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姫様はお見通し
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旅行最終日、まだ海水の冷たい午前中ということもあり、家族連れもおらず今日こそ完全な貸切だ。
「ヒューズは今日も荷物番をして過ごすの?」
知花が財布を忘れたため、別荘へと取りに戻っている間、二人は浜辺に座り込み、照りつける太陽の元、輝く海面をただ眺めていた。
「…特にすべきこともありませんので」
「知花と遊べるわ」
その言葉にヒューズは遠くの海を睨みつけるかのように、眉間に皺を寄せる。
「今日も知花を独り占めしていいのなら、させて貰うけれど…前みたいに、その恨めしそうな目で見るのだけは、止めて欲しいわ。知花に構って貰いたいなら、素直に言いなさいな」
「っ!!わ、私は見ていません!!」
口では否定をしていても、しっかりと図星は突かれている。
ヒューズの本心など見透かしている紫の目に、やがて図体だけは大きい筈の男がしおしおと縮まっていく。
「知花可愛いものね。…目で追ってしまうのもわかるわ…。そうだわ、貴方…知花のうなじ好きでしょう?」
「…それ…絶対に…彼女に言わないでください……」
もうヒューズには抵抗する気力はゼロだ。
実は料理の際に彼女が髪を結う仕草が好きで、つい魅入ってしまっていることまでバレているなんて。
晴れ晴れとした空に似つかわしくない、陰鬱とした男が浜辺で項垂れる。
だが、ソフィアのマシンガントークという名の攻撃は続く。
「まさか、ヒューズのストライクゾーンにドンピシャの女の子がいる場所に、転移するとは思わなかったわ。ルシウスお兄様は、侍女適正のある者以外にもヒューズの好みでも加えたんじゃないかしら」
「…そんな都合のいい転移魔術聞いたことがないです」
「けど、お兄様ならやりかねないわ」
確かに陽気な第二王子だ。そんなくだらない条件を足していてもおかしくはない。
むぐぐと険しい表情をしていた時だった、海水浴場の駐車場へ珍しく一台の黒いミニバンが入って来た。
「あら、貸切も終わりね」とヒューズの視線の動きを辿っていたソフィアが言う。
けれど中から降りてきたのは家族連れではなく、若い男三人組だ。
しかも向こうは向こうで車の横から、海ではなくヒューズ達の様子を窺っているようである。
「…あれー?昨日いた子いないじゃん…」
「あそこにいる兄妹っぽいのと、一緒に居なかったっけ?」
「そうそう。あの外人の女の子一緒だった。ってかあの子も、めっちゃ可愛いじゃん」
「子供じゃん。犯罪だわ」
「っちぇ。遊ぼうと思ったのに…」
本来であれば、彼等とヒューズ達の距離では声など聞こえる訳がない。
だが今のヒューズとソフィアには、日本語を翻訳するための魔術具が耳に取付けてある為、翻訳したい人物に意識を集中すると、聞こえない距離でも聞き取れてしまうのである。
ヒューズとソフィアが駐車場を凝視していると、その視線に気付いた三人は車に乗り込み、早々に立ち去って行った。
「……そりゃ、知花に比べたら発育悪いけど…まだまだこれからよ…!!」
「…気にしてたんですね…」
ヒューズはもう一度彼等が去った駐車場を見る。
彼等の口振りから察するに、目的はきっと知花だったのだろう。
(…ナニをして…遊ぶつもりだったのか…)
そしてそれは彼等にとって楽しいことでも、知花にはそうではなさそうだ。
ヒューズは胃の辺りが、黒いものでいっぱいになっていくのを感じていた。
「ヒューズは今日も荷物番をして過ごすの?」
知花が財布を忘れたため、別荘へと取りに戻っている間、二人は浜辺に座り込み、照りつける太陽の元、輝く海面をただ眺めていた。
「…特にすべきこともありませんので」
「知花と遊べるわ」
その言葉にヒューズは遠くの海を睨みつけるかのように、眉間に皺を寄せる。
「今日も知花を独り占めしていいのなら、させて貰うけれど…前みたいに、その恨めしそうな目で見るのだけは、止めて欲しいわ。知花に構って貰いたいなら、素直に言いなさいな」
「っ!!わ、私は見ていません!!」
口では否定をしていても、しっかりと図星は突かれている。
ヒューズの本心など見透かしている紫の目に、やがて図体だけは大きい筈の男がしおしおと縮まっていく。
「知花可愛いものね。…目で追ってしまうのもわかるわ…。そうだわ、貴方…知花のうなじ好きでしょう?」
「…それ…絶対に…彼女に言わないでください……」
もうヒューズには抵抗する気力はゼロだ。
実は料理の際に彼女が髪を結う仕草が好きで、つい魅入ってしまっていることまでバレているなんて。
晴れ晴れとした空に似つかわしくない、陰鬱とした男が浜辺で項垂れる。
だが、ソフィアのマシンガントークという名の攻撃は続く。
「まさか、ヒューズのストライクゾーンにドンピシャの女の子がいる場所に、転移するとは思わなかったわ。ルシウスお兄様は、侍女適正のある者以外にもヒューズの好みでも加えたんじゃないかしら」
「…そんな都合のいい転移魔術聞いたことがないです」
「けど、お兄様ならやりかねないわ」
確かに陽気な第二王子だ。そんなくだらない条件を足していてもおかしくはない。
むぐぐと険しい表情をしていた時だった、海水浴場の駐車場へ珍しく一台の黒いミニバンが入って来た。
「あら、貸切も終わりね」とヒューズの視線の動きを辿っていたソフィアが言う。
けれど中から降りてきたのは家族連れではなく、若い男三人組だ。
しかも向こうは向こうで車の横から、海ではなくヒューズ達の様子を窺っているようである。
「…あれー?昨日いた子いないじゃん…」
「あそこにいる兄妹っぽいのと、一緒に居なかったっけ?」
「そうそう。あの外人の女の子一緒だった。ってかあの子も、めっちゃ可愛いじゃん」
「子供じゃん。犯罪だわ」
「っちぇ。遊ぼうと思ったのに…」
本来であれば、彼等とヒューズ達の距離では声など聞こえる訳がない。
だが今のヒューズとソフィアには、日本語を翻訳するための魔術具が耳に取付けてある為、翻訳したい人物に意識を集中すると、聞こえない距離でも聞き取れてしまうのである。
ヒューズとソフィアが駐車場を凝視していると、その視線に気付いた三人は車に乗り込み、早々に立ち去って行った。
「……そりゃ、知花に比べたら発育悪いけど…まだまだこれからよ…!!」
「…気にしてたんですね…」
ヒューズはもう一度彼等が去った駐車場を見る。
彼等の口振りから察するに、目的はきっと知花だったのだろう。
(…ナニをして…遊ぶつもりだったのか…)
そしてそれは彼等にとって楽しいことでも、知花にはそうではなさそうだ。
ヒューズは胃の辺りが、黒いものでいっぱいになっていくのを感じていた。
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