Fairy Song

時雨青葉

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第26歩目 出るか、残るか―――

目が見えるようになったら―――

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 ちょうどいいので、午後はガルドを解説役にえて書庫の本を読み漁ることに。


 そのなかで昼前に起きた子供たちとの出来事を話すと、彼はなんとも言えない雰囲気で苦笑した。


 子供たちとしては、自分たちと思い切り遊んでくれるかつ、里の人々が知らないことを教えてくれるお兄ちゃんというのが新鮮で、そんな存在がいてくれることが嬉しくてたまらないのだろう。


 言われてみれば、自分も遠い土地から旅をしてきた人の話はかなり興味津々に聞いたっけ。


 そんな実体験があることから、ガルドの推測に素直に同意してしまった。


 でも―――自分自身の選択を最優先にしていいから、と。


 とびきり優しく、ガルドはそう言ってくれた。
 その言葉に曖昧あいまいな反応しかできないまま、日が傾いてきたので一時解散という運びに。




「お姉ちゃんは、ここにいるのが楽しい?」




 フィオリアたちがいる部屋に差し掛かったところで、そんな言葉が耳朶じだを打った。


「………っ」


 とっさに息を殺して、壁に背中を預けて中の会話に耳を澄ませていた。


「とっても楽しいよ。」


 シノンからの質問に、フィオリアはそう答える。


 そこまで時間を置かなかった辺り、彼女は本心で告げたのだろう。
 しかし、シノンはそれで安心できなかったようだ。


「本当に本当?」
「目が見えなくても楽しい?」


 シノンの不安に触発されたのか、ミオンもフィオリアに問いかけ始めてしまう。


「あらあら、二人とも急にどうしたの? こっちにいらっしゃい。」


 二人を近くに招いたらしいフィオリアは、穏やかな口調で語る。


「大丈夫、嘘なんかじゃないよ。目が見えなくても、みんなの優しい気持ちは伝わってくるもの。ちょっと残念なのは、あなたたちの顔が見られないことくらい。二人とも絶対に可愛いだろうし、目を見てお話ができたらもっと仲良くなれそうだもの。」


 ミオンたちの不安を少しでもやわらげてあげたいのか、フィオリアの声にはめいいっぱいの好意と誠意がこもっていた。


「目が見えたら、もっと楽しい?」


「きっとね。でも、今でも十分に楽しいよ?」


「じゃあ、じじ様や霊子のみんなに、お姉ちゃんの目が見えるようにしてくださいってお願いすればいいかな?」


「ど、どうしてそんなことを言うの…?」


 さすがに、戸惑ってしまったようだ。
 フィオリアの声が狼狽ろうばいで揺れる。


 そんな彼女に向けて―――




「もし目が見えるようになったら……お姉ちゃんもお兄ちゃんも、ずっとここにいてくれる?」




 自分と同じ問いかけが放たれる。


「え…?」


 高くトーンが外れた呟き。
 自分と同じく、そんな質問なんて欠片かけらも想像していなかったという反応だ。


「………」


 廊下で立ちすくんでいたシュルクは、ぐっと奥歯を噛み締める。


 そして―――躊躇ためらいなく、部屋の中に通じるドアを開け放った。


「ミオン、シノン。じいちゃんが呼んでるぞー。」


 何も聞いていない風を装って、二人にそう告げる。


「ええー…」


「ええーじゃない。そもそも、お前らは母さんたちが待ってる家が別にあるだろうが。母さんたちが寂しくなっちゃうだろ。」


「むー…」


「むーもだめ。俺たちはすぐにいなくなるわけじゃないんだから、今は恋人の時間にさせてくれ。」


「恋人?」


「未来のお嫁さんとお婿さんってこと。」


「シュ、シュルク…っ」


 シュルクの明け透けない物言いに、フィオリアが一瞬で赤くなり、ミオンたちはくすくすと笑う。


(悪いな。じいちゃんに、ミオンとシノンをよろしくって伝えといてくれ。)


 ミオンたちがフィオリアをからかっている隙を見て、周囲に語りかける。


 すると、それを了承したらしい霊子たちが伝言ゲームのようにさざめきを広げていくのが分かった。


「ほら、とりあえず行ってこい。」
「はあーい。」


「チェーロはどうする?」
「きゅっ!」


「俺たちと一緒にいるのね。了解。」


 当然のように肩に乗ってきたチェーロに苦笑しながら、シュルクはミオンたちをやんわりと部屋の外に押し出すのだった。

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