17 / 19
第拾陸録 初依頼
しおりを挟む「暗いなぁ……まだ朝なのに」
村長に情報をもらい、僕たちは件の森に来ていた。
森の入り口を過ぎ、しばらく歩く。
森の中は、まだ朝だというのに日の光が全くと言って良いほど入ってこず、道端に生えている怪しく発光しているキノコや苔の灯りしか無く、道、周囲を青白く、不気味に照らしている。
「まさかファングウルフに跨って旅することになるとはな……なかなか予想できなかったな」
スキンさんが少し嬉しそうにファングウルフの頭を撫でている。
スキンさんほどの体躯を支えられるファングウルフが味方でいてくれたことに感謝する他ない。
流石にこれから先、徒歩は遠慮したい……。
「暗いのは魔法を使えばどうにかすることは出来るけど……どうする? 坊や」
ニーチェさんが気を利かせて灯りの確保を推奨してくれる。
「いや、でも……」
「そ、そうだぞ貴様! 何をそんなに渋る必要があるのだ!? 灯りは人類の叡智の証だ! 今すぐ明るくして、視野の確保を……! 何かでてからでは、お、お、遅いのだぞ!」
「ほら、サナちゃんもこう言ってるし……」
サナさんはファングウルフにしがみ付き、涙を浮かべている。
王国最強の剣士もとい、ウェポンマスターが、まさか霊的存在が苦手だとは到底予想できなかったが、確かに暗さが異常ではある。だが、迂闊に光源を増やしてもこちらが見つかるのに拍車をかけるだけな気もする。
「申し訳ないですけど、どこからくるかわからない状況下で、光源を増やすのはちょっと気が進まなくて……」
「貴様!! 絶対に殺す! 生きて森から出れると思うなよっ!……ひゃっ!」
「そんな格好で言われましても……」
村長の話では、森は大きさこそ大きなものだが、道はそこまで難しくなく、分岐路には看板が設置されているとのことだ。
下手に迷うことはないだろう。それにこっちにはファングウルフの嗅覚という素晴らしく頼れる力がある。
『ちょっといいか?』
「何か見つけたか?」
『いや、少し先に魔物の匂いが残ってる……もう立ち去っていると思うがどうする?旦那』
ファングウルフが何か痕跡を見つけたらしい。
「行ってみよう。ただし慎重にな?」
ファングウルフがコクリと頷く。
『慎重に進むぞ。身の危険を感じたら、即撤退だ。 いいか皆の衆」
『了解です! 頭!』
ファングウルフが足並みを揃え、同一時方向に向かっていく。
「思念会話……気持ち悪くて吐きそう……クズのくせによくこんな横暴なものに耐えられるわね。 便利は便利だけど、慣れるまで時間かかりそう……」
凛花が苦虫を噛んだような表情で文句を言っている。
「そんなに文句言うなら、わざわざ聞かなきゃいいのに……」
なんでも、この思念会話は魔族特有のモノらしく、人間に使用すると魔力酔いが起き、吐き気等をも要すらしい……僕は何もなかったが……。
現状、凛花は魔力波長を合わせてファングウルフの思念会話を聞いている(盗み聞きしてる)らしいが、これは相当な技量がいるらしい。現にこれを行えたのは凛花だけだったし……うちの妹まさかとんでもなく天才なのでは?
ファングウルフが森の中を進んでいくと、少しひらけた場所に出た。
周りの安全を確認し、一旦立ち止まる。
『う~ん……ついさっきってわけじゃなさそうだな……』
ファングウルフが辺りを見渡し少し考えている。
「そういえば、お前達ってここの森のこと知ってたりしないのか? ほら、お前達の家?って言うか根城、割と近くなかったっけ? ここ」
『申し訳ないが、この森のことはよくわからない……ここらの果実は毒が入ってて食えた物じゃない。 だからこっちの森までわざわざこないんだよ』
「なるほどな……。 ちなみに、どっちに向かったかとかはわかるのか? その、痕跡の主が」
『匂いの方向からして、この先の川……湖か? どちらにせよ、水辺の方角に向かっているな……ここからそう遠くはない』
ファングウルフの嗅覚を頼りにいくと、今度は湖に出た。
木々に囲まれ青白く照らされる湖は幻想的に見える。
「待って。 あそこ、何かいる……」
湖を見つけると、途端に僕以外の全員が臨戦体制に入った。
「え、どこ?」
正直、僕には何も見えない。
「にぃちゃん、湖の奥の方に何か影、見えるだろ? 恐らくあれが、情報にあった“人型“の影だ」
スキンさんに言われ、目を凝らすと、確かに人型らしき影が薄らと見える。
「ニーチェさん、ミラさん、サナさん、スキンさん……あたしが重力魔法で身動き出来ないようにするので、その隙にお願いします」
「わかったわ、凛花ちゃん」
緊張が走る。
「じゃあ行きます!!」
凛花の右手についている指輪が一瞬光ると、影の上に魔法陣が出現する。
影が上を見たような気がしたが凛花が続けて、
「潰れろ!!」
凛花の言葉と同時に魔法陣の直下が押しつぶされたように抉れ、他のメンバーが一斉に飛び出していく。
「あ……人間じゃん!!!!」
人型の影の目の部分が蒼く光り、こちらを見る。
「先手必勝! この一撃で!! 確実に殺す!!」
サナさんが2メートル近くあるバトルアックスを影に向かって振り下ろす。
「遅いよ~。まあそんなんじゃそもそも傷ひとつつけれないけどね!……ってか、面白い人間いるじゃん!」
サナさんの攻撃が空を切る。
「あはっ♡」
「えっ」
目の前に少女の顔がいきなり現れる。
蒼瞳に、白髪……口元には牙がチラリと見えている。
「にぃちゃん逃げ……!」
「つかまえたっ♡」
「くそっ!」
「……!」
スキンさんとミラさんが両サイドから攻撃を仕掛けるが、少女はなんら気にする素振りもなく背中についている翼で、2人の攻撃を受け止める。
「ぶっ潰す!」
凛花が空中から攻撃を仕掛けるが、攻撃は躱され、少女は僕共々宙に浮く。
先ほどまでいた場所には、砂埃が立ち込め、凛花がこちらを睨みながら詠唱をしているのが見て取れる。
少女の怪しげな笑顔の後ろに映る空には太陽がなく、赤く染まった月が浮かんでいた。
森に入ってからそんなに時間はたってないはずなのに、なんで急に夜になってんだ?!
「この人間もらって行くからね! 悪く思わないでほしいな!」
凛花は右手に紫雷を纏わせながら、こちらに急激に迫ってくる。
「その攻撃は流石に避けなきゃまずそうだね」
少女はひらりと凛花の攻撃を交わし、凛花の服を掴み地上に投げ飛ばす。
砂埃が再度立ち上り今度は凛花が空気の床を作り、めげずに上がってくる。
妹が、服が破れて、血だらけになっても助けようとしてくれてるのに、何も出来ないなんて……
「うちの兄貴を連れてくなあぁあぁぁ!」
凛花が手を伸ばしてくる。
必死に叫ぶその声に応えようと僕もその手を掴むため、手を伸ばす。
「ふ~ん……君、面白い魔法の使い方するね。 でもそれじゃだめ、ぼくには届かないよ」
凛花が足場に使っていた空気の床が消失し、そのまま地上に引っ張られていく。
「凛花!」
手を伸ばしながら落ちていく凛花の目には涙が浮かんでいた。
「じゃあね~」
そう言うと少女は僕をかかえたまま、ものすごいスピードで移動を始める。
「僕をどこへ連れていく気だ!」
「あ、バタバタされて落としちゃうと嫌だから大人しく眠っててくれる?」
少女の目が蒼から紅に変わる。
「おやすみ~」
その言葉を最後に、僕の意識は途絶えた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
盾の間違った使い方
KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。
まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。
マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。
しかし、当たった次の瞬間。
気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。
周囲は白骨死体だらけ。
慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。
仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。
ここは――
多分、ボス部屋。
しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。
与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる
【異世界ショッピング】。
一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。
魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、
水一滴すら買えない。
ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。
そんな中、盾だけが違った。
傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。
両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。
盾で殴り
盾で守り
腹が減れば・・・盾で焼く。
フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。
ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。
――そんなある日。
聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。
盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。
【AIの使用について】
本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。
主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。
ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる