【漫画版公開中】転移先は女子大生の部屋でした‐ある日、美少女姫様とイケメン騎士様が転がり込んできたら‐

原案:トウキ汐・作画:猫倉ありす

文字の大きさ
13 / 56

消える記憶と消せない記憶

しおりを挟む
「あ!スマホ忘れた!」

 花火を終えた三人が丁度別荘へ繋がる側道へ差し掛かった時、知花は自分のポケットや鞄の中にスマートフォンがないことに気が付いた。

「何処で落としたか覚えているか?」

 花火中も写真を撮ったりしていたのだから、終わった後の行動を思い出していた時、知花が片付けの際に、水道の所で濡れないように上に置いたことを思い出した。

「じゃあすぐ取りに行きましょ」

 踵を返そうとしたソフィアを知花が止める。

「大丈夫、すぐ戻ってくるから!先に中で待ってて!」

 そのまま二人に手を振ると、知花は浜辺へと走り出した。
 知花が浜辺へ辿り着くと、辺りは薄明かりの街灯だけで、民家の明かりも疎らである。
 街灯を頼りに置き忘れた場所へ向かうと、知花のスマートフォンがそのままの状態で発見された。

「良かった!あった!」

 知花はすぐに別荘に戻るため、スマートフォンのライトを付ける。

 その時だった――…

「あれ?この前の子じゃね?」

 その声に知花が振り返ると、浜辺に降りる階段で若い男達が酒盛りをしていた。

「本当だ!夕方そこ歩いてた子じゃん!戻ってきて良かった~!」

 立ち上がった三人に、嫌な空気を感じた知花は反射的に走り出した。
 が、知花が逃げ出すのを予想していたのか、男達はあっという間に追いつき、腕を掴む。

「や、やめてっ!離してくださいっ!!」
「やば!マジで可愛い…!」
「んー!良い匂いする」

 三人はわざと怯えさせるようにジリジリと近寄り、知花へ顔を近付ける。

「ねぇ、一緒に遊ぼう?楽しいことしようや!」
「嫌ですっ!!」

(絶対、そんな楽しそうなことじゃない!!)

 触れられた腕に、男のべっとりとした汗がついて、その不快さに吐き気に襲われる。

(二人に…ついてきて貰えば良かった……!)

 せめて電話だけでも出来れば助けが呼べるのに、両腕を男二人に掴まれては、命綱のスマートフォンを離さずにいるのが限界だ。
 知花はそのまま引き摺られるように、黒い車の元へ連れて行かれると、バックドアから中へと放り込まれた。
 最後列の座席は畳まれていて、知花が倒れ込むには十分な広さがある。

 知花はありったけの声で叫び続けていたが、元々、民家すら疎らな地域だ。
 車の通りもこの時間は少なく、誰も灯りが付けっぱなしの車など気にも留めない。

(こいつら、慣れてる…!)

「大丈夫、怖くないよ~!」

 一人二人と狭い車内に入ってくるのを、知花は唇を噛みしめながら、睨み続けることしか出来なかった。


 腕が掴まれ、男の汗が肌へべっとりと付く。

『――知花、もう良いだろ?』

 乱暴に服を引きちぎる音がする。

『――先輩と付き合ってるからっていい気になんな。死ね』

 男の生温かい息が首筋へと掛かる。

『――あいつ、他の女の子にこんなことしてるんだぞ?』


 その瞬間、知花がずっと閉じ込めて来た、記憶が脳内へと広がった。
(――――――!!)
「いやぁああぁぁぁああぁぁぁぁあ!!!!!!」

「な、なんだよ大人しくなったと思ったのに!!」
「うるせぇな!殴ってでも黙らせろ!!」

 男の一人が知花の胸倉を掴み、引っ張った次の瞬間、ゴッという鈍い音と共に、その男はアスファルトの上に倒れ込んだ。
 知花はすかさず、その場で出来るだけ身を小さくし耳を塞ぐ。

「何だ!?え、お前…!ぎゃっ!!」

 間髪入れずまた一人が倒れる音がすると、最後に残った男が誰かに必死に謝罪をしていた。

「待って!すみませんでした!!この子返しますんで…!」

 靴音が一歩一歩進む音がすると、低く、激しい怒りの声が知花の耳へと届く。

「…赦すわけがないだろう」

 その声に、知花は勢いよく顔を上げた。

「…ヒューズ…さん…!」

 息を荒くしていたヒューズの足元には、三人目の男が倒れ込んでいた。

「…知花…無事か?」
「っ…!ヒュー…ズさ…!」
「助けに来た…。もう大丈夫だから…」
「う…ぁ…はぃ…ぃ…!」

 安堵から、知花はぽたぽたと大粒の涙を溢した。
 その返事にようやく、ヒューズを目尻を下げ、長い長い息を吐く。

「遅くなってすまなかった。もう少しだけ、待っててくれ…後始末をする…」

 ヒューズはポケットから淡く光る宝石を取り出すと、意識を失っている男達の額へその石を当てていく。

「…大丈夫。これで。目が覚めても、このことを思い出すことはない。…知花…帰ろう」

 優しく微笑んだヒューズに、知花は震えながらも手を伸ばすと、縋るように泣き付く。

「……ありが…とう…ございますっっ!」

 ヒューズはそっと知花を抱き寄せると、彼女が落ち着くまでその背をゆっくりと撫で続けていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

迷子を助けたら生徒会長の婚約者兼女の子のパパになったけど別れたはずの彼女もなぜか近づいてくる

九戸政景
恋愛
新年に初詣に来た父川冬矢は、迷子になっていた頼母木茉莉を助け、従姉妹の田母神真夏と知り合う。その後、真夏と再会した冬矢は真夏の婚約者兼茉莉の父親になってほしいと頼まれる。 ※こちらは、カクヨムやエブリスタでも公開している作品です。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

再婚相手の連れ子は、僕が恋したレンタル彼女。――完璧な義妹は、深夜の自室で「練習」を強いてくる

まさき
恋愛
「初めまして、お兄さん。これからよろしくお願いしますね」 父の再婚によって現れた義理の妹・水瀬 凛(みなせ りん)。 清楚なワンピースを纏い、非の打ち所がない笑顔で挨拶をする彼女を見て、僕は息が止まるかと思った。 なぜなら彼女は、僕が貯金を叩いて一度だけレンタルし、その圧倒的なプロ意識と可憐さに――本気で恋をしてしまった人気No.1レンタル彼女だったから。 学校では誰もが憧れる高嶺の花。 家では親も感心するほど「理想の妹」を演じる彼女。 しかし、二人きりになった深夜のキッチンで、彼女は冷たい瞳で僕を射抜く。 「……私の仕事のこと、親に言ったらタダじゃおかないから」 秘密を共有したことで始まった、一つ屋根の下の奇妙な生活。 彼女は「さらなるスキルアップ」を名目に、僕の部屋を訪れるようになる。 「ねえ、もっと本気で抱きしめて。……そんなんじゃ、次のデートの練習にならないでしょ?」 これは、仕事(レンタル)か、演技(家族)か、それとも――。 完璧すぎる義妹に翻弄され、理性が溶けていく10日間の物語。 『著者より』 もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。 https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

処理中です...