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第拾漆録 初依頼2
しおりを挟む「……んっ……ここは……」
目が覚めると、薄暗い洞窟の中でベットの上に仰向けで寝かされていた。
ベットの枕元にはランタンが掛かっていて、その横には小さな机と椅子が一脚、机の上には水の入ったコップが置かれている。
「なんでこんなところにいるんだ……?」
まだちゃんと覚醒していない頭をフル回転させる。
まず、状況の整理から。
僕たちはモブ村の村長からの魔物討伐及び、村民の救助を目的に、北の森に入った。
その後ファングウルフの嗅覚を頼りに湖に着き、そこで……!
状況を整理し、多少冷静になった頭が嫌な予感でいっぱいになる。
ーー殺される……
魔物に連れ攫われ、僕はこの洞窟に来たのだろう。 現状、見回す限り先ほどの少女の容姿をした魔物は見当たらないが、ここがやつの住処であるのなら僕は何かしらされるのであろう。 もしくは、もうすでにされているのであろう。
それに……。
「みんなが心配だ、特に凛花は大丈夫だろうか……」
記憶の端に、脳裏に、血だらけになった凛花が過ぎる。
あのままもしかしたら皆殺しにっているかもしれないし、みんなはうまく逃げられたかもしれない……が、いくら考えても把握する手段が無い以上、僕には願うこと、祈ることしか出来ない。
「とにかく、ここから早く出なきゃ……」
幸い、元々僕が持っていた装備(剣や防具)は綺麗に片寄されているので、そのまま持っていけそうだ。
「おっまたせ~」
僕が荷物に手を伸ばしたところで、暗がりから例の魔物が何かを持って現れた。
「ん? もしかして、逃げようとしてるのかな?」
魔物はどこか呆れたような口調でため息混じりに言う。
「無理無理。 ここから逃げようとするなんて無理だよ……何て言ったって、ここの出入口は一箇所しかないし、ぼくの魔術で誰も、虫1匹すら通れないようにしてあるからね~」
魔物は手に持っていた何かを机の上に置き、横にあった椅子に腰掛けた。
「まあ落ち着きなよ。 誰も死んでないし、誰も殺すつもりはない。 ぼくってば、最高に心の広い部類だからね! 多少歯向かってきても殺しも、傷つけもしないさ……人間は脆い生き物だからね」
魔物はペラペラと話し始めた。
「あぁ、そういえば、体調に変化はない?」
「やっぱり僕の体に何かしたんだな!」
「いやいや! 君の体に変なことはもちろんしてないよ! さっき無理やり昏睡状態にしちゃったからもしかしたら何か変化があったら申し訳ないなって思っただけで……まぁ、自分で見た方が早いか」
そういうと魔物の瞳が、蒼から紅へと変化する。
まずい! 目を背けないと!
急いで魔物の目から視線を外し、下を向く。
「あ……う~ん……魔力の流れとか強さは問題ないけど、多少変化しちゃってるかな……これ、治るのかな? ってか、変化するっけ? 魔力って……」
魔物の口から怪しい発言がちらほら聞こえるが、気にしている余裕なんてない。
ともかく、まずはこいつが何のために僕を捕まえたのかを聞かなければならない。
「う~ん……」
勇気を出して顔を上げると、魔物は腕を組みながらうんうんと唸っている。
「あ! 魔力のことは置いといて、まずは自己紹介だね! ぼくの名前はレミヤだよ! 種族は魔人族、性別は見ての通り女! よろしくね!」
「あ、こ、こここ、籠理太我裏でで、す……よろしく……」
元気いっぱいな笑顔を向けられ、咄嗟に自己紹介をしてしまった……
「なるほど、太我裏ね……」
レミヤと名乗った魔物が興味深々という顔でこちらを見てくる。
レミヤから目を逸らしながら、質問する。
「その……みんなが無事かどうか、何でわかるんだよ。 お前が殺してないからって、無事ってわけにはならないだろ?」
「え、だって、あの最後にぼくに攻撃してきた子がいたら、他の全員は何があっても死なないでしょ?」
「え?」
レミヤが理解できないような顔で首を傾げている。
「気づいてなかったの? あの子、君も含めてあそこにいた全員の体表にずっと流動性の空気の層……真空作って守ってたよ? 都度範囲を変えながら」
え、まじ? 凛花そんなことやってたの? やばすぎん?
いや、でもそれだと……
「お前もさわれないんじゃねぇのか? そんなのずっと展開されてたら」
「そこは、ぼくとの相性の問題だね~。 ぼくは生まれ持ってる特性で、魔法が効かない……というよりは、魔法をする抜けることが出来るから、全く持って関係ないんだよね」
「通りで……」
さらっととんでもチーター発言をかましているが、それなら納得がいく点がある。
「まぁ、弱点があるとすれば、ぼくのこの背中の翼の強度を超える物理攻撃で一発ってところと、ぼく自身が魔法を使っている間は魔法がすり抜けられないってところかな?」
ペラペラと聞いてないことまで、ましてや弱点まで話してくれた。
余程の自信があるか、ただの馬鹿か……。
「なるほどな、だったらみんなは大丈夫そうだな……」
ここからが本題。
「んで、僕を捕まえて、お前は僕をどうするつもりなんだ?」
質問に対し、レミヤは怪しげに口角を上げ、自身の牙をチラつかせる。
薄暗さと相まって、めっちゃ怖い。 失神しそうなレベルで怖い。
「知りたい……? それはね……」
あたりの空気が凍りつき、一瞬の静寂が場を満たす。
「人間観察……人間についてよく知るための、未来への願い、魔王様の悲願達成の礎だよ♡」
背筋が凍りつく。
脳が、直感が、本能が逃げろと命令しているが体が思うように動かない。
「人間観察? 魔王の悲願達成への礎? 何を言ってるんだ?」
「何って、言葉通りの意味だよ? 人間の生態、思考、心理、行動、脆弱性、肉体強度、精神強度……いっぱい調べて、魔王様に連絡して、より良い世界にするんだ♡」
話がぶっ飛びすぎていて、理解が追いつかない。
こいつらは一体、何をどうしようとしているんだ……。
「あ……」
「あ?」
「悪魔だ……お前らは悪魔だ!」
レミヤが首を傾げる。
「ねぇ、何か勘違いしてない?」
「勘違いなわけがないだろ! お前、自身の口で人間を滅ぼすって言ったも同然だぞ?! それが、勘違いなわけないだろ! ここも、僕以外の人はお前以外気配すらしない、みんな殺したのか? その人間観察やらの一環で……」
「何言ってんの、太我裏? ぼくは人間を殺したことなんてないよ?」
「じゃあ、どこにいるんだよ。 今までお前が連れ去った人間は」
「え? みんな無事……というか、ぼくが連れてきたのは君で3人目なんだけど、まぁ前の2人は、下で楽しくしてるよ?」
レミヤがさも当然のように口にする。
「信じられるかよ……」
「はぁ~……仕方ないなぁ、一緒にきて確かめたらいいんじゃないかな? 案内するから、来て」
そういい、レミヤは立ち上がると僕の手を引き、地下へと続く階段を降り始めた。
ーーーーーーーー
「何だここ……」
目の前に広がっていたのは、みるも無惨な地獄……ではなく、むしろ楽園。 パラダイスの類だった。
太陽の代わりに空間を煌々と照らしている照明。
何不自由なく暮らすことのできるであろう豪邸や、温泉まで完備されており、気温は暑くもなく、寒くもなくの快適温度。
「あ! レミヤの姐さん! 新入りですか?!」
遠くの方から、満面の笑みで、行方不明になったと言われていた村人がかけよってくる。
「え、どういうことだよ……だって魔王は、魔族は人間を滅ぼすのが目的なんじゃ……」
「だーかーらー! 太我裏は勘違いしてるんだって……」
レミヤが振り向き、人差し指をビシッと僕に向け言葉を続ける。
「魔王様の悲願は……」
「人間と魔族での和解、共生。 つまりは、共存だよ!」
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