Fairy Song

時雨青葉

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【第4幕】幕間

霊子に送られた先

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「―――っ」


 ハッとしてまぶたを開いた眼前には、真っ白な世界が広がっていた。
 慌てて身を起こしたシュルクは、辺りを見回して状況確認を。


 辺り一面、木々が乱立する森の景色。
 しかも、数メートル先も視認できないくらいに濃いきりが立ち込めている。


「―――五つ、白霧はくむの迷いの中心。」


 無意識のうちに、口がうたの一節をなぞる。


 確かに連れてってあげるとは言われたけど、まさか次の運命石の在処ありかにダイレクトで送ってくれたのか?


 可能な限り急ぎたい旅路だし、こちらとしては渡りに船でありがたいけれど……


「………」


 胸中は複雑だ。


〈これを読む君は、きっとこの呪いを解く資格を得たのだろう。〉


 イストリアで見つけた手記。
 そこでは、自分が〝運命に導かれし者〟だと表現されていた。


 ―――運命の巡り合わせを待つこと、幾星霜いくせいそう
 ―――ようやく、あなたという存在が生まれたの。


 そして、それが真実だと言わんばかりに、霊子たちは自分にそう告げた。


「この先に進めば……何かが変わる。」


 確信に満ちた口調で呟き、シュルクは右手をゆっくりと開いた。


 ルルーシェの運命石。
 これを集めることが呪いを打破する鍵だということは、もはや疑いようもない。


 ならば、進まないという選択肢はありえない。


 ルルーシェとセイラの因縁は知ったこっちゃないけど、他でもない自分とフィオリアのために、掴み取れる希望は全て掴んでみせる。


 それが、自分の決断だから。


「とりあえず、しまうか。」


 胸元からびんを取り出して、今回手に入れた運命石の欠片かけらをその中に放り込む。


 淡い光を放つ二つの石。
 それらが一つに合わさって、光が収まった瞬間―――


「うぐ…っ」


 とてつもない痛みが胸に走り、シュルクは身を折って胸を押さえた。


「……はっ、なるほど。これを集めるほどに、呪いが進むってわけね。ま、道理だわな…っ」


 荒い呼吸で痛みをやり過ごすシュルクは、その表情になんとも言えない笑みを浮かべる。


 小さく散った運命石の欠片かけらの一つひとつに呪いの力が込められているなら、それを集めれば必然的に呪いの力も強くなろう。


 最近になって呪いが始まったのではなく、呪いは最初からこの身をむしばんでいて、その効果が表面化したのが最近だったというわけだ。


「……起きてなくてよかった。」


 未だに眠っているフィオリアを見下ろし、シュルクはほっとひと息。


 この石を集めるほど、呪いを解くチャンスにも近付ける。
 だが、この石を集めるほどに呪いは進み、死が手を伸ばしてくる。


 こんな現実を知ったら、彼女はどんな顔をするだろうか。
 自分が苦しむ姿を見るくらいなら、旅をやめてもいいと言い出してしまうかも。


 もしもそうなったら、大喧嘩をしてでも彼女をじ伏せるしかないだろうな。


 自分だって想いは同じ。


 彼女が苦しむ姿を見るくらいなら、この命を賭けに差し出してでも呪いを解いてやりたいのだから。


「きっと大丈夫だろ。どうやら俺には、強力すぎる味方がいるらしいからな。」


 ふと虚空に手をかざせば、こちらの言葉に応えるように霊子たちが集まってくる。


「何が〝今はまだ〟だよ。すぐに合格ラインまで行ってやるから、その時には色々と教えてくれよな。」


 静かな声で宣戦布告。


 それでわだかまりを引っ込めたシュルクは、びんをしまってチョーカーを首につける。


 さて。
 先に進むにしても、まずは眠り姫を起こすことからだな。


「フィオリア、起きろ。おいってば。」


 疲れているところ申し訳ないが、問答無用で肩を揺さぶることに。


「んん…」


 すると、数秒ほどでフィオリアが睫毛まつげを震わせた。


「シュルク…?」
「おはよう。本当はもう少し休みたいだろうけど、宿を見つけるまで踏ん張ってくれ。」


「………」


 語りかけるも、フィオリアは何も言わない。
 ふよふよとうつろな視線をさまよわせ、ゆっくりと両手を伸ばす。


「フィオリア…?」


 頬に触れてきたフィオリアの手に自分の手を重ねて、シュルクは眉を寄せる。


 どうしたのだろう。
 フィオリアの様子がおかしい。


「どうした? 何があった?」
「シュルク……」


 優しく訊ねると、フィオリアが困ったように口ごもる。
 何が不安なのか、こちらの服を掴む手が冷たく震えていた。


「シュルク……私……」


 一言、一言ずつ。
 じれったく思えるほどゆっくり、フィオリアが言葉をつむぐ。


 そして、最後の言葉が耳朶じだを打った時、そこから全身に広がった衝撃に頭が真っ白になってしまった。




「私……―――目が、見えないの。」



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