臆病な男は女の愛を信じられない

辰巳京介

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修学旅行でドイツの混浴サウナに連れて行かれました

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修学旅行でドイツの混浴サウナに連れて行かれました


登場人物

松本彩(18)
裕福な家庭の子が多い私立高校、私立##高校3年。
1週間前に転校してきた。

佐久間詩織(18)
私立##高校3年。おとなしい性格。

井上翔(18)
私立##高校3年。真面目な性格。

岸谷健一(18)
私立#高校3年。ちょっとちゃらいHな男。

1.
「しーおり!」
と、同級生の岸谷健一が佐久間詩織に声をかけてきた。
「・・・岸谷君」
「修学旅行、同じ班になろうぜ!」
「う、うん・・・」
私たちは、1週間後にドイツへの修学旅行を控えていた。
「彩ちゃんも、どう? 4人で向こう回ろうよ」
イケメン秀才の井上翔が私に話しかける。
「え、ええ」
そう、曖昧に答えたところで、先生が教室に入ってきた。
「さ、いよいよ来週は修学旅行です。みんな、体調管理には気を付けてね」
朝のあいさつを終えると、担任の吉岡先生がそう言った。
私の名前は、松本彩。この私立##高校に先週転校してきた。
転校する早々、修学旅行に行けるなんてついている。しかも、ドイツだなんて!
それにしても、修学旅行がドイツだなんて、さすが、裕福な家庭の子たちが集まるので有名な##高校ね。こうして見ても、美少女とイケメンが多いわ。
「はーい! 体調管理、万全にいたしまーす」
ちょっと、ちゃらい系の男子、健一が手を挙げて叫んだ。
「岸谷ったら、はしゃいで、ムカつく」
そう、軽く舌打ちしたのは、隣の席で最初の友達になってくれた佐久間詩織だ。
「健一、あんまりはしゃぐな、女子たちの気持ちも考えろ」
クラス委員の井上翔がたしなめる。翔は頭がよくスポーツマンで性格もやさしいらしい。詩織がこないだ教えてくれた。でも、女の子たちの気持ちって何だろう。
「すごいねえ、ドイツに修学旅行なんて、楽しみ!」
私がそういうと、
「・・・うん、そうね」
詩織はなぜか、ちょっと顔を曇らせた。

2.
駅までの帰り道を、詩織と歩いた。
詩織は、相変わらず、どこか浮かない顔をしている。
「詩織? 何かあった?」
私は聞いてみた。
「うん・・・」
詩織は、そう言うと、突然こう言った。
「彩はさあ、クラスの男子全員に、裸を見られるってどう?」
「え、ええ? どうって言われても、そもそもそんなことありえるわけ、ないでしょ」
私は慌てた。ところが、詩織は真面目な顔をして、
「それが、あるのよ」
と言う。
「来週、ドイツに修学旅行行くでしょ?」
「ええ、ベルリンでしょ」
「今度の日程に現地でサウナに入るってのあるの、覚えてる?」
「うん。ブランデンブルグ門の近くのVabaiでしょ、楽しみ! 向こうのサウナって、広いんでしょ?」
「彩、知ってた? ドイツのサウナって、混浴なんだよ」
「え?」
私は、耳を疑った。
「ってことは・・・」
「そう、私たちは、クラスの男子全員に裸を見られちゃうの」
「えー!!」
「あと、向こうの人たちはアンダーヘアを処理する習慣があるから、そのままにして入るとじろじろ見られちゃうよ」
私は唖然とした。

3.
「でもさ、何でうちの高校、修学旅行ドイツ何だろうな、しかも、混浴のサウナに入るなんて」
翔と健一も歩きながら、来週の修学旅行の話をしている。
「そりゃもちろん、俺たち男子のためだろ」
「なわけ、ないだろ」
「それにしても、ドイツの女の人って大胆だよな。男の人と混浴が平気なんて、はずかしいって気持ちないのかね」
「ドイツにはFKKって言葉があって、日本語だと、裸体主義、英語だとヌーディズムっていうんだけど、要するに裸で生活するみたいな習慣が昔からあるんだよ」
「裸で生活することに、何か、意味あるのかね」
「どうなのかね、行ってみるとわかるかもな」
翔はそう言うと黙り込んだ。

4.
私たちは、ベルリン市内を見学し終えると、バスはホテルへ向かった。
「はい、じゃあ、ホテルに向かいます。ホテルに着いたら30分後に出発です。Vabaiはホテルの近くだから、移動は徒歩ね、グループ行動です。男子、女の子をちゃんとエスコートするのよ」
はーいと男子たちが返事をした。
「あーあ、見られちゃうのか・・・」
「しょーがない、もう、覚悟決めよう」
私は、自分に言い聞かせるようにつぶやいた。

5.

「ここがVabaiかあ、おっきな建物ね」
Vabaiの建物は、ドイツ帝国の威厳を誇示するかのような佇(たたず)まいだ。
「入ってみよう」
4人は中へ入った。

「えー更衣室まで男女一緒・・・」
詩織が小さく悲鳴を上げた。
どうせ、中に入れば男女混浴、だから更衣室も一緒でいいってことか。
「じゃあ、俺たちちょっと先行ってるよ」
と、以外にも翔はさっさと裸になると、中へ入って行った。
「あ、俺も」
と、健一も翔の後を追う。
「二人とも、大人ね」
「岸谷とか、もっとギラギラしてるかなと思ったけど、意外」
詩織も同じことを思ったようだ。
「さ、入ろう、二人あんまり待たせると悪いわ」
「うん」

中へ入ると、二人がいた。
2人は私たちにチラッと振り向くと、すぐに目をそらした。
「ふふ、二人ともかわいい」

中に入ると、おっきな温水プールがあって、両側にリラクゼーションチェアが並んでいる。
そして、老若男女の人たちがすっぽんぽんでくつろいでいる。
おおらかというか、何というか。
すると、
「これ、持ってきたんだ」
と、翔がジップロックに入った機械を私たちに見せた。
「何?」
「翻訳機さ。色んな人に話を聞いてみようと思って」
そう言って、翔は辺りを見渡した。
「あそにに4人のグループがいる」
見ると、高校生ぐらいの男女が楽しそうに話をしている。もちろん、4人とも裸で。
私たちは近づいて行った。
「こんにちは」
翔が、翻訳機で4人に話しかけた。
「こんにちは」
ドイツ語が日本語に変わった。
「私たちは、日本の高校生です。修学旅行できました。皆さんは地元の方ですか?」
「そうです。ベルリン・インターナショナルスクールです」
「何年生?」
「12グレードです」
「高校3年だ、俺たちと一緒だよ」
健一が喜んだ。
「あの、ちょっと質問していい?」
私は女の子の一人に聞いてみた。
「お二人は、同級生の男の子と裸でいるのに抵抗はない?」
「子どもの頃からこうしているので、もう慣れました」
「君たちはどう? 女子の裸を見て、どう?」
「特に何もないですね。日本にも銭湯というのがあると聞いています。銭湯で周りの人たちの裸に反応します? しませんよね、相手が同性でも異性でも一緒です」
「男性次第なんですよ」
と、もう一人の女子が言った。
「男性がそういう目で見てると、女性がはずかしさを感じるものじゃないですか?」
「女性をはずかしがらせるのは、男性の目なのか・・・」
健一がぼんやり言った。

翔が礼を言い、高校生のグループに背を向けた後、少し離れたところに私たちより年上の男女のグループがいた。私たちは近づいてみた。
「何のグループですか?」
「職場の同僚です。仕事の打ち合わせに来ました」
「仕事の打ち合わせですか!」
「裸同士で・・・」
どうにも、私たち日本人にはついて行けない。
「ありがとうございました」
「向こうの4人は、ご家族みたいよ。お父さん、お母さん、お姉ちゃんに弟さん。こんにちは。お姉ちゃんは何年生ですか?」
「8グレードです」
「中2かあ」
「中2の娘とお父さんが、こうして一緒にお風呂に入るなんて、日本では考えられないわね」
「小さいころからこうしてお父さんと接していれば、反抗期とかないのかも」

最後に私たちは老夫婦にお話を聞いた。
「ご結婚して、何年目ですか?」
「もう、50年じゃよ」
「随分、長い時が経ったわ」
「よく来られるんですか」
「ええ、若いころからね、いつも主人と一緒に」
「ここはすばらしいよ。やっぱりね、人と人は裸で付き合うのが一番だね」
そうご主人は言って、わっははと笑った。
少し離れたところに、私たちと同じクラスのグループがいた。
みんな、楽しそうに笑っていた。
もしかしたら、お互い裸なのを悪れているのかもしれない、私はそう思った。

7.
修学旅行から帰って1週間がたった。
私たち4人は、前よりずっと仲良くなった。
と言うより、クラス全員のクラスメイトを見る目が優しくなったような気がする。
これがきっと、あのドイツで入った混浴サウナの効能なんだ。
他人同士の男女でも、裸の付き合いをすると、相手への対応がやさしくなる。
そのことを、ドイツの人たちは知っている。だから、ああいう施設が国中にたくさんあるんだろう。
そして、そういったことを私たちに学ばせるために、この修学旅行を毎年行っているんだと思う。



修学旅行でドイツの混浴サウナに連れて行かれました 終わり


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