引きこもり勇者!

白神灼優鈴

文字の大きさ
14 / 19

第拾参録 魔物と人間2

しおりを挟む


ファングウルフにまたがりながら森を進む。
「にぃちゃん、説明頼むぜ……」
「えーとですね、簡潔に言うと、どうやらファングウルフは思念会話的なことが出来るみたいです……さっきは襲うつもりはなくて、ただご飯が欲しかっただけだったみたいです。 なのでご飯を貰えるなら従うって約束してくれたんです」
スキンさんは自慢の頭をペチンッと叩き笑いながら
「なんだよ!そういうことなら先に行ってくれよな!森で遭難することも想定して飯はいつも持ち歩いんだ、ほれ」
そう言ってスキンさんは腰に巻かれたポーチの中から乾燥した肉を取り出し、ファングウルフの口元に運ぶ。
『何だこの肉!?噛みごたえが……!!』
ファングウルフが驚愕している。
「スキンさん、なんかファングウルフがずっともにゅもにゅしてて、全然飲み込めないみたいなんですけど……」
「ん?あぁ、この乾燥肉は俺のオリジナルなんだよ!フライピッグの肉を調味料に1週間漬け込み、その後3週間かけて乾燥させて出来上がる代物さ!  栄養価、保存期間、味、噛みごたえに優れた最高の逸品だぞ!」
「フライピッグ?!  飛ぶんですか?!」
作り方や、味よりもそちらに興味が行ってしまう。
「いや、飛ばねぇよ?ただのピッグに翼が生えたみたいなもんだ、まぁ入手困難食材ではあるがな……それはそうと、ピッグが飛ぶわきゃねえだろ!  ガハハハハ!」
めっちゃ名前裏切るじゃん、フライピッグ……飛べよ……
そんな話をしているうちに、森の終わりが見えて来た。
「おっ、にぃちゃん。そろそろ着くぜ!……ファングウルフこんなにいたら奇襲と思われねえか……にぃちゃん」
「それは……そうですね」
たしかに、こんなに大所帯で村に入ってしまっては村人を恐怖の渦に陥れかねない……先に僕とスキンさんで村長と村人に説明するのが無難か……?
「ひっ……!!ファ、ファングウルフの大群だっ!!みんなにげっ……?!」
「静かにしな、あんちゃん……こいつらに危険はねぇよ、俺が補償する。いいな?」
スキンさんが大声をあげようとしていた村人を捕まえ説得(物理)を行なっている。
見た目は完全に盗賊や悪役のそれである。
不運な村人の恐怖は完全にファングウルフからスキンさんに対する恐怖へと変わっており、涙目でコクコクと頷く。
なんて凄まじい光景なのだろうか……やはりこの人は僧侶とは真反対に位置する武闘家なのではないか?
「よし」
そういうとスキンさんは村人を解放した。
「スキンさん、一番無難な卓を取りましょう。 まず僕ら3人で村に入りファングウルフのことを説明し、こいつらへの食事等の交渉をしてみましょう」
言うとスキンさんは「それがいい」と言いながら村へと歩き出した。
その後ろを僕と村人がついていく。
『では、我々はここらの茂みで身を隠して待ってます。 何かあったら呼んで下さい』
ファングウルフたちは足速に茂みに隠れて行った。

ーーーーーーーー

「おお、よくぞご無事で! 近場でファングウルフの目撃情報があったので何かあったのではと心配しておりました!」
村にはいると村長が胸を安堵した様子で話しかけてきた。
村長から声をかけてくれ流のであれば、都合がいい。 
なにせ自分から声をかけるのはしんどいからな……
「村長、少しお話があるのですが……」
こうして僕は、スキンさんに補足を入れてもらいながら、ファングウルフたちのことを説明した。
「なんと、ファングウルフの群れを仲間にされたのですか……さすがは勇者様ですな!」
村長は疑いもせずに、僕ら2人の話を信じてくれた。 普通に考えて意味のわからないことだと思うのだけれど……。
村長に承諾を得ることに成功した僕は、先ほどファングウルフを待機させた場所に呼びに戻り、共に村と入った。
一通りのことを終え、宿に戻り、ベッドにダイブする。
「ふぅ~、疲れた……」
修行のことといい、ファングウルフのことといい、やけに疲れる出来事が重なってしまった。
「夕食まではまだ時間があるし、風呂でも入るか……」
疲れた体を癒そうと、宿に併設されている浴場へ向かうことにした。
部屋を出て、浴場に向かう途中に足湯があったり、マッサージのサービスがあったりと、至れり尽くせりなラインナップを見かけ、寄っていこうかと思ったが、足湯には愚妹とニーチェさん、マッサージにはサナさんとミラさんが先に入っており、とても入れる状況ではなかったため断念。 そのまま浴場へと向かった。
脱衣所で服を脱ぎ、浴室へ入る。
浴室は天井がなく、星空がこちらを覗いている。
浴室内はとても広く、走り回っても誰にも迷惑をかけずに済みそうなほどで、真ん中に円形の浴槽がどんと居座っている。ゆの色も若干琥珀色がかっており、とても効能がありそうだ。
隣は女湯なのであろうか、壁があり向こう側から湯気が立っているのが見える。
そんな浴槽のど真ん中には茶色の卵があり、夕日を浴びて煌々と光っていた。
スキンさんだった。
「お、にぃちゃんも風呂か?ここはお湯が熱めで気持ち良いぞ!疲れた体にもってこいだな!」
スキンさんは湯船に入っていてもいつもと遜色ない元気っぷりだ。風呂なんだからもう少し静かに入っているかと思ったが、全然そんなことはなかった。
スキンさんに手招きされ湯船に入ると、先ほど言っていた通りお湯が熱めでとても気持ちが良い湯だ。
「にぃちゃん、空見上げて見みな……すげぇぞ」
スキンさんに言われ空を見ると夕日が沈み、だんだんと夜の帳が下りていっている。
「綺麗ですね、まさかこんなところでこんなに綺麗な景色を見ながら湯船に浸かれるなんて……」
「いや、にぃちゃん。そこじゃねぇ……あっちの山のてっぺん見てみな」
「山?一体何があるって言うんですか……何あれ」
スキンさんが指差す山の頂上で、大きな何かの影が動いているのが見える。
「ありゃドラゴンだな……ここからじゃちゃんとした種族までは分からねえが、ここからでも見える大きさとなりゃ、ウォール・ドラゴンかそこらだな……厄介なことに、俺らはあの山を越えなきゃなんねぇんだよな」
言いながら、スキンさんは表情を曇らせる。
「ウォール・ドラゴンって凶暴だったりするんですか……?」
「いや、人里を襲うことはないし、滅多に人に関わることもないが縄張り意識が強く、奴の縄張りに入るときは細心の注意を払わなきゃなんねぇ……まあ、俺らはあの山を迂回する形で行くしかねぇわな……しかも、物理攻撃じゃビクともしねぇほど硬い殻に覆われてる」
スキンさんの話を聞く限り、戦闘になったら確実に僕は死ぬだろうと覚悟した。
僕、ほとんど魔法使えないし……。
「……サンダーアロー!!」
壁の向こうから声がしたので見ると、壁の向こう側が紫色に光っており、上空の方には紫雷は迸っている。
「良い感じよ、凛花ちゃん!!あなた、才能あるわね……まさか雷系統の魔法も使えるなんて!私の妹にならない?」
「いや、ニーチェさんの教え方が上手なんですよ!私なんてまだまだです……あ、妹の話はお断りしますね」
どうやら女湯の方では凛花が痴女さんに魔法を教えてもらっているようだ。
そもそも風呂場で雷系魔法とか、頭おかしいと思うが、こちらに被害がないのでそこは目を瞑っておこう。さすが僕、大人な対応だ。
「あ!あんなところにちょうど良い的があるじゃない、凛花ちゃん、あの山の頂上にいるドラゴン見える?」
「はい、あのウォール・ドラゴンですよね?」
2人が不気味な発言をし出しているので、壁に耳を当てこっそり話を聞く。
「なぁ、にぃちゃん……あいつらもしかして」
スキンさんも気になったのか、同じく聞き耳を立てている。
「あのドラゴンは物理攻撃は効かないけど、魔法による攻撃にはめっぽう弱いのよね……」
「なるほど……先生、出力あげますね?」
凛花の声が消えると、先ほどまでとは比べものにならないほど大きな音でバチバチと空気を稲妻が切り裂くような音が響き出す。
「よし!脳天へむかって~~」

「「発射!!!!」」

紫雷がものすごい速度で山の頂上にむかっていき、大きな影が倒れる様が見え、その数秒後に、遠くの方で断末魔が聞こえた。
「よくやったわね凛花ちゃん!!」
「いえ!今回はたまたまですよ!」
そんな呑気な会話が聞こえた後に扉の閉まる音がした。
「あいつら……まじかよ……」
スキンさんの表情から珍しく笑顔が消えている。
この時、スキンさんから笑顔を消し去る程の威力を生み出すあの2人は絶対に敵に回したくないと僕とスキンさんは心に決め、浴場を後にした。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

盾の間違った使い方

KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。 まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。 マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。 しかし、当たった次の瞬間。 気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。 周囲は白骨死体だらけ。 慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。 仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。 ここは―― 多分、ボス部屋。 しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。 与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる 【異世界ショッピング】。 一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。 魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、 水一滴すら買えない。 ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。 そんな中、盾だけが違った。 傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。 両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。 盾で殴り 盾で守り 腹が減れば・・・盾で焼く。 フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。 ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。 ――そんなある日。 聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。 盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。 ​【AIの使用について】 本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。 主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。 ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。

処理中です...