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ルカ・ポアネスという不良
ルカ・ポアネスという不良28
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「……マダ見ツカラナイノカ、マスター。イイ加減日ガ暮レテ来タゾ」
「……はいはい、もうちょっと探すからねー。後三十分くらいは」
「三十分ナンテ……! 夜ニナルジャナイカ! 駄目ダ駄目ダ! 夜ノ森ヲホッツキ歩クナンテ! 危険過ギル! 今スグ、帰ルベキダロ!」
「――だぁあああ!!! じゃかあしいっ!」
さっきから数歩歩くたびに繰り返されるお小言に、いい加減に堪忍袋の緒も切れた。
いくら目ん玉の中に入れてぐりぐりしても痛くなくないくらいに可愛い可愛い私の精霊だとしても、限度がある。
こうもぐちぐち言われたんじゃ、まともに探索も集中できんじゃないか。
「サーラム……そんなに私と一緒に来るのが嫌なら、ディーネ達みたいに精霊界に篭ってても構わないんだよ?」
私は先程から、私の周辺でぐちぐちうるさいサーラムをじと目で睨み付ける。
「この森に出てくる程度の魔物なんて、私の結界があればいくらでも遠ざけられるし、磁場が狂った場所に行ってもちゃんと転移魔法具も持っているから、いつでも気が向けば家に帰れる。万が一それでもどうしようも無いような事態になったとしても、その時に召喚すればいいし、わざわざこんなとこまで着いて来なくても全然問題ないんだよ。サーラムだって、デイビッドに会いたく無いんでしょ?」
そう。サーラムがどうしてもと着いて来たから好きにさせているけど、別に私が頼みこんで森の探索に付き合って貰っているわけじゃないんだ。
ぐちぐち言って、私の邪魔をするようなら、さっさと精霊界に帰って欲しい。
厄介ばらいをするかのような私の言葉に、サーラムは顔を真っ赤にして怒りだす。
「――バカ! マスターノ、バカ!」
「……馬鹿?」
唾を飛ばさんばかりの勢いのサーラムの罵声に、思わずカチンと来た。……マスターに馬鹿とは、いい度胸だ。こんにゃろ。
……ちょっと、最近私、精霊達に甘くし過ぎたかな。ちょっと舐められ過ぎてません? 誰が主人か分かってんのかな、んん?
ちょっとここらで主人らしい威厳を……。
しかしそんな決心は、次のサーラムの言葉に一瞬で吹き飛んだ。
「……俺ハナ、俺ハ、マスターヲ心配シテ言ッテイルンダ……! 夜中ノ森二、女ノ子ガ一人ナンテ、ドウ考エテモ危険ダロウ……!」
「……だから、私はこんな森くらい一人で大丈夫だって……」
「バカ! 何ガ起コルカ、ワカラナイダローガ! ソウ言ウ過信ガ危ナインダ!」
怒鳴っているサーラムの目に、きらりと光る涙。
サーラムは涙で潤んだうるうるの目で、私を見上げた。
「……俺ガイナイ所デ、マスター二何カアッタラ……俺ハ……俺ハ……!」
――ずきゅん!
心臓が、特大の矢に貫かれる音が聞こえた。
その矢の先は、真っ直ぐに私の心臓の中心、私の萌えツボのど真ん中を射抜いている。
……あああああっ!
やっぱり私の愛しの精霊は、ルカ・ポアネスのツンデレなんかよりも一千倍可愛い……っ!!!!
「サーラム! お前、超可愛い! 大す……」
しかし湧き上がる衝動のまま、サーラムに抱き着こうとした私の体は、突如全身を走った危険信号によって固まった。
肌がざわりと粟立ち、キンと耳の奥に耳鳴りが走る。心臓の鼓動が早くなり、冷たい汗が頬を伝った。
――何かが、近くにいる。
どうしようもなく、危険な何かが、近づいてきている。
私と同様の危険信号を感じ取ったらしいサーラムも、私を守る様に前に浮遊しながら、険しい表情で周囲を見渡す。
だが、その存在が確かに近づいてきている気配は分かるのに、それがどの方向にいるのか、どの辺りに潜んでいるのかが、全く分からない。それが一層、湧き上がる恐怖心を煽った。
どこだ。
どこに、いるんだ。
突然頭上から響いた物音に、びくりと体を跳ねさせた。
それが単に鳥が飛び立つ音だと気が付いて、ホッと胸を撫で下ろした瞬間。
「……っ!」
頭上の木が揺れ、ざんっと音を立てながら、目の前に何かが降ってきた。
「サーラム……っ!」
慌てて私とサーラムの周辺の結界を強化する式を展開しながら、サーラムの名を呼ぶ。
サーラムもまた、瞬時に戦闘態勢に入り、手の中に火魔法を展開させる。
一瞬の油断が、命取りになる。これだけ危険な気配を纏った相手なら、特に。
結界強化を展開する反対の手で、私もまた、攻撃魔法の式を紡ぎ始める。
まさに、一触即発。ピリピリとした緊張が、現れた【何か】との間を流れる。
だが、そんな空気を破ったのは、【何か】が発した一言だった。
「……こんなところで何やってんだ、下僕」
「……はいはい、もうちょっと探すからねー。後三十分くらいは」
「三十分ナンテ……! 夜ニナルジャナイカ! 駄目ダ駄目ダ! 夜ノ森ヲホッツキ歩クナンテ! 危険過ギル! 今スグ、帰ルベキダロ!」
「――だぁあああ!!! じゃかあしいっ!」
さっきから数歩歩くたびに繰り返されるお小言に、いい加減に堪忍袋の緒も切れた。
いくら目ん玉の中に入れてぐりぐりしても痛くなくないくらいに可愛い可愛い私の精霊だとしても、限度がある。
こうもぐちぐち言われたんじゃ、まともに探索も集中できんじゃないか。
「サーラム……そんなに私と一緒に来るのが嫌なら、ディーネ達みたいに精霊界に篭ってても構わないんだよ?」
私は先程から、私の周辺でぐちぐちうるさいサーラムをじと目で睨み付ける。
「この森に出てくる程度の魔物なんて、私の結界があればいくらでも遠ざけられるし、磁場が狂った場所に行ってもちゃんと転移魔法具も持っているから、いつでも気が向けば家に帰れる。万が一それでもどうしようも無いような事態になったとしても、その時に召喚すればいいし、わざわざこんなとこまで着いて来なくても全然問題ないんだよ。サーラムだって、デイビッドに会いたく無いんでしょ?」
そう。サーラムがどうしてもと着いて来たから好きにさせているけど、別に私が頼みこんで森の探索に付き合って貰っているわけじゃないんだ。
ぐちぐち言って、私の邪魔をするようなら、さっさと精霊界に帰って欲しい。
厄介ばらいをするかのような私の言葉に、サーラムは顔を真っ赤にして怒りだす。
「――バカ! マスターノ、バカ!」
「……馬鹿?」
唾を飛ばさんばかりの勢いのサーラムの罵声に、思わずカチンと来た。……マスターに馬鹿とは、いい度胸だ。こんにゃろ。
……ちょっと、最近私、精霊達に甘くし過ぎたかな。ちょっと舐められ過ぎてません? 誰が主人か分かってんのかな、んん?
ちょっとここらで主人らしい威厳を……。
しかしそんな決心は、次のサーラムの言葉に一瞬で吹き飛んだ。
「……俺ハナ、俺ハ、マスターヲ心配シテ言ッテイルンダ……! 夜中ノ森二、女ノ子ガ一人ナンテ、ドウ考エテモ危険ダロウ……!」
「……だから、私はこんな森くらい一人で大丈夫だって……」
「バカ! 何ガ起コルカ、ワカラナイダローガ! ソウ言ウ過信ガ危ナインダ!」
怒鳴っているサーラムの目に、きらりと光る涙。
サーラムは涙で潤んだうるうるの目で、私を見上げた。
「……俺ガイナイ所デ、マスター二何カアッタラ……俺ハ……俺ハ……!」
――ずきゅん!
心臓が、特大の矢に貫かれる音が聞こえた。
その矢の先は、真っ直ぐに私の心臓の中心、私の萌えツボのど真ん中を射抜いている。
……あああああっ!
やっぱり私の愛しの精霊は、ルカ・ポアネスのツンデレなんかよりも一千倍可愛い……っ!!!!
「サーラム! お前、超可愛い! 大す……」
しかし湧き上がる衝動のまま、サーラムに抱き着こうとした私の体は、突如全身を走った危険信号によって固まった。
肌がざわりと粟立ち、キンと耳の奥に耳鳴りが走る。心臓の鼓動が早くなり、冷たい汗が頬を伝った。
――何かが、近くにいる。
どうしようもなく、危険な何かが、近づいてきている。
私と同様の危険信号を感じ取ったらしいサーラムも、私を守る様に前に浮遊しながら、険しい表情で周囲を見渡す。
だが、その存在が確かに近づいてきている気配は分かるのに、それがどの方向にいるのか、どの辺りに潜んでいるのかが、全く分からない。それが一層、湧き上がる恐怖心を煽った。
どこだ。
どこに、いるんだ。
突然頭上から響いた物音に、びくりと体を跳ねさせた。
それが単に鳥が飛び立つ音だと気が付いて、ホッと胸を撫で下ろした瞬間。
「……っ!」
頭上の木が揺れ、ざんっと音を立てながら、目の前に何かが降ってきた。
「サーラム……っ!」
慌てて私とサーラムの周辺の結界を強化する式を展開しながら、サーラムの名を呼ぶ。
サーラムもまた、瞬時に戦闘態勢に入り、手の中に火魔法を展開させる。
一瞬の油断が、命取りになる。これだけ危険な気配を纏った相手なら、特に。
結界強化を展開する反対の手で、私もまた、攻撃魔法の式を紡ぎ始める。
まさに、一触即発。ピリピリとした緊張が、現れた【何か】との間を流れる。
だが、そんな空気を破ったのは、【何か】が発した一言だった。
「……こんなところで何やってんだ、下僕」
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