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命の危険

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ジーク王子は、シオンの兄達がしぶしぶ応接室に通してお茶を飲んでいた。

「………それで?ジーク王子は本気でシオンを妻にしたいと思っているのですか?」

ルークは言葉使いが悪いのでレインが代わりに話していた。
ジーク王子は余裕があるのか、優雅にお茶を飲み、シオンの兄達は射殺すような視線を向けていた。

「ええ、本気です。私は本気でシオンに一目惚れしたんですよ」
「しかし、それには問題が多くありますよね?ジーク王子は隣国ファーランド王国の第一王子です。ゆくゆくは王太子になり国王になる可能性が1番高い方だ。シオンを王妃にするつもりですか?」

ジーク王子はカップを置いて話した。

「確かにそれが理想的ですね。しかし、シオンが望まないなら王位継承権を辞退して、適当な公爵位を貰って領地を切り盛りしながら暮らしていくのも悪くないと思っています」

!?

シオンの友人と言うことで、メリッサやリリィ、ライト王子も離れたテーブルに座っていたのだが、話を聞いて驚いた。

『コイツ!オレがシオンに申込したい言葉を言いやがって!』

ライト王子は自分と重ねて悔しがった。
そして平然としているジーク王子もシオンの兄達の殺気を受けて冷や汗を描いていた。

『なんて殺気を放っているんだ!?言葉に気を付けないと殺られるぞ!?』

護衛の騎士もいるが、この二人に勝てるとは思わなかった。

ジークはシオンに惚れたのは本当であるが、打算もあった。
すでに妖精姫の噂は有名だったが、独自の調査で、龍の子供を二匹テイムしていると言う。
もし、王妃になれば交渉の席で連れていけば、我が国は龍を従えていると思わせることができ、子龍であっても大きなアドバンテージを持つことができる。
もし、好きな絵を描きたいと言って、先ほどの公爵位を得て嫁にきて貰っても、天才画家として、領地運営の大きな役に立つだろう。

どちらに転んでもファーランド王国にとってはメリットしかないのである。

問題があるとすれば、バーニングハート公爵家が、一国を凌駕する武力を兼ね備えていた事である。
最低でも敵に廻さず、貿易などで提携を結ぶ事が出来れば利益をもたらす事ができるのだ。

ジーク王子はシオンの兄達よりは武力では劣るが、交渉という話し合いには一律の長があった。

ジークが踏み込んで話そうとした時、シオンの兄達の殺気が遊びだと思うくらいの、とてつもない殺気を放つ者が扉を開いた。

バンッ!!!

「大変お待たせして申し訳ない。私がバーニングハート公爵家当主カールだ。はるばる隣国から来られたと伺ったが、さっそく御用件を伺いましょう」

乱暴に扉を開けたにも関わらず、にこやかに話すカール公爵を見た者達は冷や汗が止まらなかった。

『マジかよ。親父ってこんなに凄かったのか?』
『いつも母上に良いようにされている父上が本気で怒るとここまで底が見えなくなるのか!?』

いつも見ている父親の底知れぬ殺気に、身体が硬直して動けなかった。
それは子供達だけでは無かった。ジーク王子を含めて、立っていた護衛達ですら震えて動けなかった。

『シオンの父親がこれほどまでの傑物とは!?殺気を隠そうともしないとは本気で威嚇している!?』

ここにいる全員が蛇に睨まれた蛙であった。





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