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ラウンド14 帰ってくるな?
しおりを挟む「はあ? 帰ってくるな?」
かかってきた電話に出たジョーは、告げられた言葉に不可解そうな顔をするしかなかった。
「君はそのまま、二ヶ月くらいルルアに出張だ。」
電話の主であるオークスは、欠伸混じりにそんなことを言う。
「キリハの頼みだからって、下手に本気を出しただろう? キリハが所属している研究所から、文書と電話の両方で君の派遣依頼がきた。」
「そんなの、断ってくださいよ。」
「そうもいかなくてなぁ……」
少しばかり困った雰囲気のオークス。
電話の向こうで、ポリポリと頭を掻いている姿が目に浮かぶようだ。
「そりゃあな、こっちとしても国一番の天才科学者を貸し出すなんて、そんなもったいないことはしたくないよ? だから冗談で、貸し出し料金は最低でも一ヶ月一千万だって吹っかけたら……翌日、三千万も振り込まれてきた。」
「翌日に、三千万…?」
「ああ、そうだ。契約を交わす前に現金が来ちゃったから、ターニャ様も頭を抱えてるよ。正式な通達は後日送るから、とりあえず君は、休暇が明けたらキリハと一緒に研究所に通ってくれ。」
「ちょ…」
「ちょうどいいから、そっちで一日の適正研究量ってものを学んでこい。こっちと違って、そっちには好き勝手にふるまえるほどの情報とコネはないだろう?」
「うっ…」
「さすがにそろそろ、ディアとエリクが可哀想だ。お灸が宿舎からの外出禁止じゃなくて、ルルアへの出張になったことはラッキーだと思え。一応、研究はできるんだからな。」
直後、プツリと切られる電話。
用件だけ言い捨てていったオークスの態度が、異論は受けつけないと語っているように思えた。
「あの女ぁ…っ」
ジョーは震えるほどに拳を握り締める。
一介の研究所が、三千万なんて大金を即日で動かせるわけがない。
確実に、裏でノアが手を引いている。
オークスやターニャもそれに気付いているから、素直に自分を差し出すしかなかったのだろう。
押したら逃げるけど、引くことは許さないと?
「……上等。あんまりいい気にならないでよね…っ」
暗い表情で、何やらよからぬ笑みをたたえるジョー。
その顔のまま彼が手を伸ばした先には、彼愛用のノートパソコンがあった。
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