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ルカ・ポアネスという不良
ルカ・ポアネスという不良27
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私の言葉にルカは息を飲んだ。
衝撃受けたように目をカッと見開き、握りこぶしを震わすルカの真意は、パッと見では捉えにくい。
……金で何とかしろなんて言われて怒ったんかな?
……いや、違う。
尻尾が上機嫌にはためいている。
次の瞬間、頬を紅潮させたルカに、両手で勢いよく肩を掴まれた。
「――てめぇは、天才か……っ!」
キラキラと目を輝かせて私を見つめる、ルカ。
……ちょっと、やめて、そんな純真な目で見るの止めて。
天才と言うのは、否定しません。私、まさに天才ですから。
でも、ぶっちゃけ、それでキエラに気持ち届いたとしても、単に金蔓扱いされておわりだろーなーなんて思ってしまっているのが、非常に申し訳なくなるじゃないか……!
「……そ、そう。満足して頂けたなら良かったですわ。さっそく明日にでも電話なさったら?」
私はぎこちない笑みを張り付けながら、そそくさとルカの手から離れる。
……アドバイスしてやったし、もういいよな? 帰って。
キエラにある意味貢ぐような状況を提案してしまった罪悪感はあるが、それ以外にキエラと接点もつ為の具体的な案なんかないんだから、しょうがないよな。うん、私はきっと、悪くない。
後は、ルカ、キエラを落とせるかは、君の腕次第だ。ファイト。陰ながら、応援しているよ。
「それでは、私はこの辺りでお暇させて……」
「……ちょっと待て!」
さっさと帰ろうとする私を、ルカは静止する。
……なんだよ、まだあるのかよ。
「…え、と……その……エクレア?」
「……ルクレアですわ」
ひくりと口端が引きつる。
……何、人の名前、お菓子のしてくれやがってんだ。ついさっき名乗ったばかりだろう―が。
本当、重ね重ね無礼な奴だ……。
そんな私の怒りに一切気が付く様子もなく、ルカは恥らうように目を伏せて言葉を続けた。
「……その、ルクレア。……また、相談に乗って貰ってもいいか?」
…はい?
思わず耳を疑い、ルカをまじまじと見やる。
ルカの顔は至って真面目だ。……本気で言っているな、これは。
思わずため息が漏れた。
「……敢えて突っ込みませんでしたけど、貴方、ほとんど初対面も同然の私をそこまで信用なさって大丈夫ですの?」
「あん?」
……不思議そうな顔すんのやめろ。ほんと、調子狂うなぁ……。
腹黒いやだいやだ思ってたけど、天然の方がずっとやりにくいもんだね。初めて知ったよ。……所詮私も奴ら(オージン&キエラ)と同じ穴のムジナか。
私は敢えてきつい眼差しでルカを見据えると、立てた指を突きつけた。
「だから、そんなに貴方の事情を私に話してしまって、私が貴方の弱点ともいえるキエラを都合よく使わないかとかは思いませんの!? 私自身が【銀狼】に興味は無くても、私の周囲には野心家の貴族なんていくらでも群がってきますわ。そんな輩に私がキエラのことを話さないとは、限らないではありませんかっ!」
ルカは、甘い。甘すぎる。
人を信用した挙句、散々ひどい目に遭って人間不信に陥っている癖に、なんでんな簡単に私みたいな一癖も二癖もある人間をころっと信頼しちゃうかなぁ! もうっ!
私の言葉にルカはパチパチと目を瞬かせた。
「――キエラを利用すんのか?」
「しませんわっ! しませんけども……っ!」
「じゃあ、大丈夫だろ」
……だから、お前、そんなあっさりと……何を根拠に…っ。
しかし私のきつい言葉にも、ルカは揺るがない。
「人を避けて生きてはきたが、年齢を重ねるごとに動物的直観だけは鋭くなってきてんだ。直感力だけなら、今の俺は一族の誰にも負けねぇ自信がある。だからこそ、分かる。てめぇは信用しても大丈夫だと、俺の直感が言っている。てめぇは人に俺の秘密を漏らしたりしねぇよ」
……んなドヤ顔で自身満々で言い切られましても。
私としては、そんなこと言われる前だったら、ボレア家にとって大きな利益になる様なら、最悪ルカの情報漏らしても構わないと割り切っていたんだが。だって私は、知り合ったばかりのよく知らない他人よりもずっと、ボレア家の方が大事だもの。……勿論、積極的に言い触らす気なんか無かったけど。
あぁ、でも。そんな風に断言されると。そこまで強く信頼されると。
再び口から大きなため息が漏れた。全身から力が抜ける。
「……ルカ。先程のメモをお貸しなさい」
「え……」
「そんな悲痛な顔をされなくても、取り返したりしませんわ。すぐにお返しします」
私はルカが躊躇いがちに差し出したメモをひったくると、そこに私の名前と、先程とは異なる数字の羅列を記す。
「……はい。お返ししますわ」
「この数字は……」
「私の携帯の番号ですわ」
――こんな風に真っ直ぐに信頼されたら、その信頼に応えてやらなきゃと思わずにはいられないじゃないか。
「――ボレア家の名前に掛けて誓いますわ。貴方のキエラの想いを、貴方やキエラに害となる人間にはけして口外いたしません。……相談事があるなら、その番号にお掛けなさいな。時間に余裕があれば、話を聞いてあげますわ」
ルカはメモと私の顔を交互に見やって困惑していたが、やがて非常に嬉しそうに顔を緩めた。……あぁ、だから尻尾をそんなに千切れんばかりに振っちゃって。
「ありがとう。ルクレア。……これから、よろしくな」
……凶悪な顔に似合わん可愛い顔で笑ってんなや。
思わず胸きゅんしてしまったじゃないか。
愛しの精霊ズ専用の萌えツボが、刺激されてしまったじゃないか。
……どうも、私はツンデレに弱いらしい。きっと精霊達の影響だろう。
サーラム、ディーネ、シルフィ、ノムル
――言っておくけど浮気じゃないからね……!
胸キュンしたといってもお前たちに対するのときめきの、十分の一くらいだからね……っ! 信じてくれよっ!
衝撃受けたように目をカッと見開き、握りこぶしを震わすルカの真意は、パッと見では捉えにくい。
……金で何とかしろなんて言われて怒ったんかな?
……いや、違う。
尻尾が上機嫌にはためいている。
次の瞬間、頬を紅潮させたルカに、両手で勢いよく肩を掴まれた。
「――てめぇは、天才か……っ!」
キラキラと目を輝かせて私を見つめる、ルカ。
……ちょっと、やめて、そんな純真な目で見るの止めて。
天才と言うのは、否定しません。私、まさに天才ですから。
でも、ぶっちゃけ、それでキエラに気持ち届いたとしても、単に金蔓扱いされておわりだろーなーなんて思ってしまっているのが、非常に申し訳なくなるじゃないか……!
「……そ、そう。満足して頂けたなら良かったですわ。さっそく明日にでも電話なさったら?」
私はぎこちない笑みを張り付けながら、そそくさとルカの手から離れる。
……アドバイスしてやったし、もういいよな? 帰って。
キエラにある意味貢ぐような状況を提案してしまった罪悪感はあるが、それ以外にキエラと接点もつ為の具体的な案なんかないんだから、しょうがないよな。うん、私はきっと、悪くない。
後は、ルカ、キエラを落とせるかは、君の腕次第だ。ファイト。陰ながら、応援しているよ。
「それでは、私はこの辺りでお暇させて……」
「……ちょっと待て!」
さっさと帰ろうとする私を、ルカは静止する。
……なんだよ、まだあるのかよ。
「…え、と……その……エクレア?」
「……ルクレアですわ」
ひくりと口端が引きつる。
……何、人の名前、お菓子のしてくれやがってんだ。ついさっき名乗ったばかりだろう―が。
本当、重ね重ね無礼な奴だ……。
そんな私の怒りに一切気が付く様子もなく、ルカは恥らうように目を伏せて言葉を続けた。
「……その、ルクレア。……また、相談に乗って貰ってもいいか?」
…はい?
思わず耳を疑い、ルカをまじまじと見やる。
ルカの顔は至って真面目だ。……本気で言っているな、これは。
思わずため息が漏れた。
「……敢えて突っ込みませんでしたけど、貴方、ほとんど初対面も同然の私をそこまで信用なさって大丈夫ですの?」
「あん?」
……不思議そうな顔すんのやめろ。ほんと、調子狂うなぁ……。
腹黒いやだいやだ思ってたけど、天然の方がずっとやりにくいもんだね。初めて知ったよ。……所詮私も奴ら(オージン&キエラ)と同じ穴のムジナか。
私は敢えてきつい眼差しでルカを見据えると、立てた指を突きつけた。
「だから、そんなに貴方の事情を私に話してしまって、私が貴方の弱点ともいえるキエラを都合よく使わないかとかは思いませんの!? 私自身が【銀狼】に興味は無くても、私の周囲には野心家の貴族なんていくらでも群がってきますわ。そんな輩に私がキエラのことを話さないとは、限らないではありませんかっ!」
ルカは、甘い。甘すぎる。
人を信用した挙句、散々ひどい目に遭って人間不信に陥っている癖に、なんでんな簡単に私みたいな一癖も二癖もある人間をころっと信頼しちゃうかなぁ! もうっ!
私の言葉にルカはパチパチと目を瞬かせた。
「――キエラを利用すんのか?」
「しませんわっ! しませんけども……っ!」
「じゃあ、大丈夫だろ」
……だから、お前、そんなあっさりと……何を根拠に…っ。
しかし私のきつい言葉にも、ルカは揺るがない。
「人を避けて生きてはきたが、年齢を重ねるごとに動物的直観だけは鋭くなってきてんだ。直感力だけなら、今の俺は一族の誰にも負けねぇ自信がある。だからこそ、分かる。てめぇは信用しても大丈夫だと、俺の直感が言っている。てめぇは人に俺の秘密を漏らしたりしねぇよ」
……んなドヤ顔で自身満々で言い切られましても。
私としては、そんなこと言われる前だったら、ボレア家にとって大きな利益になる様なら、最悪ルカの情報漏らしても構わないと割り切っていたんだが。だって私は、知り合ったばかりのよく知らない他人よりもずっと、ボレア家の方が大事だもの。……勿論、積極的に言い触らす気なんか無かったけど。
あぁ、でも。そんな風に断言されると。そこまで強く信頼されると。
再び口から大きなため息が漏れた。全身から力が抜ける。
「……ルカ。先程のメモをお貸しなさい」
「え……」
「そんな悲痛な顔をされなくても、取り返したりしませんわ。すぐにお返しします」
私はルカが躊躇いがちに差し出したメモをひったくると、そこに私の名前と、先程とは異なる数字の羅列を記す。
「……はい。お返ししますわ」
「この数字は……」
「私の携帯の番号ですわ」
――こんな風に真っ直ぐに信頼されたら、その信頼に応えてやらなきゃと思わずにはいられないじゃないか。
「――ボレア家の名前に掛けて誓いますわ。貴方のキエラの想いを、貴方やキエラに害となる人間にはけして口外いたしません。……相談事があるなら、その番号にお掛けなさいな。時間に余裕があれば、話を聞いてあげますわ」
ルカはメモと私の顔を交互に見やって困惑していたが、やがて非常に嬉しそうに顔を緩めた。……あぁ、だから尻尾をそんなに千切れんばかりに振っちゃって。
「ありがとう。ルクレア。……これから、よろしくな」
……凶悪な顔に似合わん可愛い顔で笑ってんなや。
思わず胸きゅんしてしまったじゃないか。
愛しの精霊ズ専用の萌えツボが、刺激されてしまったじゃないか。
……どうも、私はツンデレに弱いらしい。きっと精霊達の影響だろう。
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