七色の魔弾使い

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アッシュの独白と罪

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アッシュは湖を見つめながら躊躇うように言った。

「…………マリン、すまなかった。混乱しただろう?全部話すよ」

眼を伏せて苦しそうな顔をしながらマリンを見た。

「いったいカラー侯爵家はどうなっているのよ!」

マリンは叫んだ!

「全て話すよ。カラー侯爵家がこうなったのは全部、僕せいなんだ………」

「えっ?」

「少し長くなるけど聞いて欲しい」

アッシュの真剣な顔にマリンは頷いた。
そしてアッシュは語り出した。

「あれは僕が転移してから5才の時だった。僕の家はカラー侯爵家の派閥に与している家で、同い年であるシオンの遊び相手に連れてこられた。その時ルビーとも会ったんだ。僕はこの世界に転生して舞い上がっていたんだ。試行錯誤しながら魔法の訓練もしていたしね。マリンもだろ?」

「そうね。嬉しくて魔法の訓練を隠れてやっていたわ」

マリンは同じ転生者としてアッシュの気持ちが理解できた。

「それからシオンと一緒にいる機会が多くなり、剣術の訓練も一緒にやるようになった。でも僕には全属性と高い身体能力がチートとして貰っていたから、すぐに実力に差がでてきたんだ」

そう、それは当然だった。

「だけど、数年が過ぎて8才の時だった。10回に9回は勝っていた僕が、段々と勝てなくなってきたんだ。信じられなかった。基礎能力が違うのに、シオンは戦いの感と言えばいいのか、僕の剣筋を見切って攻撃を避け、反撃してきた。でも、どうして急に強くなったのかわからなかったよ」

そう、チート能力のある僕が負けるはずがないんだ。

本当に昔の僕は自惚れていたんだ。

チート能力のない凡人がどうやって強くなっていくのか、前世での記憶がある分、その覚悟を甘くみていたんだ。

「それからシオンとの力は拮抗した。勝率も五分…………いや、僕が負け越す事も多くなり、ある時シオンの訓練が気になって夜にここに忍び込んだ」

「よく忍び込めましたね。広いと言っても警備は厳重ですのに………」

「逆に子供だったから体格が小さく、小さな穴から入り込めたんだよ」

アッシュは苦笑いしながら続けた。

「シオンの実力が上がったのは昼間に、僕と一緒に訓練している以外に、王国最強と言われる父親に秘密の特訓を受けていると、チラッと話してくれたからやってきた。そこで見たんだよ……………」

!?

「見たって…………まさか!?」

アッシュは黙って頷いた。

「まだ10才にも満たない子供の時から、あの地獄の訓練を受けていたんだ。さすがに毎日ではなかったけど」

「そんな!どうしてシオンはあんな訓練を黙って受けているのよ!」

アッシュは首を振った。

「それは違うぞマリン。あの訓練はシオンから、父親にお願いしてやっているんだ」

「はぁ!?」

無理矢理じゃなくても自分からですって!?
マリンから、なにいってんの?みたいな声が漏れた。


「全ては僕のせいなんだよ……………カラー侯爵家がこんな歪な形になったのは」

アッシュは握った拳から血が流れた。

「シオンは僕に勝つために、あの地獄の訓練を父親に願ったんだ。僕に追い付きたいからと──」

泉に映った顔をぼんやりと見ながら続けた。

「あの運命の夜…………こっそりとシオンの訓練を見に行った時聞いてしまったんだ。シオンが血だらけで、剣を杖代わりに立っている状態で、カラー侯爵も、もう止めようと言っているのに、シオンが──」


『シオンよ。もう止めよう。このままでは死んでしまうぞ!』

『いいえ、もう少しお願いします!』

『何故だ!何故そこまでするのだ!?』

『俺には飛び抜けた才能がありません。魔術の天才ルビーに、勇者としての素質あるアッシュ。その二人に置いていかれないように、人一倍に頑張るしか、才能の差を埋めれないんだ!』

『だからと言って、お前の実力は同年代ではすでに飛び抜けているのだ。そこまで命を掛けなくとも…………』

『アイツらはこの先、魔王討伐に選抜されるだろう。俺もアイツらの後ろから見ているだけじゃなく、肩を並べて戦いたいんだ!』

『シオン……………』


『アイツは、アッシュは俺の憧れる自慢の親友なんだよ!アイツに、親友として情けない姿を見せる訳にはいかないんだ!ライバルとして、戦友として胸を張って隣りに立っていたいんだ!!!』


違う…………

違うんだ!
僕はそんな人間じゃない!?
神様にチート能力を貰って、楽して強くなった卑怯者なんだよ!

僕の方こそシオンの隣りに立つ資格なんてないんだ!


アッシュは自分に急に恥ずかしくなった。
確かに真面目に修行をしていた。

でも、前世で例えるなら部活の様な感覚だった。
一生懸命に剣を振るっていても、目の前の血だらけで、必死になお前に進もうとしているシオンの覚悟に比べたら、自分はなんて浅はかな小さい人間なんだろう。

アッシュは自分はそんなたいした事のない人間だ!と叫びたかった。

もう止めてくれっと、飛び出そうとした時だった。

『…………それに、俺だってアッシュの盾ぐらいになれるぐらいには強くなってやるさ!』

!?

シオン、お前はこんな僕の為に身体を張って守ろうと言うのか?

こんな神様チートでズルをしている愚かな僕を親友と言ってくれるのか?

こんな情けない僕と肩を並べて戦ってくれる戦友になってくれるのか?


「その時だよ。僕も中で何かが壊れたのは。シオンが僕を親友だと言ってくれるなら、僕は本当にシオンの憧れる勇者になると誓ったんだ」


シオンに幻滅されたくない。
シオンに頼られる親友でありたい。
シオンを逆に守れるくらい強くなりたい。


「マリン、シオンが僕を親友と呼んでくれたから、僕は強くなると誓ったんだ。シオンが僕に追いつこう言うなら、僕はより高い壁となってシオンの先に進むと決めたんだ。だから、僕にシオンを止める権利はないんだよ。あの傷付いても必死に強くなろうとしているのは僕に追い付くためだからね」

マリンはそんな…………と呟いた。

「カラー侯爵も、そのお母さんも辛いんだよ。でも、シオンの、息子の想いを汲んで、心を鬼にして付き合っているんだ。その想いを僕は無駄にできない。だから全ては僕のせいなんだ」

アッシュは悲しそうにマリンに視線を向けた。

「これがマリンに見て、聞いて欲しかった全容だよ。マリン、君がヒロインとしてチートを授かっている転生仲間だ。だけど、君は僕と違って間違えないでくれ。力を持つものは、大小関わらず周囲に影響を与える。願わくば、君はこの世界で危険を犯さずに過ごして欲しい」


アッシュは切実に、マリンが力に翻弄されずに生きて欲しいと願うのだった。








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