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第2章 ルルアのカリスマ王
すぐに口説き出す大統領様
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ジェラルドの元から離れ、軽い案内をしながら宮殿内を移動し、宮殿本部へと入った頃。
「貴殿は、あのじいさんと仲が悪いのだな。」
突然ノアが、そんな爆弾発言を投下した。
それ対してターニャは軽く目を瞠ったものの、大して動じることなく口を開いた。
「……見抜かれてしまいましたか。さすがは、あのルルアを導いているだけのことはありますね。」
「取り繕わないとは…。貴殿は沈着冷静なだけでなく、肝も据わっているのだな。」
少し意外だったのか、ノアはターニャの態度に目をしばたたかせていた。
「まあ仲が悪いというよりは、あのじいさんが一方的に貴殿を嫌っているだけのようだがな。気に食わんなら罷免すればいいのに、何故そうしないのだ?」
さらりと軽い口調で、とんでもないことを訊いてくるものだ。
さすがに顔を青くするディアラントだったが、一方のターニャはこの質問にも徹底的な冷静さで答える。
「そんなことはしませんよ。彼も我が国にとって、なくてはならない存在です。彼を慕っている方もたくさんいます。誰からも好かれるなんて無理なのですから、そこは折り合いをつけていかねばならないでしょう。」
「ふむ、あのじいさんにそれだけの価値があるのか…。ディアラントが〝頭の固いくそじじい〟と言っていたのは、あいつのことなのだろう?」
「あっ……」
ぎくりと肩を震わせるディアラント。
そんな彼を、ターニャの厳しい視線が射抜く。
「ディアラントさん? ルルアでは、大層羽を伸ばしていたようで?」
「あう……す、すみません。どこに行っても、嘘はつけない性分でして……」
「あなたは一応、国の代表としてルルアに向かったはずですが?」
「だって、まさかこんなところで大暴露されるなんて―――」
「………」
ターニャが無言になり、自分の失言に気付いたディアラントが慌てて口を押さえた。
だがそれも今さらな行動でしかなく、ディアラントに反省の色が皆無であることは、ばっちりとターニャに伝わってしまっていた。
その証拠に。
「あとで、覚えておいてくださいね。」
視線を前へ戻したターニャは、低い声でそう告げた。
不機嫌オーラを全開にするターニャに、ディアラントは弁明の言葉を探しておろおろとしている。
しかし結局、そんな都合のいい言葉などなかったのだろう。
やがて彼は、溜め息を吐きながら絶望に満ちた様子で顔を覆った。
「あっははは!」
その一連のくだりを見ていたノアは、腹を抱えて大笑いをする。
「面白いな、貴殿は。この男がここまで狼狽える姿なんて、初めて見たぞ!」
「他人事だと思って楽しそうに…っ」
恨めしげにノアを見やるディアラントだったが、当人はそれを空気のように流してターニャの隣に並ぶ。
「気に入った! 貴殿、私の友となってはくれないか?」
「え…?」
突然のノアの言葉に驚いたターニャから、冷静さを貫いた無表情が消える。
ノアは笑った。
「互いに同じく、一国を治める者どうしだ。確か、歳もそんなに変わらないだろう? いつまでも他人行儀に貴殿と呼ぶのではなく、親愛の意を込めてターニャと呼ばせてほしい。それに私は一人の友として、ターニャのそんな愛くるしい顔をもっと見たいぞ。」
「あ、愛……」
普段そんなことを言われ慣れていないせいか、ノアに真正面からそう告げられたターニャが瞬く間に顔を赤くする。
「あー…。まーた始まった。気に入った人をひとまず口説くのは、相変わらずですねー。」
「逆に、気に入らない者には見向きもしない。文字どおり、眼中に入らないんだろうね。」
動揺するターニャを面白がってどんどん距離を詰めていくノアに、ディアラントとウルドはそれぞれ呆れた口調でぼやいた。
「でも…」
そこでディアラントは微笑む。
「あの人に同じ立場で語れる友達ができるのは、オレとしても嬉しいかな。」
嬉しさと安堵を滲ませて、ディアラントはターニャとノアを見つめる。
「………」
そんなディアラントを、ウルドはしばらく思案げに観察していた。
「貴殿は、あのじいさんと仲が悪いのだな。」
突然ノアが、そんな爆弾発言を投下した。
それ対してターニャは軽く目を瞠ったものの、大して動じることなく口を開いた。
「……見抜かれてしまいましたか。さすがは、あのルルアを導いているだけのことはありますね。」
「取り繕わないとは…。貴殿は沈着冷静なだけでなく、肝も据わっているのだな。」
少し意外だったのか、ノアはターニャの態度に目をしばたたかせていた。
「まあ仲が悪いというよりは、あのじいさんが一方的に貴殿を嫌っているだけのようだがな。気に食わんなら罷免すればいいのに、何故そうしないのだ?」
さらりと軽い口調で、とんでもないことを訊いてくるものだ。
さすがに顔を青くするディアラントだったが、一方のターニャはこの質問にも徹底的な冷静さで答える。
「そんなことはしませんよ。彼も我が国にとって、なくてはならない存在です。彼を慕っている方もたくさんいます。誰からも好かれるなんて無理なのですから、そこは折り合いをつけていかねばならないでしょう。」
「ふむ、あのじいさんにそれだけの価値があるのか…。ディアラントが〝頭の固いくそじじい〟と言っていたのは、あいつのことなのだろう?」
「あっ……」
ぎくりと肩を震わせるディアラント。
そんな彼を、ターニャの厳しい視線が射抜く。
「ディアラントさん? ルルアでは、大層羽を伸ばしていたようで?」
「あう……す、すみません。どこに行っても、嘘はつけない性分でして……」
「あなたは一応、国の代表としてルルアに向かったはずですが?」
「だって、まさかこんなところで大暴露されるなんて―――」
「………」
ターニャが無言になり、自分の失言に気付いたディアラントが慌てて口を押さえた。
だがそれも今さらな行動でしかなく、ディアラントに反省の色が皆無であることは、ばっちりとターニャに伝わってしまっていた。
その証拠に。
「あとで、覚えておいてくださいね。」
視線を前へ戻したターニャは、低い声でそう告げた。
不機嫌オーラを全開にするターニャに、ディアラントは弁明の言葉を探しておろおろとしている。
しかし結局、そんな都合のいい言葉などなかったのだろう。
やがて彼は、溜め息を吐きながら絶望に満ちた様子で顔を覆った。
「あっははは!」
その一連のくだりを見ていたノアは、腹を抱えて大笑いをする。
「面白いな、貴殿は。この男がここまで狼狽える姿なんて、初めて見たぞ!」
「他人事だと思って楽しそうに…っ」
恨めしげにノアを見やるディアラントだったが、当人はそれを空気のように流してターニャの隣に並ぶ。
「気に入った! 貴殿、私の友となってはくれないか?」
「え…?」
突然のノアの言葉に驚いたターニャから、冷静さを貫いた無表情が消える。
ノアは笑った。
「互いに同じく、一国を治める者どうしだ。確か、歳もそんなに変わらないだろう? いつまでも他人行儀に貴殿と呼ぶのではなく、親愛の意を込めてターニャと呼ばせてほしい。それに私は一人の友として、ターニャのそんな愛くるしい顔をもっと見たいぞ。」
「あ、愛……」
普段そんなことを言われ慣れていないせいか、ノアに真正面からそう告げられたターニャが瞬く間に顔を赤くする。
「あー…。まーた始まった。気に入った人をひとまず口説くのは、相変わらずですねー。」
「逆に、気に入らない者には見向きもしない。文字どおり、眼中に入らないんだろうね。」
動揺するターニャを面白がってどんどん距離を詰めていくノアに、ディアラントとウルドはそれぞれ呆れた口調でぼやいた。
「でも…」
そこでディアラントは微笑む。
「あの人に同じ立場で語れる友達ができるのは、オレとしても嬉しいかな。」
嬉しさと安堵を滲ませて、ディアラントはターニャとノアを見つめる。
「………」
そんなディアラントを、ウルドはしばらく思案げに観察していた。
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