして転生した伯爵令嬢のアスチルゼフィラ・ピスケリー。 ヒロインでも悪役令嬢でもないモブキャラだからこそ、推しキャラ達の恋物語を遠くから鑑賞出来る! と楽しみにしていたら、関わりたくないのに何故か悪役令嬢の兄である騎士見習いがやたらと絡んでくる……。 いやいや、物語の当事者になんてなりたくないんです! お願いだから近付かないでぇ!  そんな思いも虚しく愛しの推しは全力でわたしを口説いてくる。おまけにキラキラ王子まで絡んで来て……逃げ場を塞がれてしまったようです。 結構、ところどころでイチャラブしております。 ◆◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◆  前作「完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい」のスピンオフ作品。 この作品だけでもちゃんと楽しんで頂けます。  番外編集もUPしましたので、宜しければご覧下さい。 「小説家になろう」でも公開しています。

【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!

白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。 辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。 夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆  異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆ 

【完結】以上をもちまして、終了とさせていただきます

楽歩
恋愛
異世界から王宮に現れたという“女神の使徒”サラ。公爵令嬢のルシアーナの婚約者である王太子は、簡単に心奪われた。 伝承に語られる“女神の使徒”は時代ごとに現れ、国に奇跡をもたらす存在と言われている。婚約解消を告げる王、口々にルシアーナの処遇を言い合う重臣。 そんな混乱の中、ルシアーナは冷静に状況を見据えていた。 「王妃教育には、国の内部機密が含まれている。君がそれを知ったまま他家に嫁ぐことは……困難だ。女神アウレリア様を祀る神殿にて、王家の監視のもと、一生を女神に仕えて過ごすことになる」 神殿に閉じ込められて一生を過ごす? 冗談じゃないわ。 「お話はもうよろしいかしら?」 王族や重臣たち、誰もが自分の思惑通りに動くと考えている中で、ルシアーナは静かに、己の存在感を突きつける。 ※39話、約9万字で完結予定です。最後までお付き合いいただけると嬉しいですm(__)m

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

処理中です...