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第1章 不思議な交流
初めての感覚
しおりを挟む「案ずるな! お前は間違ってない。自信を持って前を向け!!」
そう言ったノアは、力強く肩を叩いてくれる。
それに、不覚にも驚いてしまった。
初めてだ。
こんな風に、ドラゴンの話を笑って受け止めてくれる人なんて。
ドラゴンが好きだと言った自分に、間違っていないと言ってくれる人なんて……
胸が温かい。
自分と同じ目線からドラゴンのことを語れる人がいるということが、どうしようもなく嬉しかった。
「自信を持て、か…。レティシアと同じことを言うんだね。ありがとう。元気出た。」
キリハはノアと同じように笑顔をたたえ、今彼女に伝えられる精一杯の感謝を伝えた。
「今、なんと…?」
キリハの言葉を聞いたノアが、その目をきらりと光らせる。
次の瞬間―――
「今、なんと言ったのだーっ!?」
「わあぁっ!?」
いきなり掴みかかられ、キリハは素っ頓狂な声をあげて飛び上がった。
ノアはその動揺などお構いなしに、問答無用でキリハ詰め寄る。
「だから! 今!! なんと言った!?」
「えっ!? えっと……ありがとう?」
「違う! その前!!」
「ええっ!? えーっと、えーっと……レティシアと同じことを言うんだねって……」
「それだぁっ!!」
「えっ!? 何!? 何!?」
思わず逃げかけたキリハだったが、がっちりと肩を掴むノアはキリハを離すどころか、むしろその体を自身の方へと引き寄せる。
「そのレティシアとかいうのは、そこのドラゴンのことではないのか?」
「う、うん、そうだけど……」
「お前もしかして、ドラゴンの言葉が分かるのか!?」
「………」
キリハはパチパチと目をまたたく。
しばらくの沈黙の後。
「………あ。」
口から出たのは、その一言のみだった。
「その顔、分かるのだな?」
ノアはキラキラとした表情をして、念を押すように問うてくる。
もはや、しらばっくれることは不可能。
なんとなく、それだけは分かった。
「えっと……ルルアじゃ……そういう人、いない…?」
苦しまぎれに訊いてみる。
すると、ノアはさらに表情を輝かせて首を横に振った。
「ルルアどころか、世界的に見ても、ドラゴンの言葉を理解する人間なんてお目にかかれるもんじゃないぞ!? ……そうか! セレニアには昔、ドラゴンを使役できる一族がいたと資料に載っていたが、お前はその一族の末裔なのか?」
「………っ!!」
まるで子供のような目で訊ねられ、否応なしに心臓が跳ねた。
「うん。そう……だよ……」
自然と、言葉が歯切れ悪くなってしまう。
セレニアでは忌み嫌われる竜使い。
それが、世界的にどう伝わっているのかは分からない。
彼女は随分とセレニアのことに詳しいようだが、自分が竜使いと知ったらどんな反応をするのだろう。
せっかく仲良くなれたのに、距離が開いてしまうだろうか。
普段から覚悟はできていることなのだが、それを考えると少しだけ怖かった。
「そんな不安そうな顔をするな。」
ふと、そんな言葉をかけられた。
思わず逸らしていた視線を戻すと、そこではノアが優しげな笑みをたたえていた。
「私はセレニアの人間ではないのだ。過去のしがらみで、お前を疎んだりはしない。お前の価値を決めるのは、今ここに立っているお前自身だろう? 私はお前に価値を見出だしている。だからこそ、こうして話をしたいと思っているのだ。自信を持て。」
まただ。
本当に彼女は、自分に驚きばかりをもたらしてくれる。
彼女はさも当然のように、自分のことを一人の人間として、先入観なしに見てくれているのだ。
レイミヤで共に過ごした、心優しいあの人たちと同じように。
何度経験しても、このむず痒くて温かい感覚には慣れることができない。
脳裏でレイミヤのことを思い出しながら、キリハはほっと肩の力を抜いた。
「ありがとう。そう言ってもらえて、すごく嬉しい。」
「うむ。」
笑うキリハに、ノアもまた満足そうに笑みを深めた。
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