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第11歩目 嘘はつけない
彼の配慮がつまった贈り物
しおりを挟む『じゃあ、俺にじゃなくて、あいつに何かアクセサリーでも作ってやってください。』
セルカがどうしても何かお礼をさせてほしいと頼んだ時、シュルクはそう告げたのだという。
『旅支度のために手持ちのアクセサリーとかを売っ払ったからか、時々物足りなさそうに、耳とか髪に手をやってるんですよね。』
そうは言われても、アクセサリーなんて個人の趣味が大きく出るもの。
こちらが想像だけで作っても、フィオリアが気に入るとは思えない。
苦言を呈したセルカに対し、シュルクは特に悩むことなく、とある一点を示した。
『身につける物が厳しいなら、別に鞄用の飾りとかでもいいと思いますよ。デザインで悩んでるなら、そこにある共鳴鈴を手本にすれば、間違いないんじゃないですかね。あいつ、かなりあれを気に入ってたみたいだし。』
そんなシュルクの案を受け、あとはセルカがそれとなくフィオリアの好みを聞き出して注文を出した。
そうして出来上がったのが、このヘアピンだという。
「うわぁ……色々とばれてる……」
セルカの話を聞き、フィオリアは頬を赤くして顔を覆った。
言われてみれば、このヘアピンのデザインは、この集会所の共鳴鈴とよく似ている。
このヘアピンを一目見てすぐに気に入ったのは、初めから自分の好みを元に作られた物だったからなのか。
「本当に、よく他人のことを見てる子よね。その上律儀だからか、デザインとか仕上げに悩んだ職人さんに呼ばれては、工房に顔を出してたわよ。」
「ええっ!? 最近シュルクがよくいなくなってたのって、そういうことだったんですか!?」
ここ二週間ばかり、シュルクはいつも以上に集会所から出かけていくことが多かった。
てっきり、仕事が忙しいのだと思っていたのだけど……
「そうよ? 親身に相談に乗ってくれるって、職人さんがかなり頼りにしてたわ。最終的にはライトマイトまで譲ってもらったらしくて、お礼のつもりが普通に儲けちゃったって、申し訳なさそうな顔をしてたもの。」
「ライトマイト!?」
フィオリアは思わずヘアピンを取った。
しゃらりと揺れる、細い鎖。
その先端できらめく赤い石に目を凝らしてみる。
小さくて全然気付かなかったが、赤い石の内側にはキラキラと輝く粒子が見えた。
「シュルク……色々と考えてくれてたんだ。」
「だから言ったでしょ? フィオリアちゃんが思ってるほど、シュルクちゃんはフィオリアちゃんのことを嫌ってないって。」
しみじみと呟くフィオリアに、セルカはそう言って微笑んだ。
「あの子はちゃんと、フィオリアちゃんのことが好きなはずよ。初めて会った時から、シュルクちゃんがフィオリアちゃんのこと以外を優先したの、見たことないもの。羨ましくなるくらい大事にされてるわよ。自信を持ちなさいな。」
叩かれた肩から。
手のひらに乗るヘアピンから。
じわじわと、温かさが全身に広がっていく。
「本当に……ありがとうございます。」
その言葉しか、出てくるものがなかった。
こんなに幸せでいいのだろうか。
単純かもしれないけど、今ここで噛み締められる幸せだけで、これまでの悲しさなんて忘れられるような気がした。
これから待ち受けている呪いの恐怖にも、立ち向かっていけるように思える。
それくらい幸せで、目頭が熱くなるくらい嬉しくて……
「やっぱり、フィオリアちゃんは笑ってる方が可愛いわよ。」
そんなことを言ってくれるセルカと一緒になって、フィオリアも無邪気に笑った。
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