どうやら時代を間違えたみたいです。

ともちゃむ

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5.漆黒の黒

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歩くこと2時間……。

はあ、遠いわね…
わたしがどんだけ歩いても街を見つけられなかったのも納得がいくわ…。

私たちはずっと無言で歩き続けた、

というより、キツすぎて誰も言葉を発せなかった。


                  ・   ・   ・   ・   ・

「ここだ。入るぞ。」

カケルさんの後に続いて入るわたし。



……って、

「えええええぇぇぇぇぇ!!!
ここ!?!?」


目の前には広々と広がったお城が1つ……2つ……3つ………って、

何個あんのよ!!!


こんなとこ…人が住む場所じゃないわ……


「ここ……、どうなってんのよ…。何人くらしてんの。」


思わず言葉がこぼれた。

カケルさんは、

「ん?何人って…何人だろーな。毎日来る人はかわってるからなぁ…。
まあ、気にせず入れよ。アキラ様のとこに連れてくからさ!」

と言ってスタスタと先をいってしまった。

ちょ、ちょっと、まちなさいよ~
わたしが今日何時間歩いてるとおもってんのよ!!


                   ・   ・   ・   ・   ・

目の前に黒くて大きな扉がある。
これを開けたらこの城の主がいるのね…。
少しドキドキしてきてしまったわ。

あ、もちろん緊張してるのよ!

「では、いくぞ。」

カケルさんの掛け声に合わせて私たちは大きな扉をゆっくりとあけた。


                   ・   ・   ・   ・   ・

「アキラ様。こちら、スズナと申す者です。道中倒れているところを発見し、行くあてもないということなので連れてきました。」

ヤマトさんが、今わたしの目の前で椅子に座っている男に話しかける。

男はゆっくりとヤマトさんからわたしに視線をずらし、じっと目をみつめた。



この人………

少し、怖い。



漆黒の夜のような黒い瞳。長いまつげ。すっと整った輪郭。人をあざ笑うかのような薄い唇。
そして、なにより人を惹きつけるそのオーラ………。


「ほぉ…。スズナ、と申すのか…。お前、どこからきた?」

黒の王がわたしに向かって声を発する。


とても…、とても低い声。
思わず身震いしてしまった。

「わ、わたしは………」

どこから?
…って、どこからなの?

日本?
でも、ここも日本?

「わたしは………、」


とずっと言えずに黙っていると、

フッと目の前の王が笑うのが見えた。


「まあ、よい。が、身元もわからんものを易々と泊まらせるほど私も天使ではない。さて、どうしたものか……」

ちょっとまって。
ここを逃したらほんとにわたしは死んでしまうわ。

そうすればもう家族にも会えなくなってしまう。

そんなのイヤよ。

「どんなことでもするわ!!だから、…だから、ここに住ませてください………!!」

深々と頭を下げた。

何分たっただろう。
いや、ほんの5秒ぐらいだったかもしれない。
でも、沈黙の空間はわたしにそれ以上の時間を感じさせた。

人の呼吸がとても深く聞こえた。



「………頭をあげよ。」

わたしはまだ頭を下げたまま。
断られることの恐怖と、彼の低い声に脅威を覚えてしまったからかもしれない。

すると、

ぐっ……!


不意に力が加わる。

ゴツゴツとした手がわたしの顔をするっと滑って顎を上に持ち上げた。


彼はわたしをまじまじと見つめ、ニヤリ、と笑いながら

「どんなことでも……な。ならば私の仕事を手伝え。せいぜい迷惑をかけないように精進するのだぞ。その代わり、ここにおいてやろう。」

と言った。


…………え???


わたしはただ呆然と今言われたことを頭の中で理解しようとした。

シゴトヲテツダエ……??

わ、わたしが……??

「「ありがとうございます!」」

カケルさんとヤマトさんが頭を下げたのがわたしの視界の中で見えた。


黒の王はまだニヤリとしたまま。


「うむ。よいぞ。お、次の客がみえたようだ。お前たち、下がれ。」

「「はっ!」」


そうして抜け殻のようになってしまったわたしを2人は引っ張りながら王のいるこの部屋を後にしたのだった…。

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