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第147話 二人の少年
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2022年9月15日 日本標準時
午後1時0分
日本 東京都 千代田区 霞ヶ関 東京駅前八重洲通り ガイム視点
_________________
「すごいな…なんというが…リアルだとこう…なんだろうな」
「あの緑色のやつが毒ガスか?」
「そうだと思う」
ヒカルはそう言うとスマホを取り出し、目の前を撮影する。
「一応撮っておきたいからね。にしても…あの色のガスだと粗悪って感じするなあ。色が透明じゃないあたり」
「でもやばいもんはやばいんだろ?30年前にも同じような事が起きたって言ってたし」
「まあどっちみち危ないのに変わりはない。とりあえずこっち行こうぜ。人が多すぎて見れん」
「あいあい」
ヒカルに言われるがまま、大通りを進んで行く。
「…?」
だが突然ヒカルは何も言わずに止まり、顔を後ろに向ける。そしてしばらくそのままの形でじーっとしている。
「何どうしたの?」
何をしているのな分からず、ヒカルに聞くがヒカルは「う~ん」と唸った後
「なんか叫び声がして…」
「叫び声?そりゃあこんな大事なら叫び声くらい…」
「…そうだよな。ごめんなんか気になって」
「まあいいけど…」
そう言うとヒカルは再び歩みを進める。
「やっぱりあの人が関わってんのかな…あの高速道路の傍にいた」
「まあそうだろうね。でもあの人多分下っ端なのか、何も知らなそうだったし」
そう言うとヒカルは通りを右に行く。だがそこにも多くの人集りができていた。
「うわー。すごいなあ。ここも駄目か」
「とんだ取り越し苦労になったな。あとさヒカル、警察には何も言わないのか?」
俺はさっきから思っている事を口にしてみる。この世界では何か事件があれば警察に全て任せるらしいからだ。
「……いやあいつを巻き込めない。ユウタ君を巻き込んだら彼女も巻き込むから」
「はあ…」
彼女が誰かは分からないがユウタという人物、おそらくはもう一人の協力者であり、俺達の存在を知っている人物の事だろう。あと意外と良心があることに驚いた。
微妙な空気に若干なってしまったが、ヒカルは気にすることなく来た道を戻ろうとする。
「帰ろ。ここにいてももう意味ないし、帰って考えよ」
「俺達の成果はお前が人を殴った事以外ないのだが」
「そこは気にすんなよガイム。あの人目が覚めたら餓鬼にやられたって言いそうで面白そうだしさ。そこから警察が全て解決するかもしれないし、それは面白くないけど」
「そういうものなのか?」
「10代の少年に解けるやつが国家に属したエリート集団のお巡りさん達が知らないはずないって。実際やばかった時あったし」
「…まあ俺も帰りたいしな。賛成だ。というかもっと平和に暮らせないものなのか…」
……今考えれば家にいればこんな目に合わなかったのでは…というか俺達、一応謎の組織に指名手配されてる身なんだから…アナリスの魔法でどうにかなってるとは言え…の話だ。
俺とヒカルは切りが良いところで来た道を戻り、再び通りを左に曲がろうとする。
「……え」
だが左に曲がった直前、ヒカルの足が止まる。その顔には何か驚きが走っているように見える。
「……ガイム静かに俺に付いてきて、説明は後でする」
「え…分かった」
「ありがと」
そう言うとヒカルは後ろを向いてゆっくりと歩き出す。また寄り道をするつもりなのかもしれない。
「……付いてきてる場合は最悪…いや待ていい考えが、でもリスクが…う~ん。やばいな。どの道、でも好奇心とかいろいろが…あ、独り言喋ってる俺?でも…」
「おいどうした」
「ええっと…よし決めた。どうせなら…!」
「…?」
_________________
田村雅俊は辺りを見渡し、人混みを掻き分けるようにして前に進んだ。目を凝らし、何事の異常も逃すまいと意気込みを上げる。
「どこだ…どこに…」
「田村!おい!」
後ろから声をかけられる。横目で見ると中谷が疲れた素振りも見せず追い付いてきたようだ。
「どうしたんだ急に…走り出して…」
「子供…子供を見なかったか?」
「はあ?」
「子供だ!高校生くらいの少年二人!」
中谷の疑問に答えることなく、自分の話を進めていく。
「お前が何がしたいのかは分からんがさっきいたぞ。右に曲がって行った。工事現場の近くだ」
「工事現場…」
それを聞くと同時に俺は走り出す。中谷が再び何かを叫んでいるが構わない。
「工事現場…!」
すぐに工事現場の前に辿り着く。作業員はどこかに行って…おそらく東京駅のほうにいるのだろうが。
「中か…?中にいるのか?」
安全第一と書かれたフェンスを越え、中に入って行く。音はしない。だが直感がすぐそこにいると言っている。
カン!カン!カン!
自分の足音が狭く、暗い現場に響く。
カン!
足を止め、左右を見る。これがこの現場の端、ならば逆側を…
カン!
俺は動きを止める。足音、そして俺は足を動かしていなかった。
顔だけを振り向かせ、そこを見る。
「これ…分かるよね?」
高いとも低いとも言わない声がする。だがそれを喋っているのは間違いなく…少年だった。
二人いる少年のうち、黒髪の少年はこちらに…拳銃を向けている。片手で重心を持ち、引き金に手をかけている。
もう一人の茶髪に近い少年は何もしていない。ただ横を見ながら黒髪の少年と俺の様子を伺っているようだ。
「動いたら撃つよ。躊躇なくね」
黒髪の少年は抑揚のない声でそう言ってきた。
午後1時0分
日本 東京都 千代田区 霞ヶ関 東京駅前八重洲通り ガイム視点
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「すごいな…なんというが…リアルだとこう…なんだろうな」
「あの緑色のやつが毒ガスか?」
「そうだと思う」
ヒカルはそう言うとスマホを取り出し、目の前を撮影する。
「一応撮っておきたいからね。にしても…あの色のガスだと粗悪って感じするなあ。色が透明じゃないあたり」
「でもやばいもんはやばいんだろ?30年前にも同じような事が起きたって言ってたし」
「まあどっちみち危ないのに変わりはない。とりあえずこっち行こうぜ。人が多すぎて見れん」
「あいあい」
ヒカルに言われるがまま、大通りを進んで行く。
「…?」
だが突然ヒカルは何も言わずに止まり、顔を後ろに向ける。そしてしばらくそのままの形でじーっとしている。
「何どうしたの?」
何をしているのな分からず、ヒカルに聞くがヒカルは「う~ん」と唸った後
「なんか叫び声がして…」
「叫び声?そりゃあこんな大事なら叫び声くらい…」
「…そうだよな。ごめんなんか気になって」
「まあいいけど…」
そう言うとヒカルは再び歩みを進める。
「やっぱりあの人が関わってんのかな…あの高速道路の傍にいた」
「まあそうだろうね。でもあの人多分下っ端なのか、何も知らなそうだったし」
そう言うとヒカルは通りを右に行く。だがそこにも多くの人集りができていた。
「うわー。すごいなあ。ここも駄目か」
「とんだ取り越し苦労になったな。あとさヒカル、警察には何も言わないのか?」
俺はさっきから思っている事を口にしてみる。この世界では何か事件があれば警察に全て任せるらしいからだ。
「……いやあいつを巻き込めない。ユウタ君を巻き込んだら彼女も巻き込むから」
「はあ…」
彼女が誰かは分からないがユウタという人物、おそらくはもう一人の協力者であり、俺達の存在を知っている人物の事だろう。あと意外と良心があることに驚いた。
微妙な空気に若干なってしまったが、ヒカルは気にすることなく来た道を戻ろうとする。
「帰ろ。ここにいてももう意味ないし、帰って考えよ」
「俺達の成果はお前が人を殴った事以外ないのだが」
「そこは気にすんなよガイム。あの人目が覚めたら餓鬼にやられたって言いそうで面白そうだしさ。そこから警察が全て解決するかもしれないし、それは面白くないけど」
「そういうものなのか?」
「10代の少年に解けるやつが国家に属したエリート集団のお巡りさん達が知らないはずないって。実際やばかった時あったし」
「…まあ俺も帰りたいしな。賛成だ。というかもっと平和に暮らせないものなのか…」
……今考えれば家にいればこんな目に合わなかったのでは…というか俺達、一応謎の組織に指名手配されてる身なんだから…アナリスの魔法でどうにかなってるとは言え…の話だ。
俺とヒカルは切りが良いところで来た道を戻り、再び通りを左に曲がろうとする。
「……え」
だが左に曲がった直前、ヒカルの足が止まる。その顔には何か驚きが走っているように見える。
「……ガイム静かに俺に付いてきて、説明は後でする」
「え…分かった」
「ありがと」
そう言うとヒカルは後ろを向いてゆっくりと歩き出す。また寄り道をするつもりなのかもしれない。
「……付いてきてる場合は最悪…いや待ていい考えが、でもリスクが…う~ん。やばいな。どの道、でも好奇心とかいろいろが…あ、独り言喋ってる俺?でも…」
「おいどうした」
「ええっと…よし決めた。どうせなら…!」
「…?」
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田村雅俊は辺りを見渡し、人混みを掻き分けるようにして前に進んだ。目を凝らし、何事の異常も逃すまいと意気込みを上げる。
「どこだ…どこに…」
「田村!おい!」
後ろから声をかけられる。横目で見ると中谷が疲れた素振りも見せず追い付いてきたようだ。
「どうしたんだ急に…走り出して…」
「子供…子供を見なかったか?」
「はあ?」
「子供だ!高校生くらいの少年二人!」
中谷の疑問に答えることなく、自分の話を進めていく。
「お前が何がしたいのかは分からんがさっきいたぞ。右に曲がって行った。工事現場の近くだ」
「工事現場…」
それを聞くと同時に俺は走り出す。中谷が再び何かを叫んでいるが構わない。
「工事現場…!」
すぐに工事現場の前に辿り着く。作業員はどこかに行って…おそらく東京駅のほうにいるのだろうが。
「中か…?中にいるのか?」
安全第一と書かれたフェンスを越え、中に入って行く。音はしない。だが直感がすぐそこにいると言っている。
カン!カン!カン!
自分の足音が狭く、暗い現場に響く。
カン!
足を止め、左右を見る。これがこの現場の端、ならば逆側を…
カン!
俺は動きを止める。足音、そして俺は足を動かしていなかった。
顔だけを振り向かせ、そこを見る。
「これ…分かるよね?」
高いとも低いとも言わない声がする。だがそれを喋っているのは間違いなく…少年だった。
二人いる少年のうち、黒髪の少年はこちらに…拳銃を向けている。片手で重心を持ち、引き金に手をかけている。
もう一人の茶髪に近い少年は何もしていない。ただ横を見ながら黒髪の少年と俺の様子を伺っているようだ。
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黒髪の少年は抑揚のない声でそう言ってきた。
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