Fairy Song

時雨青葉

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第17歩目 奴隷の町

知らずのうちに切られた火蓋

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 一方、裏道に一人取り残された石売りはというと……


「くっそー!! やられたーっ!!」


 癇癪かんしゃくを起こして、壁をひたすらに蹴っていた。


「悔しい…っ。悔しいけど、すこぶるいい男!!」


 ぐっと拳を握り締め、彼女はそううなる。
 すると―――


「やめとけ、やめとけ。今度こそ彼岸ひがんを拝みてぇのか、お前は。」 


 複雑な顔をしながら、バーティスが店の内側から出てきた。


「だって、あれは反則じゃないですか!! 緑の髪と目ってだけでも稀少価値が高いのに、顔も運命石も超一級って! あんなお宝を泳がす馬鹿が、どこにいるってんですか!?」


「それで手ぇ出して、痛い目を見たのはどいつだ?」


 呆れたバーティスがそう指摘すると、途端に石売りがどこか気まずげにうめいた。


「うっ…。バーティスさんの伝令が来てるって言ったら、案外あっさりと警戒を解いてくれたんで、いけると思ったんですよ。バーティスさんがいるのにも気付いてなかったみたいだし、二人がかりでやればなんとかなるかと……」


 自分の非を認めたくないのか、石売りはぼそぼそと言い訳を呟きながら、つんと顔を背ける。


 それに対して、バーティスは溜め息をつくだけ。


「あの坊主は、オレに気付いてたよ。」
「……えぇっ!?」


 遅れて素っ頓狂な声をあげる石売りにまた一つ溜め息をつき、バーティスはポケットから取り出した煙草たばこに火をつける。


「言ってたろ? 不安なら、後ろにいる奴に助けてもらえばいいって。あれは後ろ盾って意味じゃなくて、単純にお前の後ろって意味だ。堂々とオレに喧嘩を売るたぁ、とんでもねぇ坊主だな。」


「ひえー……なんて命知らず。」


「そうだな。……だが、悪くはねぇな。名前くらいは覚えといてやるか。」


 くくく…と笑ったバーティスは一気に煙草たばこを吸い、吸い殻を地面に投げ捨てた。


「ってことで、お前への依頼は完了だ。自分が可愛いなら、あの坊主にはこれ以上ちょっかいを出すなよ。」


「へーい。」


 石売りはつまらなさそうに返事をし、次に首を軽く傾げた。


「それにしても、変な依頼をしますね。あの男に私の特技を教えろ、だなんて。さっき聞きそびれましたけど、なんでなんです?」


「あの坊主がネラみさきに行きたいってんで、ラミアに情報を流した。あそこは、あの女のテリトリーだからな。」


「あー……なるほど。それで。」


 納得した様子の石売り。
 バーティスは軽く肩をすくめた。


「まあ、金の分のヒントはやったんだ。あの女のがめつさが勝つか、坊主の賢さが勝つか。あとは、高みの見物だな。」


 飄々ひょうひょうと述べ、バーティスはまたポケットから煙草たばこを取り出すのだった。

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