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第拾肆録 村の悩み
しおりを挟む僕とスキンさんは浴場を後にし、併設されている施設であるマッサージ機に身を委ねながら今後について話していた。
「まさかあんなすげぇ嬢ちゃんが2人もいるとなると、男2人の俺らの立ち振る舞いを考えなきゃならんわな……一歩間違えたら逝っちまうぞ……」
「ですね……でもあの2人があんな化け物だと言う事は、ミラさんとサナさんも相当な実力者ってことですよね……」
「あ?にぃちゃんは知らねぇのか?あの姉妹の強さ」
スキンさんが少し不思議そうに聞いてくる。
「いや、知ってるも何も、つい先日会ったばかりですし……」
「そりゃそうだな!じゃ軽く説明しとくとするか……」
そういうとスキンさんは真面目な顔で話し出す。
「姫龍ミラ、姫龍サナの姉妹も負けず劣らずの化物だ、と言っても魔族だとかそういうのじゃなくて強さが、な……。 執事であり、女王陛下のボディーガードでもある姉の姫龍ミラは全ての得物が使える上に、拳で戦っても勝てる奴はいないと言われるほどの武術の達人。対して妹のサナは、史上最年少の王国騎士団長。拳での戦闘はさほど強くないが、得物を使わせたらおそらく、姉のミラを上回る強さだ。あいつ、職業はナイトだと言っていたが、そんなことはねぇ。あいつは騎士団長の立場だからかナイトだと言い張っているが、“ウェポンマスター“が正式な職だ、ちなみにウェポンマスターは歴代2人目とかいう伝説じみた職だがな!」
スキンさんの表情がいつものものに戻る。
この人は僧侶で料理人のはず……なのになぜこんなにも情報を持っているんだろうか?
「スキンさんって、結構情報を持っているように感じるのですけど、なんでそんなに情報を持っているんですか? 魔物(食料)に関してはわかるのですが、他の部分がどうしても理解できなくて……」
するとスキンさんは何事もなくあっさりと
「俺がもともと敵国の諜報部員だったからだな。その名残で色々と情報を仕入れたり、入ってきたりするんだ。まぁ、そんなの15年前の話だがな!魔物が活発化して自国がポシャって、先代の国王に拾われたのが始まりだ!まあ、あんま気にするな!ガハハハハ!」
なんとも笑えない話が出てきたが、この人なら信用してもいいのかな?いや、でもな……
僕の中で不安や猜疑心、信じたい心がぐるぐるする。
「まあ15年もこの国のことを考えて王宮勤してりゃ、反国精神も沸かんわな」
スキンさんは屈託のない笑顔でガハハと笑う。
まぁ確かに反国したければとっくにしているだろうし、多分この人ならやれる。
そんな大事なことを僕に言ってくれたあたり、信じても良いのだろう。
一層僕はスキンさんのことを信頼することになった。
ーーーーーー
「にぃちゃん! 飲んでるか!?」
「スキンさん、僕はまだ飲めない年齢ですよ……」
村の中心に設けられた広場で僕、ニーチェさん、スキンさん、サナさん、ミラさん、凛花の6人はモブ村の村民から料理や酒を振舞われており、それに参加していた。
「まさか、勇者様がファングウルフの群れを手懐けられるとは、恐れ入りました! これで1つ、村の悩みが解決されました、本当にありがとうございます!」
村長が深々と頭を下げ、感謝の意を伝えてくる。
「いやいや!そんな大層なことはなにもしてませんよ、ただ運が良かったというか……」
実際そうなのだ。
僕はなにもしていないし、なにもできていない。
「なんだよにぃちゃん!お前さんの初仕事、初成果じゃねぇか、もっと胸はれよ!」
スキンさんが背中を強く叩いてくる。
「まあ、その……村の悩みを解決できていたのなら良かったです……」
「なにキモい顔で突っ立ってんのよバカ兄貴、邪魔なんだけど」
「キモい顔なんてしてないだろ……」
後ろから、凛花になぜか罵倒される。
「ともかく、そこ、どいてくれる? 通りたいんだけど」
振り返ると凛花がキッと睨んでくる。 ここで僕の人生は終わってしまうのではないだろうかというほどの眼光だ……間違いなく、実の兄に向けるものでは無いはずだ……。
本当に可愛げのない妹だ。黙っていれば、あのサナさん、ミラさん姉妹に負けないくらい可愛いのに……。
凛花に言われた道を空けると、ありがとうも言わずにスタスタと歩いて行ってしまった。
それはそれとして、1つ先ほどの村長の発言に疑問を覚えた。
「村長……」
村長に向き直りながら、呼びかけると、僕の声を妨げるように凛花が村長に話しかけた。
「村長、まずはこのように盛大に我々を歓迎してくださりありがとうございました、どの料理もすごく美味しかったです。 1つお聞きしたいことがあります。 先ほど村の悩みの1つが解決って言いましたが、他にはなにがあるんですか? お力になれることが有りましたら言って頂ければ、あたし達が解決のお手伝いをと思いまして……」
村長の表情が急に曇り出す。
「あ、ああ……この場で村の者の目もあるので、後ほど勇者様方には申し訳ないのですが、私の家まで来ていただけますか? 詳細についてはそこでお話しいたしますので……」
「わかりました。 では後ほど、みんなで向かいます」
そういうと村長は静かに村の奥へと消えていった。
「凛花、お前……」
「さっきの話も、本来ならあたしじゃなくてあんたが、“勇者様“することだと思うのだけど?」
凛花が僕の顔を睨みながら言う。
「いや、その意見はごもっともだし、反論する気はないのだけれど、僕の言葉を遮ってまで言ったのはお前の方じゃないか……いてっ!」
凛花に踵でつま先を踏まれる。
「は? 言おうとしてたからってなんなの? そもそも、さっきの会話の序盤であんたが村長に聞けばよかったんでしょ? 遅いの。 気になったらその場で聞いて、確認して。 後回しにして良いことなんて1個もないし、後回しにしてて先を越されてからじゃ、“やろうと思ってた“は“やるつもりがなかった“と同意なんだから」
言い終わると凛花は「疲れたから、お風呂入ってくる。 村長の家に行く時呼んで」とだけ良い、宿に戻って行った。
僕もスキンさん、ニーチェさん、サナさん、ミラさんに先に戻ること、今晩村長の家へ行くことを伝え、その場を後にした。
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