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第1章 異変
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公園沿いの桜並木。
公園内では、犬の散歩に来た年配者が朝のささやかな会話を楽しんでいた。
そんな穏やかな公園内とは対照的に、並木道は忙しなく多くの人々が行き交っている。
元気に走っていく小学生たち。
音楽プレーヤーを片手に、のんびりと歩みを進めている学生。
鞄を手に、駆け足と等しいようなスピードで歩いていくサラリーマン。
ハイヒールで颯爽と駆け抜けていく女性。
大きな駅も近いこの公園沿いの朝は、とにかく賑やかだ。
この街は駅の近場に学校や役所などが密集しており、昼夜を通して駅周りの人通りが激しい。
しかも、近年進められている駅周辺の都市化計画のおかげで、最近はこの辺りに大きいショッピングモールやデパートもできた。
駅前の道も綺麗に舗装し直され、駅周辺は計画どおりに着々と都市化しつつある。
こういった街の変化が人通りの多さに拍車をかけていることは、言うまでもないだろう。
何年か前と比べると大した差だ。
実は人の往来の激しい並木道を、欠伸をしながら歩く。
「みーのる!」
ふいに、後ろから声をかけられた。
気だるげに振り向くのと肩を叩かれたのは、ほぼ同時。
「おはよう、梨央。」
実は淡く微笑む。
声をかけてきたのは、長い黒髪を腰辺りまで伸ばした少女だった。
明るい雰囲気を身にまとい、吊りぎみの大きな目が印象的だ。
彼女の名は楠木梨央。
小学校以来の幼馴染みである。
実はどこか機嫌のよさそうな幼馴染みを見つめ、ふと自分の髪に触れた。
黒髪黒目という一般的な梨央の容姿に対し、淡い栗毛色の細くて柔らかい髪と澄んだ薄茶色の目という自分の容姿。
これは、外国人である父親譲りのものだ。
今はもう慣れたけど、やはり初対面の人には多少なりとも驚かれる。
特に、今のような人の出入りがある時は嫌でも人目を引いてしまうので、少し居心地が悪いと感じてしまうこともしばしば。
どうせ、今年もしばらくは新入生たちに奇異の目で見られるのだろう。
毎年辟易してしまうそんな苦い予感も、今は眠気に押しのけられてしまいそうだった。
「なんか、眠そうだね。」
こちらの様子に気付いた梨央が、下から顔を覗き込んできた。
「うん。ちょっと寝不足。」
そう言っているそばから、欠伸が出てしまう。
「大丈夫? あんまり遅くまで勉強するのも、ほどほどにしなよ?」
「……うん。」
まさか、毎晩覚えてもいない夢に悩んでいるとも言えるわけがなく、実は梨央の言葉に曖昧に答えておくしかなかった。
二人はしばらく並木道に沿って歩き、途中から細い道に入った。
すると、人通りは嘘のようになくなる。
駅周辺の喧騒があっという間に遠ざかる錯覚さえ受けるほどだ。
視界いっぱいには、閑静な住宅地が。
というのも、この辺りは道が複雑に入り組んでいるので、忙しい朝の時間帯はあまり利用されないのである。
時々慣れているはずの住民でさえも道を間違えることがあり、この辺りをよく知らない人間が立ち入れば、それこそ悲惨なことになる。
自分も、過去にそんな人を案内した経験があった。
実と梨央は、複雑に入り組んだ住宅地の道を迷わず歩いていく。
大多数がこの道ではなく分かりやすい大通りを使うのだが、特に急いでいるわけでもない自分にとってはこの道が非常に好都合。
大通りではどうしても周りに急かされて歩くことになるので、自分のスピードで歩けないのだ。
「あー……めんどくさ、学校。」
実はうんざりとぼやく。
「まったく、そんなこと言わないの。」
梨央が急に歩みを止める。
実は梨央のやや前方に立ち止まり、梨央を振り返った。
「私たちは、今日から三年生なのよ。受験勉強だって始まってるし、これからの学校生活の一日一日が重要になっていくわけよ。分かる、実? 面倒とか、そういうことを言ってる場合じゃないんだよ。」
片手を腰に当て、片方の手で握り拳を作り熱弁する梨央。
優等生のような梨央の言葉に、実は面倒そうに顔をしかめた。
(そういえば……梨央の志望校って、割とレベル高かったっけなぁ。)
実は、思わず出かけた欠伸を噛み殺した。
寝不足のせいで、本当に欠伸が止まらない。
「そんなの、行ける学校に行けばよくない?」
率直な意見を漏らした瞬間、梨央の目つきが変わった。
「実は、頭がいいからそういうことを言えるの! 行ける学校って、ほぼ全部じゃない。大体、実はいつも―――」
「はいはいはいはい、そこまで。分かった。梨央の気持ちはよーく分かった。だから、さっさと学校に行こうよ。」
実は慌てて梨央の言葉を遮った。
このまま梨央にしゃべらせると、絶対に長いからだ。
梨央を見たまま、実は逃げるように学校の方へと歩き出す。
すると、梨央が目を見開いた。
「実、危ないよ!」
「え?」
梨央に叫ばれたが、時すでに遅し。
言葉の意味を理解しないうちに、進行方向にいた誰かとぶつかってしまった。
すばやく振り向くと、二人組の少女の片方が悲鳴をあげながらバランスを崩している。
実はとっさに手を伸ばし、少女が転んでしまう前にその腕と肩を掴んで支えてやる。
すると何故か、後ろから「あちゃー…」という声と溜め息が聞こえた。
転倒を免れた少女は、こちらを振り向くと目をまんまるにしてこちらを凝視してきた。
同じ学校の制服を着ているけれど、顔に見覚えはない。
「ごめん。前を見てなかった。怪我とかはない……よね?」
少女の顔を覗き込むと、それまで時を止めてしまったかのように固まっていた少女が大きく震えた。
「だ、大丈夫です。」
ぎこちなく答える少女は、おどおどと視線を右往左往させている。
まあ、これも初対面の人がよく見せる反応の一つだ。
「そっか。よかった。」
実は微笑み、少女から手を離すとすぐに距離を置いた。
そのまま通学の道へ戻ればよかったはずなのだけど、何故か少女はその場を動かずに勢いよく頭を下げてきた。
「あの……その、ありがとうございました!」
思ってもみなかった少女の反応に、実は目をまたたかせた。
「……え? ぶつかったのは俺だし、君がお礼を言う必要は―――」
言葉は、最後まで続かなかった。
少女はこちらの言葉を聞き終えるよりも早く隣にいた友人の腕をむんずと掴んで、自分の脇を走り去っていってしまったのだ。
「あっ、ちょっと!」
学校は反対方向ですけど……
反射的に振り返ったけど、少女たちの姿はぐんぐん遠ざかっていくばかり。
指摘し損ねた実の手が、所在なげに空中で固まる。
結局、そこに残されたのはポカンとした表情の実と、不機嫌そうな梨央だ。
「な、何…?」
実が半ば茫然と呟く。
そんな実に梨央は再度溜め息をつくと、その耳をぎゅっと引っ張った。
「何、じゃないわよっ!」
「うわわっ!?」
耳の間近で怒鳴られて、実は思わず顔を背ける。
視線を戻すと、梨央が仁王立ちでこちらを不機嫌そうに見据えていた。
「ようは一目惚れよ。一目惚れ。」
「……はあ?」
実は理解できないというように眉を寄せた。
それに対し、梨央は重たげな息を吐く。
本人は全く自覚していないが、学校での実はかなり評判がいい。
優しげな外見はもちろん、穏やかで柔らかい雰囲気は親しみやすさを感じさせる。
そしてそんな雰囲気に違わず、実は誰にでも優しく親切だ。
頭もいいし、運動神経だって文句なし。
はっきり言うと、かなりモテるのである。
それなのに、当の本人が全くの自覚なし。
たくさんの人からさりげない告白を何度も受けているのだが、持ち前の鈍さで全てをかわしている。
実には、告白されたという認識すらないだろう。
「まったく……少しは態度に棘があるならまだしも、実は誰にでも優しすぎるのよ。だから、八方美人だなんて言われたりもするんじゃない。どういう環境で育ったからこんな完璧になるのか、未だに不思議でならないわ。」
「完璧って……そんなんじゃないよ。」
何を言い出すんだと、カラカラ笑う実。
肝心の本人がこれである。
そのうち、誰かからいらない恨みでも買わないといいのだけど……
そんな風に心配になる梨央であった。
「はあ……これじゃあ、今年も去年と同じような状況になるわよ。」
去年の春を思い返し、梨央はうんざりと肩を落とす。
「んー…。別に今さら、どうでもいいかなぁ。」
対照的に、実はあっさりと言い切った。
「なんでよ?」
梨央はむっとしながら言い返す。
すると実は、梨央に爽やかな笑みを向けてこう答えた。
「だって去年と同じってさ、変にじろじろ見られるだけじゃん。そりゃあちょっと居心地は悪いけど、実害があるわけじゃないし、みんなの興味が薄れるまで耐えれば―――」
実の言葉の途中で、梨央の動きがピタリと止まる。
その表情が無で埋め尽くされたかと思うと、頭ごとその顔がゆっくりと下へ。
「あれ……り、梨央?」
握り締められた梨央の手がわなわなと震えていることに気付き、実はおそるおそる梨央の名前を呼んでみる。
どうも、失言があったようだ。
悪い予感を察知したので梨央の表情を探ろうと頭を下げてみても、彼女の長い髪が顔を見せてくれなかった。
試しに顔の近くで手を振ってみても、梨央は反応しない。
「何? 俺、変なこと言った?」
「……ほんとにもう。」
ようやく開いた梨央の口から、普段よりも数段に低い声が漏れた。
「成績優秀、運動神経抜群。かっこいいし、優しいし、信じられないくらいに完璧よ。だけどね……」
次の瞬間、梨央が思いっきり怒鳴り声をまき散らす。
「なんっで、恋愛にはこんなに鈍感なのよーっ!!」
「うわあああっ!?」
あまりの気迫に、実は反射的にその場から駆け出した。
「待ちなさーい!」
後ろから梨央が、説教だなんだと言いながら追いかけてくる。
二人はそのまま学校まで、走り続けることになった。
公園内では、犬の散歩に来た年配者が朝のささやかな会話を楽しんでいた。
そんな穏やかな公園内とは対照的に、並木道は忙しなく多くの人々が行き交っている。
元気に走っていく小学生たち。
音楽プレーヤーを片手に、のんびりと歩みを進めている学生。
鞄を手に、駆け足と等しいようなスピードで歩いていくサラリーマン。
ハイヒールで颯爽と駆け抜けていく女性。
大きな駅も近いこの公園沿いの朝は、とにかく賑やかだ。
この街は駅の近場に学校や役所などが密集しており、昼夜を通して駅周りの人通りが激しい。
しかも、近年進められている駅周辺の都市化計画のおかげで、最近はこの辺りに大きいショッピングモールやデパートもできた。
駅前の道も綺麗に舗装し直され、駅周辺は計画どおりに着々と都市化しつつある。
こういった街の変化が人通りの多さに拍車をかけていることは、言うまでもないだろう。
何年か前と比べると大した差だ。
実は人の往来の激しい並木道を、欠伸をしながら歩く。
「みーのる!」
ふいに、後ろから声をかけられた。
気だるげに振り向くのと肩を叩かれたのは、ほぼ同時。
「おはよう、梨央。」
実は淡く微笑む。
声をかけてきたのは、長い黒髪を腰辺りまで伸ばした少女だった。
明るい雰囲気を身にまとい、吊りぎみの大きな目が印象的だ。
彼女の名は楠木梨央。
小学校以来の幼馴染みである。
実はどこか機嫌のよさそうな幼馴染みを見つめ、ふと自分の髪に触れた。
黒髪黒目という一般的な梨央の容姿に対し、淡い栗毛色の細くて柔らかい髪と澄んだ薄茶色の目という自分の容姿。
これは、外国人である父親譲りのものだ。
今はもう慣れたけど、やはり初対面の人には多少なりとも驚かれる。
特に、今のような人の出入りがある時は嫌でも人目を引いてしまうので、少し居心地が悪いと感じてしまうこともしばしば。
どうせ、今年もしばらくは新入生たちに奇異の目で見られるのだろう。
毎年辟易してしまうそんな苦い予感も、今は眠気に押しのけられてしまいそうだった。
「なんか、眠そうだね。」
こちらの様子に気付いた梨央が、下から顔を覗き込んできた。
「うん。ちょっと寝不足。」
そう言っているそばから、欠伸が出てしまう。
「大丈夫? あんまり遅くまで勉強するのも、ほどほどにしなよ?」
「……うん。」
まさか、毎晩覚えてもいない夢に悩んでいるとも言えるわけがなく、実は梨央の言葉に曖昧に答えておくしかなかった。
二人はしばらく並木道に沿って歩き、途中から細い道に入った。
すると、人通りは嘘のようになくなる。
駅周辺の喧騒があっという間に遠ざかる錯覚さえ受けるほどだ。
視界いっぱいには、閑静な住宅地が。
というのも、この辺りは道が複雑に入り組んでいるので、忙しい朝の時間帯はあまり利用されないのである。
時々慣れているはずの住民でさえも道を間違えることがあり、この辺りをよく知らない人間が立ち入れば、それこそ悲惨なことになる。
自分も、過去にそんな人を案内した経験があった。
実と梨央は、複雑に入り組んだ住宅地の道を迷わず歩いていく。
大多数がこの道ではなく分かりやすい大通りを使うのだが、特に急いでいるわけでもない自分にとってはこの道が非常に好都合。
大通りではどうしても周りに急かされて歩くことになるので、自分のスピードで歩けないのだ。
「あー……めんどくさ、学校。」
実はうんざりとぼやく。
「まったく、そんなこと言わないの。」
梨央が急に歩みを止める。
実は梨央のやや前方に立ち止まり、梨央を振り返った。
「私たちは、今日から三年生なのよ。受験勉強だって始まってるし、これからの学校生活の一日一日が重要になっていくわけよ。分かる、実? 面倒とか、そういうことを言ってる場合じゃないんだよ。」
片手を腰に当て、片方の手で握り拳を作り熱弁する梨央。
優等生のような梨央の言葉に、実は面倒そうに顔をしかめた。
(そういえば……梨央の志望校って、割とレベル高かったっけなぁ。)
実は、思わず出かけた欠伸を噛み殺した。
寝不足のせいで、本当に欠伸が止まらない。
「そんなの、行ける学校に行けばよくない?」
率直な意見を漏らした瞬間、梨央の目つきが変わった。
「実は、頭がいいからそういうことを言えるの! 行ける学校って、ほぼ全部じゃない。大体、実はいつも―――」
「はいはいはいはい、そこまで。分かった。梨央の気持ちはよーく分かった。だから、さっさと学校に行こうよ。」
実は慌てて梨央の言葉を遮った。
このまま梨央にしゃべらせると、絶対に長いからだ。
梨央を見たまま、実は逃げるように学校の方へと歩き出す。
すると、梨央が目を見開いた。
「実、危ないよ!」
「え?」
梨央に叫ばれたが、時すでに遅し。
言葉の意味を理解しないうちに、進行方向にいた誰かとぶつかってしまった。
すばやく振り向くと、二人組の少女の片方が悲鳴をあげながらバランスを崩している。
実はとっさに手を伸ばし、少女が転んでしまう前にその腕と肩を掴んで支えてやる。
すると何故か、後ろから「あちゃー…」という声と溜め息が聞こえた。
転倒を免れた少女は、こちらを振り向くと目をまんまるにしてこちらを凝視してきた。
同じ学校の制服を着ているけれど、顔に見覚えはない。
「ごめん。前を見てなかった。怪我とかはない……よね?」
少女の顔を覗き込むと、それまで時を止めてしまったかのように固まっていた少女が大きく震えた。
「だ、大丈夫です。」
ぎこちなく答える少女は、おどおどと視線を右往左往させている。
まあ、これも初対面の人がよく見せる反応の一つだ。
「そっか。よかった。」
実は微笑み、少女から手を離すとすぐに距離を置いた。
そのまま通学の道へ戻ればよかったはずなのだけど、何故か少女はその場を動かずに勢いよく頭を下げてきた。
「あの……その、ありがとうございました!」
思ってもみなかった少女の反応に、実は目をまたたかせた。
「……え? ぶつかったのは俺だし、君がお礼を言う必要は―――」
言葉は、最後まで続かなかった。
少女はこちらの言葉を聞き終えるよりも早く隣にいた友人の腕をむんずと掴んで、自分の脇を走り去っていってしまったのだ。
「あっ、ちょっと!」
学校は反対方向ですけど……
反射的に振り返ったけど、少女たちの姿はぐんぐん遠ざかっていくばかり。
指摘し損ねた実の手が、所在なげに空中で固まる。
結局、そこに残されたのはポカンとした表情の実と、不機嫌そうな梨央だ。
「な、何…?」
実が半ば茫然と呟く。
そんな実に梨央は再度溜め息をつくと、その耳をぎゅっと引っ張った。
「何、じゃないわよっ!」
「うわわっ!?」
耳の間近で怒鳴られて、実は思わず顔を背ける。
視線を戻すと、梨央が仁王立ちでこちらを不機嫌そうに見据えていた。
「ようは一目惚れよ。一目惚れ。」
「……はあ?」
実は理解できないというように眉を寄せた。
それに対し、梨央は重たげな息を吐く。
本人は全く自覚していないが、学校での実はかなり評判がいい。
優しげな外見はもちろん、穏やかで柔らかい雰囲気は親しみやすさを感じさせる。
そしてそんな雰囲気に違わず、実は誰にでも優しく親切だ。
頭もいいし、運動神経だって文句なし。
はっきり言うと、かなりモテるのである。
それなのに、当の本人が全くの自覚なし。
たくさんの人からさりげない告白を何度も受けているのだが、持ち前の鈍さで全てをかわしている。
実には、告白されたという認識すらないだろう。
「まったく……少しは態度に棘があるならまだしも、実は誰にでも優しすぎるのよ。だから、八方美人だなんて言われたりもするんじゃない。どういう環境で育ったからこんな完璧になるのか、未だに不思議でならないわ。」
「完璧って……そんなんじゃないよ。」
何を言い出すんだと、カラカラ笑う実。
肝心の本人がこれである。
そのうち、誰かからいらない恨みでも買わないといいのだけど……
そんな風に心配になる梨央であった。
「はあ……これじゃあ、今年も去年と同じような状況になるわよ。」
去年の春を思い返し、梨央はうんざりと肩を落とす。
「んー…。別に今さら、どうでもいいかなぁ。」
対照的に、実はあっさりと言い切った。
「なんでよ?」
梨央はむっとしながら言い返す。
すると実は、梨央に爽やかな笑みを向けてこう答えた。
「だって去年と同じってさ、変にじろじろ見られるだけじゃん。そりゃあちょっと居心地は悪いけど、実害があるわけじゃないし、みんなの興味が薄れるまで耐えれば―――」
実の言葉の途中で、梨央の動きがピタリと止まる。
その表情が無で埋め尽くされたかと思うと、頭ごとその顔がゆっくりと下へ。
「あれ……り、梨央?」
握り締められた梨央の手がわなわなと震えていることに気付き、実はおそるおそる梨央の名前を呼んでみる。
どうも、失言があったようだ。
悪い予感を察知したので梨央の表情を探ろうと頭を下げてみても、彼女の長い髪が顔を見せてくれなかった。
試しに顔の近くで手を振ってみても、梨央は反応しない。
「何? 俺、変なこと言った?」
「……ほんとにもう。」
ようやく開いた梨央の口から、普段よりも数段に低い声が漏れた。
「成績優秀、運動神経抜群。かっこいいし、優しいし、信じられないくらいに完璧よ。だけどね……」
次の瞬間、梨央が思いっきり怒鳴り声をまき散らす。
「なんっで、恋愛にはこんなに鈍感なのよーっ!!」
「うわあああっ!?」
あまりの気迫に、実は反射的にその場から駆け出した。
「待ちなさーい!」
後ろから梨央が、説教だなんだと言いながら追いかけてくる。
二人はそのまま学校まで、走り続けることになった。
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