引きこもり勇者!

白神灼優鈴

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第零録 暗闇からの片道切符

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太我裏たがり! 太我裏! 起きなさい、手紙が届いてるわよ」
「うるさいなぁ、母さん。 僕は今、どうすれば地上に降り立たず、ベッドの上で快適なウキウキひきこもりライフを送ることが出来るのかを、真剣に考えてるところなんだ、静かにしてくれ」
「そんなことはどちらでもいいから、でて来て頂戴!」
母さんの声が少しだけ荒くなり、何か焦っているように聞こえる。
だが、そんなことは御構い無しだ。
故に、母さんの言うことは無視して、自分の意見だけを言ってやろう。
「というか、母さんから僕に声を掛けるのは何ヶ月ぶりだい? そんなに放っておいて、生きていると思っていたのかい? 生きていて良かったね、嬉しいかい? 息子の声が聞けて」
「あっ、えっと……」
母さんの声が詰まる。 多少なりとも罪悪感を感じているのだろうか? もしくは、生きていて嬉しいのか……答えは解らないが、黙ってくれたのなら好都合。これで口を動かすことがなくなるので、体力の消費を抑えることができる。

カサッ……

沈黙を取り戻した部屋に、黒光りする我が宿敵……Gを彷彿とさせる乾いた音が響き渡った。
ベッドの枕元にある<G、天国へGO!>と書いてある缶を静かに左手に装備する。
息を潜め、奴の動向に耳を傾け、神経を研ぎ澄ませる……。
「太我裏、ドアの隙間から、部屋の中に手紙を滑らせておいたから。 読んで頂戴ね」
「なに?! じゃあ、今のカサッって音は、手紙の音だっただと!」
くそ、やられた。 まさか、手紙をドアの隙間から入れると言う技術を我が母が身につけていようとは……不覚。
だが、これであの音の正体が黒光りする我が宿敵Gでは無いことが発覚した。 ここだけは母さんに感謝しよう。 でも、あの音を出した本人も母さんなので、プラマイゼロにはならないのです。 これが世の理なのです。
と、言うことで釣竿を使い、手紙を取り、送り主を確認。
「おいおい、嘘だろ……」
スフィア・ミタリア……手紙の裏にはそう書いてある。 スフィア・ミタリアとは、この国で最も知名度が高く、最も権力を持ち、最も影響力を持つ存在。 いわゆる、女王陛下で、それと同時に僕の初恋の相手である。
そんな彼女が僕に何の御用だろうか? わからない。 と言うよりも、もうすぐ3年と11ヶ月になるひきこもり生活をしているので、思い当たる節が無いのだ。 
でもまぁ、そんなことはどうだっていい。 取り敢えず座り直して、手紙の封を解き、内容を確認する。

≪この度、貴殿に手紙を送ったのは他でもありません。 是非とも我が王宮に、招待させてください。 国民の皆が貴殿の可能性にかけようとしています。 詳しくは2週後に王宮でお話しいたします。 お待ちしております。
追記、封入されている指輪がパスになりますので必ず身につけて王宮までお越しくださいませ。≫

とまぁ、こんな感じに書いてあった。
こんなことを言われて、そう簡単にいく奴がいるだろうか……もちろん僕の答えは
「イエスだ。 2週後に王宮、行ってやろうじゃないか。 この家ともおさらば出来るかもしれないしな」
そうは言ったものの、いろいろと体を鍛え直さなければならない。 なぜなら、僕は芯からのひきこもり故に、体力がない。 こんな状態じゃ、王宮に行くまでにくたばってしまう。 それではあまりにも格好がつかないので、こうして僕は体力をつけることを決意した。

……2週後
準備は万端。
指輪を右の中指につけ、玄関から足を一歩踏み出す。
太陽が放つとめどない光が、熱が体を蝕んでゆく。
僕は、家の敷居を出る一歩目で、人生最大級の挫折を味わった。

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