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第4章 伝えられること
屋上での会話
しおりを挟む「うっは~。さすがキリハ。やることが大・胆♪」
双眼鏡を覗いていたフールは、上機嫌で口笛を吹いた。
ここは、気象部ビルの屋上にある観測デッキ。
このビルは中央区に隣接しているので、こうして双眼鏡が一つあれば中央区の様子を観察できるのである。
「フール。随分と、キリハさんのことがお気に入りのようですね。」
フールの後ろに立ち、ターニャは彼にそう問いかけた。
正直なところ、少し戸惑ってしまっている自分がいた。
いくら《焔乱舞》への案内人とはいえど、彼にも感情がある。
それ故に、多少なりとも人の好みが出てしまうのは仕方ないことだろう。
しかしこれまで、こんなにもフールが一人の人間に肩入れすることはなかったと思う。
周囲の誰から見ても、フールは明らかにキリハを特別視していた。
「まあね! キリハは、今までの誰よりも焔への適性が高いと思うよ。……本当に、ピッタリだ。」
ふと、フールの声のトーンが一気に下がる。
双眼鏡から顔を離したフールは、何やら神妙な面持ちをしていた。
「怖いくらいピッタリすぎるんだよ。考え方も剣の特性も、何もかも。まるで、焔のためにあつらえられたみたいだ。リュドルフリアかユアンが焔のためにキリハという存在を生み落したって言われても、僕は信じちゃうかもしれない。」
驚きの言葉が、彼の口から告げられる。
「《焔乱舞》が人間を選ぶのではなく、《焔乱舞》に適応する人間が創り出されたというのですか?」
「あくまでも例え話さ。現実的にはありえないよ。」
青ざめるターニャに、フールはそう言って首を振った。
その時、地面が低い音を立てながら揺れる。
また地震だ。
ここ一ヶ月ほど多発している地震は、最近になってますますその頻度を増していた。
「焔に適合する子の出現とこの地震……そろそろ、笑っていられる状況じゃないかもね。」
不穏な呟きは、小さく溶ける。
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