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第3章 ゲーム
接触
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今日は、午前中四時間、給食と昼休みを挟んで午後に一時間というスケジュールで実力テストが行われる。
鉛筆がさらさらと紙面を走る音と、微かな緊張感に満たされた教室。
実は自分の解答用紙を埋めながら、時々後ろの席にいる拓也の雰囲気に神経を集中させていた。
今ばかりは、名簿順という席並びが恨めしい。
自分の目で直接様子を見られないことが、やり場のない危機感になって心をざわつかせてしまう。
だが、これも致し方ない反応だと思ってほしい。
何せ、自分の後ろには拓也と―――そして、不吉な雰囲気を漂わせたあの影の気配があるのだから。
ピリピリと神経を尖らせる実の後ろで、拓也がふいに欠伸をした。
二時間目までは少なかった欠伸の数が、三時間目辺りから徐々に増え始め、給食が終わる頃には……
「………」
拓也は、机に突っ伏して動かなくなっていた。
「お、毎度恒例の電池切れ?」
実の前の席に座る晴人が、拓也の様子を見てそう言う。
拓也は、このようなテストの前日にかなりの詰め込み勉強をするタイプだ。
足を踏み入れたばかりの環境で自分が知らない知識だらけのテストを受けさせられるのだから、相当な不安があるのだろう。
あれもこれもと復習しているうちに、果てしない時間が経過しているのだ。
ただ、睡眠時間も削ってしまうので、疲れと眠気が溜まった結果、昼休みになるとこうして仮眠を取るのである。
この状態を、晴人は〝電池切れ〟と呼んでいる。
「多分ね。」
実は晴人を一瞥した後、すぐに拓也に視線を戻す。
拓也は目を閉じ、静かな寝息を立てている。
こちらの話し声も聞こえていないようだ。
試しに拓也の顔の前で手をひらひらと振ってみるも、反応は皆無だった。
晴人がそれに目を丸くする。
「あらら……今日は爆睡じゃん。大丈夫? この後、英語なのに……」
「拓也なら大丈夫だよ。普段が真面目だし、ちゃんと頭に入ってるって。五分前に起してやれば十分。」
実は、晴人の心配をさらりと受け流す。
拓也の眠りが深いのは当然だ。
拓也が昼休みに仮眠を取ることを利用して、眠りが深くなるように細工したのは他ならぬ自分なのだから。
自力で目覚めるには、かなりの時間がかかるだろう。
―――その目的は、ただひとつ。
実は、拓也の背後を睨んだ。
時々ゆらりと揺れる影。
これに接触するためには、拓也の眠りが浅いと不都合だったのだ。
育ってきた環境が環境だけに、眠りが浅い状態の拓也に近付くと、反射的に攻撃されかねない。
実は次に、晴人の方に目をやった。
晴人はすでに席にはおらず、他の友人の元へ行っていた。
その流れで、教室の状況を確認する。
テスト前だけあって、大多数は英語の資料に目を落としている。
他の生徒たちもそれぞれのグループで談笑していて、こちらに意識を向ける人はいない。
そこまで確認したところで、実は自分の席を立った。
拓也の後ろに移動し、再び影を目の前にする。
朝に感じた不快感がまた湧き上がってきて、脳内に警鐘が鳴り響く。
―――これに関わってはいけない、と。
それでも、自分はこれに関わらざるを得ない。
これが危険な行為であることは、十も百も承知の上だ。
実は、影に向かって手を伸ばした。
ゆっくりと、だが確実に。
手が影の中に進入する。
「―――っ」
その瞬間、先ほどまで感じていた不快感を何倍にも凝縮したかのような、すさまじくおぞましい感覚が痺れのように全身に走った。
それで、先ほどまでの気持ち悪い感覚が、単なる朝の残滓でしかなかったことを痛感する。
吐き気すらしてきそうな不快感に顔をしかめながら、実は手を影のちょうど胸の位置へ。
そして、息を止めると同時に、そこでぐっと手を握り締めた。
―――ぞわっ
次の瞬間、今までとは明らかに違う戦慄が駆け抜けた。
背筋が凍って、瞬く間に粟立つ。
周りの空間が、まるで時を止めてしまったかのように音をなくした気がした。
緊張と戦慄が全身を縛り上げて、身動きが一切取れない。
心臓が早く脈打つ音と、それにつられて荒くなる呼吸の音が耳と頭を満たす。
その脈動が握り込んだ自分の手から伝わってくるようで、なんとも言えない嫌悪感が臓腑を締め上げた。
喉が一気に水分を失って、渇きを訴える。
石のように動かなくなった体は声すらも奪い取って、口腔から漏れるのはかすれた吐息だけ。
凍てついた実が凝視する最中、ふいにゆらりと影が揺れた。
それに叫び出すこともできず、実はただそれを見つめる。
ゆらゆらと何度も揺れる影が、まるでこちらに振り向いてくるように見えて、爆発的な危機感があふれ出す。
それは体を縛る新たな鎖となって、さらに身動きが取れなくなってしまう。
そして―――
突如形を失った影が、黒い津波と化して襲いかかってきた。
「!?」
それは、ほんの一瞬の出来事。
あっという間に、意識は世界から切り離されてしまった。
鉛筆がさらさらと紙面を走る音と、微かな緊張感に満たされた教室。
実は自分の解答用紙を埋めながら、時々後ろの席にいる拓也の雰囲気に神経を集中させていた。
今ばかりは、名簿順という席並びが恨めしい。
自分の目で直接様子を見られないことが、やり場のない危機感になって心をざわつかせてしまう。
だが、これも致し方ない反応だと思ってほしい。
何せ、自分の後ろには拓也と―――そして、不吉な雰囲気を漂わせたあの影の気配があるのだから。
ピリピリと神経を尖らせる実の後ろで、拓也がふいに欠伸をした。
二時間目までは少なかった欠伸の数が、三時間目辺りから徐々に増え始め、給食が終わる頃には……
「………」
拓也は、机に突っ伏して動かなくなっていた。
「お、毎度恒例の電池切れ?」
実の前の席に座る晴人が、拓也の様子を見てそう言う。
拓也は、このようなテストの前日にかなりの詰め込み勉強をするタイプだ。
足を踏み入れたばかりの環境で自分が知らない知識だらけのテストを受けさせられるのだから、相当な不安があるのだろう。
あれもこれもと復習しているうちに、果てしない時間が経過しているのだ。
ただ、睡眠時間も削ってしまうので、疲れと眠気が溜まった結果、昼休みになるとこうして仮眠を取るのである。
この状態を、晴人は〝電池切れ〟と呼んでいる。
「多分ね。」
実は晴人を一瞥した後、すぐに拓也に視線を戻す。
拓也は目を閉じ、静かな寝息を立てている。
こちらの話し声も聞こえていないようだ。
試しに拓也の顔の前で手をひらひらと振ってみるも、反応は皆無だった。
晴人がそれに目を丸くする。
「あらら……今日は爆睡じゃん。大丈夫? この後、英語なのに……」
「拓也なら大丈夫だよ。普段が真面目だし、ちゃんと頭に入ってるって。五分前に起してやれば十分。」
実は、晴人の心配をさらりと受け流す。
拓也の眠りが深いのは当然だ。
拓也が昼休みに仮眠を取ることを利用して、眠りが深くなるように細工したのは他ならぬ自分なのだから。
自力で目覚めるには、かなりの時間がかかるだろう。
―――その目的は、ただひとつ。
実は、拓也の背後を睨んだ。
時々ゆらりと揺れる影。
これに接触するためには、拓也の眠りが浅いと不都合だったのだ。
育ってきた環境が環境だけに、眠りが浅い状態の拓也に近付くと、反射的に攻撃されかねない。
実は次に、晴人の方に目をやった。
晴人はすでに席にはおらず、他の友人の元へ行っていた。
その流れで、教室の状況を確認する。
テスト前だけあって、大多数は英語の資料に目を落としている。
他の生徒たちもそれぞれのグループで談笑していて、こちらに意識を向ける人はいない。
そこまで確認したところで、実は自分の席を立った。
拓也の後ろに移動し、再び影を目の前にする。
朝に感じた不快感がまた湧き上がってきて、脳内に警鐘が鳴り響く。
―――これに関わってはいけない、と。
それでも、自分はこれに関わらざるを得ない。
これが危険な行為であることは、十も百も承知の上だ。
実は、影に向かって手を伸ばした。
ゆっくりと、だが確実に。
手が影の中に進入する。
「―――っ」
その瞬間、先ほどまで感じていた不快感を何倍にも凝縮したかのような、すさまじくおぞましい感覚が痺れのように全身に走った。
それで、先ほどまでの気持ち悪い感覚が、単なる朝の残滓でしかなかったことを痛感する。
吐き気すらしてきそうな不快感に顔をしかめながら、実は手を影のちょうど胸の位置へ。
そして、息を止めると同時に、そこでぐっと手を握り締めた。
―――ぞわっ
次の瞬間、今までとは明らかに違う戦慄が駆け抜けた。
背筋が凍って、瞬く間に粟立つ。
周りの空間が、まるで時を止めてしまったかのように音をなくした気がした。
緊張と戦慄が全身を縛り上げて、身動きが一切取れない。
心臓が早く脈打つ音と、それにつられて荒くなる呼吸の音が耳と頭を満たす。
その脈動が握り込んだ自分の手から伝わってくるようで、なんとも言えない嫌悪感が臓腑を締め上げた。
喉が一気に水分を失って、渇きを訴える。
石のように動かなくなった体は声すらも奪い取って、口腔から漏れるのはかすれた吐息だけ。
凍てついた実が凝視する最中、ふいにゆらりと影が揺れた。
それに叫び出すこともできず、実はただそれを見つめる。
ゆらゆらと何度も揺れる影が、まるでこちらに振り向いてくるように見えて、爆発的な危機感があふれ出す。
それは体を縛る新たな鎖となって、さらに身動きが取れなくなってしまう。
そして―――
突如形を失った影が、黒い津波と化して襲いかかってきた。
「!?」
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