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アルク・ティムシーというドエム
アルク・ティムシーというドエム38
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髪を侍女に命じて、いつもより一層華やかにセットさせた。
顔には普段はしない化粧を施す。
制服ではなく、豪奢な―けれどもあくまで「学生」向けのドレスを身に纏う。
【隷属の印】を隠す為にいつも身につけているチョーカーも、普段のシンプルなものから、宝石が付いた装飾性が高いものへと変えた。
……普段より少し首元に余裕があるのが気になるけれどまあ、大丈夫だろう。
オージンに見られて弱み握られるも嫌だから、一応肌に直接塗り粉を塗っておくか。
全ての準備が終わって、すっと背筋を伸ばして全身鏡に姿を映せば、そこに映し出されるのはド迫力な美女。
うーむ、白雪姫のお母さんってこんな感じかしら? 流石私ってば悪役令嬢。ダーティな魅力満載だわ。
……あれこの場合ダーティって使い方正しいのかな? 残念ながら、この世界には英語がないんで確かめられん。
鏡の中の私の真っ赤な紅を塗った唇が、つと吊り上る。
うん、綺麗だよ。自分よ。まさに、妖艶って言葉がぴったりだね。
さあ、向かいましょうか。学園へ。
今日はいよいよ舞踏会。正直全く楽しみにはしていないが、せいぜいボレア家令嬢として、周囲の一般ピーポーたちを、魅せてやろうじゃないか。
「ああ、なんと美しいんだ、ルクレア嬢! どんなに美しい大輪の薔薇だって、今の君の前では霞んでしまうだろう! まるでそう、美の女神を体現したかのようではないか! かくも美しいルクレア嬢とパートナーになれたなんて、きっとこの国、否、この世界で一番私は幸せ者だと思わざるを得ないよ!」
「……相変わらずですわね。オージン殿下」
……相変わらず、よくもまあ思ってもいない歯が浮くような美辞麗句を、立て板に水のようにすらすら並び立てることが出来るものよ。
そんな意志をこめて眼だけでオージンを睨み付けながら、口元だけで話オージンに笑いかける。
「殿下こそ、大変素敵なお召し物を纏ってらっしゃいますわね。まるで、物語の中の王子様のようで素敵ですわ」
「……ルクレア嬢。私は元々王子だけど?」
んなもん、知ってらあ。その王族特有のごてごてギラギラした格好が不愉快だから当てこすっただけだよ。……まあかぼちゃパンツに白タイツじゃないだけマシだけど。
「あら、私ったら、変なことを言ってしまいましたわ。申し訳ありません。殿下。……私はただ、こんなに素敵な殿下のパートナーとして踊れる私は、物語のお姫様のように幸せだと、そう伝えたかっただけですわ」
「君にそんな風に言って貰えるなんて、とても光栄だね」
おほほほほ、あはははは
向かい合ってにこやかに笑いあうものの、目だけはお互い笑っていない寒い会話を交わす。
……あーなんか私とオージンの周りだけ、周囲よりも気温が低いような気がするよ。やだやだ。こういう殺伐した関係って。
しかし、そんな私達の心境なんか知らない周囲の生徒たちは、どこか興奮したような面持ちで、私達の様子を伺っている。
まあ、傍から見たら皇太子と大貴族令嬢の、超ビッグカップルだ。舞踏会の間中、それこそ動物園の獣並にじっくり観察されまくることだろう。覚悟はしている。
「――それじゃあ、ルクレア嬢。そろそろ時間だから会場へ向かおうか」
そう言ってオージンは、半歩先に足を踏みだすと、曲げた肘を私に向けながら流し目を送って来た。
……はいはい、エスコートですね。
正直この気障ったらしい仕草だけで鳥肌もんだけど、状況的に無視するわけにもいくまい。なんせ一応オージンは格上の相手だ。動作の意味が分からないとすっとぼけてもいんだが、周囲から物知らずと思われるのもそれはそれで嫌だしな。
内心では葛藤しながらも、当然ながらそんなことは僅かでも表には出さずに微笑みながら、オージンの肘の間に手を差し込み、その腕のところに軽く手を置いた。……そう、所謂腕組みである。
そんな私にオージンは微笑み返しながら、ゆっくりと優雅な足取りで歩きはじめた。
――そして、乙女ゲームの中では、エンディングに次ぐ、大イベントにあたる「舞踏会」が開幕する。
顔には普段はしない化粧を施す。
制服ではなく、豪奢な―けれどもあくまで「学生」向けのドレスを身に纏う。
【隷属の印】を隠す為にいつも身につけているチョーカーも、普段のシンプルなものから、宝石が付いた装飾性が高いものへと変えた。
……普段より少し首元に余裕があるのが気になるけれどまあ、大丈夫だろう。
オージンに見られて弱み握られるも嫌だから、一応肌に直接塗り粉を塗っておくか。
全ての準備が終わって、すっと背筋を伸ばして全身鏡に姿を映せば、そこに映し出されるのはド迫力な美女。
うーむ、白雪姫のお母さんってこんな感じかしら? 流石私ってば悪役令嬢。ダーティな魅力満載だわ。
……あれこの場合ダーティって使い方正しいのかな? 残念ながら、この世界には英語がないんで確かめられん。
鏡の中の私の真っ赤な紅を塗った唇が、つと吊り上る。
うん、綺麗だよ。自分よ。まさに、妖艶って言葉がぴったりだね。
さあ、向かいましょうか。学園へ。
今日はいよいよ舞踏会。正直全く楽しみにはしていないが、せいぜいボレア家令嬢として、周囲の一般ピーポーたちを、魅せてやろうじゃないか。
「ああ、なんと美しいんだ、ルクレア嬢! どんなに美しい大輪の薔薇だって、今の君の前では霞んでしまうだろう! まるでそう、美の女神を体現したかのようではないか! かくも美しいルクレア嬢とパートナーになれたなんて、きっとこの国、否、この世界で一番私は幸せ者だと思わざるを得ないよ!」
「……相変わらずですわね。オージン殿下」
……相変わらず、よくもまあ思ってもいない歯が浮くような美辞麗句を、立て板に水のようにすらすら並び立てることが出来るものよ。
そんな意志をこめて眼だけでオージンを睨み付けながら、口元だけで話オージンに笑いかける。
「殿下こそ、大変素敵なお召し物を纏ってらっしゃいますわね。まるで、物語の中の王子様のようで素敵ですわ」
「……ルクレア嬢。私は元々王子だけど?」
んなもん、知ってらあ。その王族特有のごてごてギラギラした格好が不愉快だから当てこすっただけだよ。……まあかぼちゃパンツに白タイツじゃないだけマシだけど。
「あら、私ったら、変なことを言ってしまいましたわ。申し訳ありません。殿下。……私はただ、こんなに素敵な殿下のパートナーとして踊れる私は、物語のお姫様のように幸せだと、そう伝えたかっただけですわ」
「君にそんな風に言って貰えるなんて、とても光栄だね」
おほほほほ、あはははは
向かい合ってにこやかに笑いあうものの、目だけはお互い笑っていない寒い会話を交わす。
……あーなんか私とオージンの周りだけ、周囲よりも気温が低いような気がするよ。やだやだ。こういう殺伐した関係って。
しかし、そんな私達の心境なんか知らない周囲の生徒たちは、どこか興奮したような面持ちで、私達の様子を伺っている。
まあ、傍から見たら皇太子と大貴族令嬢の、超ビッグカップルだ。舞踏会の間中、それこそ動物園の獣並にじっくり観察されまくることだろう。覚悟はしている。
「――それじゃあ、ルクレア嬢。そろそろ時間だから会場へ向かおうか」
そう言ってオージンは、半歩先に足を踏みだすと、曲げた肘を私に向けながら流し目を送って来た。
……はいはい、エスコートですね。
正直この気障ったらしい仕草だけで鳥肌もんだけど、状況的に無視するわけにもいくまい。なんせ一応オージンは格上の相手だ。動作の意味が分からないとすっとぼけてもいんだが、周囲から物知らずと思われるのもそれはそれで嫌だしな。
内心では葛藤しながらも、当然ながらそんなことは僅かでも表には出さずに微笑みながら、オージンの肘の間に手を差し込み、その腕のところに軽く手を置いた。……そう、所謂腕組みである。
そんな私にオージンは微笑み返しながら、ゆっくりと優雅な足取りで歩きはじめた。
――そして、乙女ゲームの中では、エンディングに次ぐ、大イベントにあたる「舞踏会」が開幕する。
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