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第3章:幼少期・剣魔大会編

当然の結果

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試合が終わり、アルデバランとガイは治療を受けていた。

「ぐぅぅぅぅ!!!!」

激しい痛みに悶えるアルデバラン。毒と麻痺と出血の3つもの状態異常を受けているからだ。

「た、頼む!俺の治療よりアイツの治療に力を入れてくれ。アイツはこの後、決勝戦があるんだ!」

アルデバランの治療と回復をもっとも願ったのはガイ・キャンサーだった。負けた事は素直に悔しいが、全力を出し切って負けたのだ悔いはない。

控室にシオン達がやってきた。

「治療のお手伝いに来ました!」

「おい、君達!今は忙しいんだ!後にしなさい!」

治療班の方が止めに入るがガイがそれを制した。

「まて、その子らはアクエリアス公爵の子供だ。好きにさせてくれ」

!?

流石に大貴族の子供と聞いて、戸惑う治療班にシオンはポーションを出した。

「オールキュアのポーションです!アルデバランさんに飲ませて下さい!」

「なんと!そんな高価な物を!?」

まだ人の手では作り出せない完全状態異常回復のポーションであった。ダンジョンの深層でしか手に入らないレアアイテムである。

ごくごくっとアルデバランさんに飲ませた。

「はぁはぁ………」

痛みが薄れ、呼吸が落ち着いていった。

「これで通常の回復魔法が効くはずです。後はよろしくお願いします!」
「ああ、任せておきなさい!」

シオンは安心しているガイさんに挨拶をした。

「ガイさん、ごめんなさい!この前は失礼な事を言いました!」

急に頭を下げたシオンに、ガイはポカーンと間の抜けた顔でシオンを見つめた。

「何を急に………」
「あんな素晴らしい戦いをした人を、弱いと言った自分が恥ずかしいのです!貴方は強いです!」

はっきりと強いと言ったガイが横を向き言い返す。

「はっ!俺が強いって?負けたのにかよ?」

拳を握り締めながら悔しそうに呟いた。

「最後まで諦めず、剣を失くした時の奥の手も用意していたあなたを【弱い】という方はいません。最後まで勝ちを譲らなかった貴方は強い!」

真っ正直にそう言われると、恥ずかしさから軽口を叩いてシオンを追い払うガイであった。


次の戦いが始まる!










『まもなく、もう1つの準決勝が始まります!圧倒的な実力で相手を蹂躙するアクエリアスペア対魔皇国のロフトペアです!是非とも勝って、エトワール王国の独走を止めて貰いたいですね!』

ワァーーーーーーーー!!!!
ワァーーーーーーーー!!!!

「お前がグランか?思ったより小さいな?」

両者が対面し、お互いを見据えた。魔族のロフトは2メールを越える巨体で金棒を使う。並みの選手ならそのまま通常攻撃で叩き潰す程の怪力の持ち主である。

「そうか?人族では高い方だぞ?それに、戦いは身長で決まる訳ではない」

「クックックッ、リーチの差というものをみせてやろう!一撃で終わるなよ!?」


『さぁ!両者のボルテージも高まって来ました!この準決勝はどんな名勝負を魅せてくれるのか!?準決勝…………始めーーーーーーー!!!!』

「さぁ!なぶり殺してや……る」

ザシュッ!!!!

「えっ?」


パッキーン!

電光石火のスピードで、完全に油断していたロフト達のバッチを破壊してクリスタル・ブレイクを決めた。なんとも呆気ない幕引きである。

「は、はぁーーーーーーー!?」

『なんと、クリスタル・ブレイクだーーーーーーーーーー!!!!し、勝者はアクエリアスペアでーーーーーーーす!!!!』

うおぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおお!!!!!!


『なんと一瞬で勝負がついてしまいました!これは何とも呆気ない決着です!!!!』

「うがあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!卑怯だぞぉぉぉぉぉぉおおお!!!!!!」

叫ぶロフトに、グランは冷めた目でみつめた。

「試合早々に油断していたお前が悪いのだ。卑怯?何が卑怯だ?誰が試合開始直後に攻撃してはいけないと言った?お前が弱いのがいけないのだろう?」

「ぐぅぅぅぅぅ!黙れーーーー!!!!」

試合は終了し、決着が着いているにも関わらず、ロフトは怒りに任せて襲い掛かってきた。

「………愚かな!」


キンッ!?

斬!!!!

「ぐぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

グランはロフトを一瞬で切り刻み、戦闘不能にした。剣魔大会では決着が着いたのに卑怯な手で、相手を傷付けた場合は、出場国がペナルティを課されてしまうのだ。これにより未遂とはいえ魔皇国はエトワール王国に、罰金などを支払わなければならなくなった。

こうして、もう1つの準決勝は呆気なく終わったのだった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
【後書き】

愚者の声
「手抜きではないですよ?」







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