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第壱録 王宮が遠すぎる件
しおりを挟む家の敷居を跨ぎ、地上に降り立ち歩き出してから約1時間が経とうとしている。が、目的地はまだまだ見えず、ただひたすら歩いていた。
「遠い、遠すぎる……」
僕はまだ、王宮はおろか王都にすら着いていなかった。
まず、僕の暮らしている村は王国の端に位置し、王都まで直線距離で約20キロメートルある。 この時点で、ほぼ無理ゲー認定を避けられない。
そして、先ほど言ったように、僕は歩いている。
直線距離でこそ約20キロメートルしかないが、実際に通る実距離はその倍くらいある。
僕の暮らしている村から王都までは、馬車の力を持ってしても3時間から4時間はかかると聞いている。 歩いて行ってどのくらいを費やすのかは、前人未踏の地なのでわからない。
そんな、馬車で3時間から4時間かかる道のりを、ただひたすらに歩いているひきこもりの姿がそこにはあった。 僕だった。
いま気づいたが、もしかして、僕はこの途方もない距離を歩いた第一の人間になるのではないのか? これは偉業ではないか? いや、むしろ異様かもしれない……。 嬉しくない。
そんなことを考えながら道を歩いていると、道の右脇に看板が立っていた。
少し古びた気の看板は、辺りになにもない草原で、ただ一つだけぽつんと、「俺を見ろ! 見逃すんじゃぁないぜ!」と言わんばかりに主張していた。
僕は思わずそれを見逃そうとしたが、あまりに主張が激しく、見てやらなければ可哀想だ。 と思い、立ち止まった。
看板の内容はこうだ。
≪王都まであと馬車で3時間だよ! 歩きの方は、あと5時間だね! 王都まであと少しなので、ホップ、ステップ、ジャンプで、来ちゃいましょう! 皆様が王都に来られるのを心よりお待ちしております。
スフィア・ミタリア≫
ふざけてんのか? この女王陛下さんは。
それはそうと、あと5時間とはな……王都に着くのは昼頃になりそうだ。
到着が昼頃になるのは流石に避けたいので、他に手段がないのかと少しの間考える。
その結果、僕は看板を調べることにした。
看板に何か仕掛けがあり、その仕掛けを作動させることにより王都までひとっ飛び! という仕掛けがないかと入念に調べた結果、看板の裏面に申し訳程度の小ささで、文字の書かれている紙を見つけた。
≪補足説明☆ 太我裏さんは先日、手紙と同封した指輪をお持ちのことと思います。 その指輪を王都の方角へ向け(南南東)、こう念じてください。 「王都へ」と。 そうすることにより、この看板から王都までを約10秒で駆けることが可能です。 では、王宮でお待ちしております。 追記 実はこの移動は村からもできました。ここまで歩かせてごめんね(てへぺろ)≫
「なんてこった。 僕はこの1時間の移動に、一瞬で意味を見出せなくなってしまった……」
と、僕はつぶやいてしまった。
怒りでも、呆れとも違うなんとも言えない感情がこみ上げてくる。
だが、まだよかった。 まだ、この時点でこの方法に気付けてよかったと思う。
実際、1時間程度歩かされたのは事実だが、これが王都の目の前でこの方法を知ったとしたらどうだろうか? 想像してみて欲しい。
そんなことになったら、僕はきっと看板までの道のりを歩いた僕自身に対し、自問自答を繰り返し、やがて頭を抱えながら悶え苦しみ、馬車を使いそのまま家に帰ることだろう。
こんなことになったら目も当てられない。
でも、こんな重要な情報は、こんな看板の裏に小さく貼っておくのではなしに、それこそ手紙に書いておくべきだと思う。
今回は許すが、今回限りだ。
そう思いながら僕は看板の指示通り、指輪を王都の方角へ向け、念じた。
ー王都へ
すると、体は淡い青色の光に包まれ空高く舞い上がった。
気がつくと、王都の入口に立っていた。
指輪すげぇ……。
遠すぎるとかほざいていた頃の僕に一言いってやりたい。 もうすぐだぞって。
こうして、僕は難なく王都へたどり着いてしまった。
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