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ルカ・ポアネスという不良
ルカ・ポアネスという不良33
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「……まぁ、確かに。敵も多くなりそうだけど」
公衆の面前で銀狼の主認定されれば、それだけ反発も多かろう。
初代の熱狂的信者なんかは、ガチで命を狙ってくるかもしれない。リスクも大きい。
「覚悟のうえだ。……まぁ、そん時はオージンを上手く使うさ」
「オージン殿下を?」
「――伝説の利用を考えているのは、俺だけじゃねぇということさ」
デイビッドは、【銀狼の再来】を、自身が成り上がる為の足掛かりにしたがっている。
そして、一方でオージンもまた、自らの恋を成り立たせる為に、伝説を利用したいと考えている。
エンジェ・ルーチェを、伝説上の天使の再来と民に認識させることで、身分差がある婚姻を正当化しようとしているのだ。
「俺がルカを従えれば、傍から見ればエンジェ・ルーチェが【銀狼】の再来を従えたように見える。そして銀狼は初代国王ファストだけではなく、妻である天使にも忠誠を誓っていた。『エンジェ・ルーチェは天使の再来だから、銀狼の再来を従えることが出来たのだ』ーー伝説を若干捻じ曲げりゃ、そう主張だって出来るわけだ」
なるほど。
「天使が聖女に託した聖魔法の使い手でありながら、【銀狼の再来】を従えるエンジェ・ルーチェ。そんな認識が広まれば、お偉方だって、愚姉をただの庶民の娘で皇太子の伴侶になりえないと一笑するわけにはいかなくなる。……だからこそ、オージンは全力で俺を保護しようとするだろうよ。まぁ、そうじゃなくても、俺は想い人の兄弟だ。窮地に陥っている状況を見捨てられるわけがねぇ。……だいたい、俺がいなくなったら、愚姉と連絡も取れなくなるしなぁ? 恋で愚かになった権力者っつーのは扱いやすくていいなァ」
そう言って、くつくつと喉を鳴らして笑うその姿…まさに、悪魔。
先程のシリアスな雰囲気はどこに行ったのか、と思う程にいつものデイビッドの姿でした。……いやはや、相変わらずのようで何より。
……しかし、そう上手くはいくかね。残念ながら、ルカの今のコンディションは絶好調だぞ。
私のアドバイスに従った結果、キエラとぐんぐん接近できているらしく、ルカの最近の機嫌は鰻登りだ。聞きたくもないノロケを、定期的で電話越しに報告してくる。(非常に鬱陶しいのだが、電話をしながらまたその尻尾をぶんぶん振り回しているんだろーなぁ、思ったら脱力してついついちゃんと聞いてやってしまう。……ただ、どう考えても、キエラには金払いがいい太客としてカモられているようにしか思えん)
三度目の勝負は、不意打ちの一度目と、恋煩いに憔悴していたっぽい二度目ほど、上手くは行かなさそうだぞ……なんか、そう考えると余計なことしたかもと思わなくもないが。
「見ていろ、ルクレア。――俺は、武術大会で優勝して、銀狼の再来を従えて見せる」
……だけど、そんなこと、野望で瞳を輝かせるデイビッドにはとても言えない。
完全に先程までの冷たい雰囲気は消え去り、その内側から湧き上がる熱さえ伝わってくるような気がする。……うん、なんかこういうデイビッドの方がいいな。こっちの方がらしい。
そう思ったら、口元が自然ににやけて来た。
……全く。意外と熱血漢なんだから、悪魔様と来たら。
しかし、浮かんでいた緩い笑みは、からかう様に続けられたデイビッドの言葉に、瞬時に凍りついた。
「――そうだ、ルクレア。ルカを従えることが出来たら、お前を下僕から解放すること、考えてやってもいいぞ」
「え……」
「前にも言っただろ? 手頃な別の下僕を配下におけたら、契約の解除を考えてやってもいいって。…どうだ? 嬉しいか?」
向けられた愉しげなデイビッドの笑みに、キンと、頭の奥が凍りついたかのように冷たくなるようだった。
胸の奥で癒えて塞がったはずの傷口が、膿を持って再び開くのを感じた。
公衆の面前で銀狼の主認定されれば、それだけ反発も多かろう。
初代の熱狂的信者なんかは、ガチで命を狙ってくるかもしれない。リスクも大きい。
「覚悟のうえだ。……まぁ、そん時はオージンを上手く使うさ」
「オージン殿下を?」
「――伝説の利用を考えているのは、俺だけじゃねぇということさ」
デイビッドは、【銀狼の再来】を、自身が成り上がる為の足掛かりにしたがっている。
そして、一方でオージンもまた、自らの恋を成り立たせる為に、伝説を利用したいと考えている。
エンジェ・ルーチェを、伝説上の天使の再来と民に認識させることで、身分差がある婚姻を正当化しようとしているのだ。
「俺がルカを従えれば、傍から見ればエンジェ・ルーチェが【銀狼】の再来を従えたように見える。そして銀狼は初代国王ファストだけではなく、妻である天使にも忠誠を誓っていた。『エンジェ・ルーチェは天使の再来だから、銀狼の再来を従えることが出来たのだ』ーー伝説を若干捻じ曲げりゃ、そう主張だって出来るわけだ」
なるほど。
「天使が聖女に託した聖魔法の使い手でありながら、【銀狼の再来】を従えるエンジェ・ルーチェ。そんな認識が広まれば、お偉方だって、愚姉をただの庶民の娘で皇太子の伴侶になりえないと一笑するわけにはいかなくなる。……だからこそ、オージンは全力で俺を保護しようとするだろうよ。まぁ、そうじゃなくても、俺は想い人の兄弟だ。窮地に陥っている状況を見捨てられるわけがねぇ。……だいたい、俺がいなくなったら、愚姉と連絡も取れなくなるしなぁ? 恋で愚かになった権力者っつーのは扱いやすくていいなァ」
そう言って、くつくつと喉を鳴らして笑うその姿…まさに、悪魔。
先程のシリアスな雰囲気はどこに行ったのか、と思う程にいつものデイビッドの姿でした。……いやはや、相変わらずのようで何より。
……しかし、そう上手くはいくかね。残念ながら、ルカの今のコンディションは絶好調だぞ。
私のアドバイスに従った結果、キエラとぐんぐん接近できているらしく、ルカの最近の機嫌は鰻登りだ。聞きたくもないノロケを、定期的で電話越しに報告してくる。(非常に鬱陶しいのだが、電話をしながらまたその尻尾をぶんぶん振り回しているんだろーなぁ、思ったら脱力してついついちゃんと聞いてやってしまう。……ただ、どう考えても、キエラには金払いがいい太客としてカモられているようにしか思えん)
三度目の勝負は、不意打ちの一度目と、恋煩いに憔悴していたっぽい二度目ほど、上手くは行かなさそうだぞ……なんか、そう考えると余計なことしたかもと思わなくもないが。
「見ていろ、ルクレア。――俺は、武術大会で優勝して、銀狼の再来を従えて見せる」
……だけど、そんなこと、野望で瞳を輝かせるデイビッドにはとても言えない。
完全に先程までの冷たい雰囲気は消え去り、その内側から湧き上がる熱さえ伝わってくるような気がする。……うん、なんかこういうデイビッドの方がいいな。こっちの方がらしい。
そう思ったら、口元が自然ににやけて来た。
……全く。意外と熱血漢なんだから、悪魔様と来たら。
しかし、浮かんでいた緩い笑みは、からかう様に続けられたデイビッドの言葉に、瞬時に凍りついた。
「――そうだ、ルクレア。ルカを従えることが出来たら、お前を下僕から解放すること、考えてやってもいいぞ」
「え……」
「前にも言っただろ? 手頃な別の下僕を配下におけたら、契約の解除を考えてやってもいいって。…どうだ? 嬉しいか?」
向けられた愉しげなデイビッドの笑みに、キンと、頭の奥が凍りついたかのように冷たくなるようだった。
胸の奥で癒えて塞がったはずの傷口が、膿を持って再び開くのを感じた。
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