声優の養成所の先生やってます

ミントブルー

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10.心の奥底の本音

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 私が養成所時代にとある先生が、二日間だけやってきた。その時、最後の最後で先生が言った言葉が今でも忘れられない。

 「僕、まあ夢をもって声優の養成所に入って、声優になったんですよ。でも実際は今、養成所の先生の仕事をしていて、それで今僕はこの仕事で生活しているんです。この間の舞台もわあーと出てきてはけただけだし。だから、アピールの仕方も変えたんです。それでも変わらなくてだから30前にして悩んでるんですよ。」

 そっかあ、30歳前にして今更他のプロダクションに入り直して一からやっていくのも大変だろうし、講師の収入でやっていけてるのであれば、動けないだろうなー。そんなことを、生徒だった私はぼんやりと考えていた。

 そして、それから10年・・・いや15年以上の歳月が流れ私は声優の養成所の講師をメインとするようになった。この間はナレーションのオーディションを受けてきた。

 よく好きなことを仕事にした方がいいというが実際、この世界に入って『好きなこと』と『出来ること』は違うと思い知った。アニメの現場より一人でブースの中でやるナレーションの方が、向いているなと分かった。

 ただ・・・ただ・・・実は私は、ガンダムパイロットになるのが夢だった。ロボットアニメで主役をやりたかった。○○合体!とか叫びまくりたかった。ジャンプの主人公のように熱血な役をやりたかった。林原めぐみ病でも書いたが、主役やって主題歌歌ってライブやりたかった。
 
 奥底にある本音だ。

 はっ、寝てしまっていた。空が明るくなりかけている。予定していた起きる時間より2時間も早く目が覚めてしまった。今日は演技のワークショップで教えるんだった。
 
 「おはようございます」
 ドアを開けていつもより大きい声であいさつする。
 今日、ワークショップを受ける子達が一斉にたちあがり「おはようございます」とあいさつ。
 
 早速自己紹介。その中で人一倍声が小さな子がいた。
 「あの、緊張してて。」

 来た来た来たー!\(◎o◎)/!
 「あのね、緊張してもいいけど緊張しましたと口に出しちゃ駄目よ。理由は・・・」

 私は声優の養成所の先生をやっている。

 
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