385 / 598
第1章 絡む策略
後悔の記憶
しおりを挟む
朝一の会議が終わると、ドラゴン殲滅部隊の幹部三人で集まるのが暗黙のルール。
ターニャからの共有を受けて、部隊の動き方をどうするか検討するためだ。
そんな重要な会議の第一声は―――
「なぁ。あのキー坊はどう思うよ?」
本来の議題からは、遠く離れたことであった。
「んー……吉凶半々ですね。」
彼自身も気になっていたからか、ディアラントはミゲルの問いに真剣に答える。
「本人の言うとおり、悩みを吹っ切れたってことならいいんです。ただ……キリハの場合、逆の場合でもああなるんです。」
「逆の場合?」
「つまり、悩みが深まって追い詰められた可能性もあるってことです。」
そう告げたディアラントの瞳に、深い憂いが滲む。
「あいつ……レイミヤに来て一年くらい経った頃に、一度だけ行方不明になったことがあるんです。」
「行方不明…?」
不穏な雰囲気を醸すその単語に、ミゲルは眉をひそめる。
ディアラントは訥々と続けた。
「当たり前だろって話ですけど、相当ストレスを溜め込んでたんでしょうね。後から他の子供に聞いて分かったんですけど、竜使いの上に親なしの転校生だってことで、小学校でかなりのいじめを受けていたようです。」
「………」
その時点で、むごいという言葉も出てこない。
親を失い、竜使いという理由だけでいくつもの施設をたらい回しにされ。
ようやく安住の地を見つけて、これからその傷を癒そうという時に、なんと非道な仕打ちをすることか。
そうは思っても、子供の世界というのは単純が故に、ある意味で大人の世界以上に非道であることも事実。
そして、竜使いはとりあえず攻撃するものだという風潮を作っているのが大人であるが故に、子供だけを責めることもできない。
「最初は学校に行きたがらなかったり、体調を崩して休むことも多かったと聞きます。でも次第に……キリハは、そんなことなんてなかったかのように、明るく振る舞うようになっていきました。それでオレたちは、ようやくこの環境にも慣れてきたんだと、楽観的にその変化を受け入れてしまったんです。それが、全ての間違いでした。」
切ない思いをこらえるように、ディアラントが目をつぶる。
「本当に、突然の出来事でした。遊びに行ってくると言って出ていったまま行方をくらませたキリハは……その五日後、深い森の奥で、衰弱しきった状態で発見されました。特に外傷はなく、通った道を落ち葉でわざわざ隠していたことから……キリハ本人が、自分の意思で死のうとしたことは明らかでした。」
「………」
「そして、そんなキリハを最後に見送ってしまったのが……オレです。」
苦しい過去を語るディアラントの両手に、ぐっと力がこもった。
「本当に……本当に、いつもどおりだったんです。疑う余地なんてなかった。『一人で大丈夫か?』って訊いたら、『大丈夫、大丈夫―――ありがとう。』って……笑って手を振ったんです。まさか、あんなことになるなんて思わないじゃないですか…っ」
それは今でも、ディアラントの心に深く刻まれている後悔なのだろう。
深くうつむいてしまった彼に、ミゲルもジョーもかけられる言葉がなかった。
「幸か不幸か、キリハはあの時の記憶が曖昧だった。本人としては、ちょっと一人になりたくて、ちょっと眠くなったから眠っただけという感じだったようです。それならわざわざ思い出させる必要もないと……オレたちは、それからキリハを学校に行かせることをやめました。あいつを中学校にも行かせなかったのは、宮殿からキリハを隠すため以上に、キリハをこれ以上傷つけないためだったんです。」
「そうか……」
今は天真爛漫に笑うキリハの過去にあった、本人さえもあまり覚えていない命の危機。
当時のキリハの心境を思うと、可哀想で仕方ない。
「……ねぇ。」
重苦しい沈黙が落ちる中、ジョーが渋々といった雰囲気で口を開いた。
ターニャからの共有を受けて、部隊の動き方をどうするか検討するためだ。
そんな重要な会議の第一声は―――
「なぁ。あのキー坊はどう思うよ?」
本来の議題からは、遠く離れたことであった。
「んー……吉凶半々ですね。」
彼自身も気になっていたからか、ディアラントはミゲルの問いに真剣に答える。
「本人の言うとおり、悩みを吹っ切れたってことならいいんです。ただ……キリハの場合、逆の場合でもああなるんです。」
「逆の場合?」
「つまり、悩みが深まって追い詰められた可能性もあるってことです。」
そう告げたディアラントの瞳に、深い憂いが滲む。
「あいつ……レイミヤに来て一年くらい経った頃に、一度だけ行方不明になったことがあるんです。」
「行方不明…?」
不穏な雰囲気を醸すその単語に、ミゲルは眉をひそめる。
ディアラントは訥々と続けた。
「当たり前だろって話ですけど、相当ストレスを溜め込んでたんでしょうね。後から他の子供に聞いて分かったんですけど、竜使いの上に親なしの転校生だってことで、小学校でかなりのいじめを受けていたようです。」
「………」
その時点で、むごいという言葉も出てこない。
親を失い、竜使いという理由だけでいくつもの施設をたらい回しにされ。
ようやく安住の地を見つけて、これからその傷を癒そうという時に、なんと非道な仕打ちをすることか。
そうは思っても、子供の世界というのは単純が故に、ある意味で大人の世界以上に非道であることも事実。
そして、竜使いはとりあえず攻撃するものだという風潮を作っているのが大人であるが故に、子供だけを責めることもできない。
「最初は学校に行きたがらなかったり、体調を崩して休むことも多かったと聞きます。でも次第に……キリハは、そんなことなんてなかったかのように、明るく振る舞うようになっていきました。それでオレたちは、ようやくこの環境にも慣れてきたんだと、楽観的にその変化を受け入れてしまったんです。それが、全ての間違いでした。」
切ない思いをこらえるように、ディアラントが目をつぶる。
「本当に、突然の出来事でした。遊びに行ってくると言って出ていったまま行方をくらませたキリハは……その五日後、深い森の奥で、衰弱しきった状態で発見されました。特に外傷はなく、通った道を落ち葉でわざわざ隠していたことから……キリハ本人が、自分の意思で死のうとしたことは明らかでした。」
「………」
「そして、そんなキリハを最後に見送ってしまったのが……オレです。」
苦しい過去を語るディアラントの両手に、ぐっと力がこもった。
「本当に……本当に、いつもどおりだったんです。疑う余地なんてなかった。『一人で大丈夫か?』って訊いたら、『大丈夫、大丈夫―――ありがとう。』って……笑って手を振ったんです。まさか、あんなことになるなんて思わないじゃないですか…っ」
それは今でも、ディアラントの心に深く刻まれている後悔なのだろう。
深くうつむいてしまった彼に、ミゲルもジョーもかけられる言葉がなかった。
「幸か不幸か、キリハはあの時の記憶が曖昧だった。本人としては、ちょっと一人になりたくて、ちょっと眠くなったから眠っただけという感じだったようです。それならわざわざ思い出させる必要もないと……オレたちは、それからキリハを学校に行かせることをやめました。あいつを中学校にも行かせなかったのは、宮殿からキリハを隠すため以上に、キリハをこれ以上傷つけないためだったんです。」
「そうか……」
今は天真爛漫に笑うキリハの過去にあった、本人さえもあまり覚えていない命の危機。
当時のキリハの心境を思うと、可哀想で仕方ない。
「……ねぇ。」
重苦しい沈黙が落ちる中、ジョーが渋々といった雰囲気で口を開いた。
0
あなたにおすすめの小説
雷王、大いに懊悩す~ラスボス魔王、使命を果たして元の世界に戻りたくない異世界転移チート勇者によって全力で延命させられるの巻~
朽縄咲良
ファンタジー
――「要するに、アンタには死なれちゃ困るんだよ。俺が、この異世界で幸せな一生を送って、天寿を全うするまで、な」
魔族を統べる魔王イラ・ギャレマスは、自身の城へと攻め込んできた“伝説の四勇士”の三人、ジェレミィア・ファミィ・エラルティスを、その圧倒的な力を以て圧倒する。
残るは、黒髪黒目の冴えない男――シュータ・ナカムラのみ。
だが……シュータは、魔法陣で三人の仲間を魔王城の遥か彼方へと吹っ飛ばし、ただひとりで魔王と対峙する。
――そして、二十分後。
不様に大理石の床に這いつくばっていたのは、魔王ギャレマスの方だった。
シュータの繰り出す圧倒的なチート攻撃の前に為す術もないギャレマスは、自身の敗北と迫りくる死を覚悟するが、そんな彼に対し、シュータは不敵な笑みを浮かべながら、意外な提案を持ちかけるのだった――。
「なぁ、魔王。ここはひとつ、手を組もうぜ……!」
『地上最強の生物』だが、めっぽうお人好しで、バカが付くくらいに娘の事を溺愛している中年オヤj……ナイスミドル(忖度)の魔王が、反則級のチートマシマシ異世界転移勇者をはじめとした周囲の者たちに翻弄されまくるコメディファンタジー、ここに開幕!
哀れな魔王の、明日はどっちだ……?
(表紙イラストは、ペケさんから戴きました)
*小説家になろう・ノベルアッププラスにも、同作品を掲載しております。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜
mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】
異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。
『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。
しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。
そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~
蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。
情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。
アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。
物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。
それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。
その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。
そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。
それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。
これが、悪役転生ってことか。
特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。
あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。
これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは?
そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。
偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。
一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。
そう思っていたんだけど、俺、弱くない?
希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。
剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。
おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!?
俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。
※カクヨム、なろうでも掲載しています。
【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。
大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。
そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。
しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。
戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。
「面白いじゃん?」
アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる