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ルカ・ポアネスという不良
ルカ・ポアネスという不良32
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差し出したお茶の最後の一杯を啜るデイビッドを、暫し横目で眺める。
……ふむ。切り出すタイミングとしては、この辺りかな?
「――そういえば、デイビッド。毎日森の中で訓練してんだって?」
「……あぁ、まあな」
ちょうど、デイビッドが持っている水筒の蓋は空っぽになったようだ。
人間、お腹がすっかり満たされているという時には、心身ともにリラックスして、口が緩くなる傾向になるとういう。
ならば、やはり聞き出すにはこのタイミングしかないだろう。交渉ごとは、お茶を飲み終わったタイミングでやれって聞いたことある気がするし。
「……何のために?」
「あん?」
あくまで、さりげなく。
世間話のような、軽い調子で、ごく自然に。
私は、軽く首を傾げながら、デイビッドに尋ねた。
「何のために、そこまで頑張って上を目指すの?」
『……ルクレア様は、どうしてデイビッドが野心を抱くようになったか、知っとるか?』
『一度聞いてみるとえぇで。……びっくりする程、くだらん理由やで』
『あぁ、そうや。……うちにとっては、どうしようもなくアホらしいもんの為に、デイビットは必死で努力しとんのや。毎日毎日、飽きることなく』
キエラのあの言葉の意味が、知りたかった。
私の言葉を聞いた途端、僅かに緩んでいたデイビッドの表情が、一瞬にして怜悧な冷たいものへと変わった。
デイビッドは睨み付けるような強い視線で、真っ直ぐに私を射抜く。
「……キエラに、何か聞いたのか?」
図星を疲れて心臓が大きく跳ね上がったが、それでも私は驚きを必死に隠しながら、にへらと緩い笑みを浮かべてみせた。
「ううん。ちょっと気になっただけ。何、何、もしかして触れちゃいけない話題だった? だとしたら、ごめん」
「……いや、そういうわけじゃねぇが……」
デイビッドは眉間に皺を寄せながら、暫し視線をあちこちに彷徨わせて、そして、小さく舌打ちを零した。
「……まぁ、いいか」
一つ大きく息を吐いてから、再びデイビッドは私に真っ直ぐに向き直った。
まるでエメラルドのような鮮やかな翠のその瞳に、どうしてか心がざわめいた。
「……『見返す為』だ」
「……え」
「昔、俺を弄んで捨てやがった女をいつか偉くなって見返してやるために、俺は毎日訓練を繰り返しているんだ」
ひゅうっと、喉の奥が鳴ったのが分かった。完全に、予想外の解答だ。
……ちょっと、キエラさん。
全然くだらないとかそんな感じではなきて、非常にシリアスな空気満載な雰囲気なんですけど、これどう言った見解の相違ですか―――!?
「……そう」
……しかし、それでも動揺を表に出さないとか、流石私! 演技力もハイスペック……!
あくまで、興味の一貫に過ぎなかったのだと、揺るがず言い張れる、私カッコいー。
「そして、その目的は叶いそうなの? ……手始めに、【銀狼の再来】の主になろうとしているんでしょ?」
せっかくなので遠回しに、武術大会に向けたコンディションも聞いてみることにする。……まぁ、見たところ特に問題もないように見えるけど。
そんなさっくりとした私の返答を気に入ったのか、デイビッドの纏っていた冷たいオーラが少し和らいだ。口元には、小さく笑みが滲んでいる。
「……犬っころの件に関しては五分五分っつーとこだな。あいつが武術大会でどの程度の力を出してくるか分からねぇから何とも言えねぇけれど。……だが、体調自体は悪くねぇ」
そう言ってデイビッドは、体操でもするかのように、ぐいとその両手をそりかえすように正面に伸ばした。
「武術大会であいつを負かせば、ルカは慣習に従わざるえねぇ。そして、狼獣人の慣習では、三度負けた時点でその場で忠誠を誓うことになっている。……つまり勝った時点で、お偉い貴族さんが群衆として大勢集まっている場で、銀狼の主という立場を知らしめることになるんだ。手っ取り早く俺の名をあげるには、一番いい方法だと思わねぇか?」
……ふむ。切り出すタイミングとしては、この辺りかな?
「――そういえば、デイビッド。毎日森の中で訓練してんだって?」
「……あぁ、まあな」
ちょうど、デイビッドが持っている水筒の蓋は空っぽになったようだ。
人間、お腹がすっかり満たされているという時には、心身ともにリラックスして、口が緩くなる傾向になるとういう。
ならば、やはり聞き出すにはこのタイミングしかないだろう。交渉ごとは、お茶を飲み終わったタイミングでやれって聞いたことある気がするし。
「……何のために?」
「あん?」
あくまで、さりげなく。
世間話のような、軽い調子で、ごく自然に。
私は、軽く首を傾げながら、デイビッドに尋ねた。
「何のために、そこまで頑張って上を目指すの?」
『……ルクレア様は、どうしてデイビッドが野心を抱くようになったか、知っとるか?』
『一度聞いてみるとえぇで。……びっくりする程、くだらん理由やで』
『あぁ、そうや。……うちにとっては、どうしようもなくアホらしいもんの為に、デイビットは必死で努力しとんのや。毎日毎日、飽きることなく』
キエラのあの言葉の意味が、知りたかった。
私の言葉を聞いた途端、僅かに緩んでいたデイビッドの表情が、一瞬にして怜悧な冷たいものへと変わった。
デイビッドは睨み付けるような強い視線で、真っ直ぐに私を射抜く。
「……キエラに、何か聞いたのか?」
図星を疲れて心臓が大きく跳ね上がったが、それでも私は驚きを必死に隠しながら、にへらと緩い笑みを浮かべてみせた。
「ううん。ちょっと気になっただけ。何、何、もしかして触れちゃいけない話題だった? だとしたら、ごめん」
「……いや、そういうわけじゃねぇが……」
デイビッドは眉間に皺を寄せながら、暫し視線をあちこちに彷徨わせて、そして、小さく舌打ちを零した。
「……まぁ、いいか」
一つ大きく息を吐いてから、再びデイビッドは私に真っ直ぐに向き直った。
まるでエメラルドのような鮮やかな翠のその瞳に、どうしてか心がざわめいた。
「……『見返す為』だ」
「……え」
「昔、俺を弄んで捨てやがった女をいつか偉くなって見返してやるために、俺は毎日訓練を繰り返しているんだ」
ひゅうっと、喉の奥が鳴ったのが分かった。完全に、予想外の解答だ。
……ちょっと、キエラさん。
全然くだらないとかそんな感じではなきて、非常にシリアスな空気満載な雰囲気なんですけど、これどう言った見解の相違ですか―――!?
「……そう」
……しかし、それでも動揺を表に出さないとか、流石私! 演技力もハイスペック……!
あくまで、興味の一貫に過ぎなかったのだと、揺るがず言い張れる、私カッコいー。
「そして、その目的は叶いそうなの? ……手始めに、【銀狼の再来】の主になろうとしているんでしょ?」
せっかくなので遠回しに、武術大会に向けたコンディションも聞いてみることにする。……まぁ、見たところ特に問題もないように見えるけど。
そんなさっくりとした私の返答を気に入ったのか、デイビッドの纏っていた冷たいオーラが少し和らいだ。口元には、小さく笑みが滲んでいる。
「……犬っころの件に関しては五分五分っつーとこだな。あいつが武術大会でどの程度の力を出してくるか分からねぇから何とも言えねぇけれど。……だが、体調自体は悪くねぇ」
そう言ってデイビッドは、体操でもするかのように、ぐいとその両手をそりかえすように正面に伸ばした。
「武術大会であいつを負かせば、ルカは慣習に従わざるえねぇ。そして、狼獣人の慣習では、三度負けた時点でその場で忠誠を誓うことになっている。……つまり勝った時点で、お偉い貴族さんが群衆として大勢集まっている場で、銀狼の主という立場を知らしめることになるんだ。手っ取り早く俺の名をあげるには、一番いい方法だと思わねぇか?」
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