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間録
しおりを挟むあたしはなんてバカで無力なんだ。
こんな時になって初めて、リミッターをかけたことに後悔するし、なんのためにあたしは魔法を覚えて、なんのために武術を学んだのか……。
魔人であろう彼女の腕に抱えられている人を助けるため、支えるために培ってきたものが、こうもあっさり否定されるとは思わなかった。
魔人が移動を始めたのを見てさらに絶望する。
残っている魔力からして、落下速度軽減、衝撃緩和をすることくらいしかできない。追撃、追いかけたところでまた敗北するのは目に見えている。
「お兄、今度は必ず助けるから……」
口からこぼれたこの声が相手に届かないのが救いだ。
「とりあえず、色々と準備しなきゃ……地面に当たってペシャンコになっちゃう」
残った魔力を振り絞り、着地に備える。
ーーバキッ
「うっ……」
背中から着地したせいで、肋骨が折れたみたい……でももう魔力残ってないからな……どうしよう……。
あたしの意識は痛みを感じながら遠のいていった。
ーーーー
「凛花、大丈夫か?」
夕暮れの森の中、あたしと魔人の間に立ち、ブルブルと震えながらそれでも心配してくれる人物。 それがあたしの兄、太我裏だった。
「おいお前、そんなチンケな武器でこの俺が倒せるとでも?」
魔人は苛立ちを隠そうともせず、お兄に詰め寄っていく。
「凛花は僕の大事な妹だ! お前なんかに手出しはさせないぞ!」
「ほぅ、威勢だけは一丁前だな小僧。 だが、その女は俺の根城に無断で入ってきたんだぞ? それ相応の対価を頂かないと気が済まないんだよ。 だから小僧、お前はじゃまなのだ、ここで殺してやろう」
魔人が何度も何度もお兄を切りつける。
「や、やめて……! お兄!何でそんなにあたしを庇うの! 何で何度も立ち上がるの?死んじゃうからやめて!」
血だらけになっても何度も立ち上がる兄の姿が見ていられなかった。
「僕は、お前のお兄ちゃんだから……死んでも……お前を守らなきゃ行けないんだ……」
ーーーー
「凛花ちゃん! 起きて、凛花ちゃん!」
声に釣られて目を開ける。
「よかった……生きてた……」
「嬢ちゃん、意識はしっかりしてるか? 痛むところは? 魔力はどうだ?」
「君1人に戦わせてしまって申し訳なかった。 騎士団長が、なんて様だ!」
「スキンさん……意識は大丈夫です。 怪我というか、多分、肋骨が2、3本折れてます、魔力はほぼ無いです」
目を覚まして、スキンさんの質問に答える。
「凛花様、何か欲しいもの、して欲しいことはありませんか? 私しにできることがあれば」
「それじゃあミラさんひとつお願いが。 あたしの腰袋の中に入ってる翠色の指輪を取ってくれませんか?」
「承知いたしました。 失礼致しますね」
ミラさんがあたしを仰向けから横向きに変え、指輪をとってくれる。
「ありがとうございます……」
ミラさんから指輪を受け取り、指に嵌める。
「ふぅ……だいぶマシになった……」
指輪から魔力を供給して、回復魔法、魔力リミッター解除を行う。
「うわ……凛花ちゃん、あなたこれが本来の魔力量なの……? それとも増幅させて……」
ニーチェさんはさすがだ。 流石にこんなに早く気づかれると頭が下がる。
「ちょっと待て嬢ちゃん。 今、回復魔法使ったか?」
ニーチェさんに加えてスキンさんも唖然としている。
「色々と言いたいことはあると思いますが、まず謝らせてください。 みなさん、すいませんでした。 お兄が攫われたのは全てあたしの過信、怠慢が起こした結果です。 見てお通り、あたしの魔力量は現在が通常量です。 さっきまでは、リミッターをかけて、10分の1まで押さえてました」
「いや、凛花ちゃんの判断は正しいわ……こんな魔力量が身近にいたら魔力酔いしちゃうし、何より早々に探知される」
「それでも、隠してて、負けたら世話無いです……ごめんなさい」
「いえ、お気になさらず……それよりも、太我裏様の救出を急がれた方が良いのでは無いでしょうか?」
ミラさんに言われ、みんなで状況整理を行う。
「今のところ、お兄の魔力はまだ感知できるし、方角もわかります。 なのであたしについてきてください。 絶対に助け出して見せます!」
同意が得られたところで、あたし達は魔人の向かった方角に足を進めた。
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