上 下
27 / 117

実は知っていた件について──

しおりを挟む
イージス男爵の指摘にアルトは不敵な笑みを浮かべて言った。

「まぁ、半信半疑でしたが知っていましたから」

意地悪な笑みに変わりお茶を啜った。

「はっ?知っていた???」

「はい。兄上に言われて地酒の不正について調べていたのと、守護精霊アリエル様が顕現されたと言う教会も確認の為に徹底的に調べました。そこの神父から【丁重】に事情を伺ったしだいです」

あっ!?

そうだ!あの時、教会の神父様もいましたわ!
口止めはしましたが王弟殿下の方が権力的に強いですものね。話してもしかたがないですわ。


「神父殿から話を伺っていなければ信じられなかったでしょう。しかし実際にお会いして確信致しました。間違いなく母上だと」

「はぁ~昔からオチャラケてると思っていたら、周りから一歩下がった所で全てを見通している所は変わってないのね。アル」

アルとは家族の間のみで呼ぶ愛称である。

「まったくじゃ。この意地の悪い所は誰に似たのやら」

シオンと先王は諦めて、ため息を付いた。

「それは父上でしょう。どうして守護精霊アリエル様が母上を生まれ変わらせた事を黙っていたのですか?」
「それは、シオンが今世ではゆっくりと過ごしたいと言う願いを叶えようとしただけじゃ」

アルトは、ああ…………と頷いた。

「確かに父上達の時代は『激動の時代』でした。十分に役目を果たされたと思います。ただ───」

シオンをチラッとみて先王を睨んだ。

「せめて子供である私達には知らせて欲しかった!我々だって母上が亡くなってどれだけ悲しんだか!わかっているでしょう!自分の幸せより民や国の為に全てを投げ売って政務に励み、ようやくゆっくりと過ごせると言う所で病に倒れた!どうして教えてくれなかったんですか!!!」

アルトは怒りながらも目に涙を浮かべていた。

「ごめんなさいねアルト。私が先王にお願いしたのです。それにすでに死んでしまった私が、また貴方の前に現れるのもはばかられたのです」

シオンは深く頭を下げた。

「ぐっ………」

アルトは深呼吸をして気持ちを落ち着かせると話した。

「母上は悪くありません。それよりまたお会いできて嬉しいです」

「ええ、私もよ。それにしても、いくら守護精霊アリエル様の事があっても、素直にこの姿の私を信じることができるのはアルトだけでしょう。娘のシーラではすぐには信じれなかったでしょうね。あの子は少し頭が固い所があるから」

アルトとシオンはきつく抱き締め合った。
声を殺して泣きむせるアルトをシオンは優しく慰めた。その慈愛に満ちた目で頭を撫でる姿は母親のそれであった。

それからシオンとアルトは雑談に入り、イージス男爵家に泊まっていく事になった。






しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

いえ、絶対に別れます

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:291pt お気に入り:10,479

箱庭の支配人──稀人は異世界で自由を満喫します?

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:81

男はエルフが常識?男女比1:1000の世界で100歳エルフが未来を選ぶ

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:241pt お気に入り:366

精霊の御子

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:56pt お気に入り:76

貴方の子どもじゃありません

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:26,958pt お気に入り:3,876

腐違い貴婦人会に出席したら、今何故か騎士団長の妻をしてます…

BL / 連載中 24h.ポイント:29,957pt お気に入り:2,237

黒手袋の女たち

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:28pt お気に入り:5

処理中です...